甲状腺疾患と脱毛の関係|症状と治療の進め方

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「最近、抜け毛が増えただけでなく、体調もすぐれない…」もしかしたら、その脱毛症状の背景には甲状腺の病気が隠れているかもしれません。

甲状腺ホルモンは私たちの体の新陳代謝をコントロールする重要な役割を担っており、そのバランスが崩れると髪の毛にも大きな影響が出ることがあります。

この記事では甲状腺疾患と脱毛の深い関係、見られる症状、そして治療の進め方について詳しく解説します。甲状腺の異常による脱毛の可能性を理解し、適切な対応をとるための一助となれば幸いです。

目次

甲状腺とは?私たちの体における重要な役割

甲状腺は首の前面、のどぼとけのすぐ下にある蝶のような形をした小さな臓器です。

小さいながらも私たちの体のエネルギー代謝を調節する「甲状腺ホルモン」を分泌するという、非常に重要な働きをしています。

甲状腺の位置と基本的な働き

甲状腺は気管を取り囲むように存在し、重さは約10~20g程度です。主な働きは、血液中からヨウ素を取り込み、それを材料として甲状腺ホルモンを合成し、血液中に分泌することです。

この甲状腺ホルモンは全身の細胞に作用し、新陳代謝を活発にしたり、成長や発達を促進したりします。

甲状腺ホルモンとは何か

甲状腺ホルモンには、主に「サイロキシン(T4)」と「トリヨードサイロニン(T3)」の2種類があります。

これらは体のほぼ全ての細胞に作用し、エネルギー産生、タンパク質合成、心臓や消化管の働き、神経系の機能維持など、生命活動に不可欠な様々な調節を行っています。

「当然のことながら髪の毛の成長にも深く関わっています。

「甲状腺ホルモンの主な働き

作用対象主な働き
全身の細胞新陳代謝の促進、エネルギー産生の調節
心臓・血管系心拍数や血圧の調節
神経系精神活動や神経機能の維持

甲状腺ホルモンのバランスが崩れると

甲状腺ホルモンの分泌量が多すぎたり(甲状腺機能亢進症)、少なすぎたり(甲状腺機能低下症)すると、体の様々な部分に不調が現れます。

髪の毛も例外ではなく、脱毛や髪質の変化といった症状が出ることがあります。

このホルモンバランスの乱れは様々な原因によって引き起こされます。

甲状腺疾患と脱毛 なぜ髪の毛に影響が出るのか

甲状腺ホルモンの異常は髪の毛の成長サイクルに直接的・間接的に影響を及ぼし、脱毛を引き起こすことがあります。

その関連性について詳しく見ていきましょう。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)と脱毛

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症では、全身の新陳代謝が異常に活発になります。

この状態が続くと毛髪の成長サイクルが早まりすぎ、十分に成長する前に髪が抜け落ちてしまうことがあります。

また、髪が細くなったり、柔らかくなったりする傾向も見られます。代表的な疾患にバセドウ病があります。

甲状腺機能低下症(橋本病など)と脱毛

逆に甲状腺ホルモンの分泌が不足する甲状腺機能低下症では新陳代謝が低下し、毛母細胞の活動も鈍くなります。

このため、髪の成長が遅れたり新しい髪が生えにくくなったりして、全体的に髪が薄くなる(びまん性脱毛)ことがあります。

髪が乾燥してパサついたり、もろくなったりすることも特徴です。代表的な疾患に橋本病(慢性甲状腺炎)があります。

毛髪の成長サイクルと甲状腺ホルモンの関係

髪の毛には成長期(髪が伸びる期間)、退行期(成長が止まる期間)、休止期(髪が抜け落ちる準備期間)というヘアサイクルがあります。

甲状腺ホルモンはこのヘアサイクルの調節に重要な役割を果たしています。

ホルモンバランスが崩れると成長期が短縮されたり休止期が延長されたりして、結果として抜け毛が増え、薄毛が進行します。

甲状腺ホルモンとヘアサイクルの関連

甲状腺ホルモンの状態ヘアサイクルへの影響(傾向)見られる脱毛の特徴(例)
過剰(亢進症)成長期短縮、休止期への移行促進髪が細くなる、全体的にボリュームダウン
不足(低下症)成長期延長の阻害、休止期毛の増加びまん性脱毛、髪の乾燥・パサつき

甲状腺疾患が円形脱毛症を引き起こすことも

甲状腺疾患、特にバセドウ病や橋本病のような自己免疫性の甲状腺疾患は円形脱毛症を合併しやすいことが知られています。

円形脱毛症も自己免疫反応の異常が原因と考えられており、甲状腺疾患を持つ方は他の自己免疫疾患も発症しやすい傾向があるためです。

この場合、甲状腺ホルモンの異常によるびまん性の脱毛とは別に、円形の脱毛斑が現れます。

甲状腺機能亢進症で見られる脱毛の特徴とその他の症状

甲状腺機能亢進症(代表例:バセドウ病)では脱毛以外にも様々な全身症状が現れます。これらのサインを見逃さないことが早期発見につながります。

脱毛以外の主な症状(動悸、体重減少、多汗など)

甲状腺ホルモンが過剰になると体の代謝が異常に高まります。そのため、以下のような症状が現れやすくなります。

  • 頻脈(脈が速くなる)、動悸
  • 体重減少(食欲はあるのに痩せる)
  • 手の震え
  • 暑がり、多汗
  • イライラ感、落ち着きのなさ
  • 下痢しやすい
  • 眼球突出(バセドウ病の場合)

これらの症状が複数当てはまる場合は甲状腺機能亢進症の可能性があります。

髪質の変化(細くなる、もろくなるなど)

甲状腺機能亢進症による脱毛では髪の毛全体が細く、柔らかく、もろくなる傾向があります。この症状は髪の成長サイクルが早まることで十分に成熟する前に抜けてしまうためです。

髪にハリやコシがなくなり、ボリュームダウンを感じることが多いでしょう。

脱毛のパターンと進行

脱毛は頭部全体に均等に起こる「びまん性脱毛」の形をとることが多いです。特定の部位だけが薄くなるというよりは、全体的に髪の量が減ったように感じられます。

進行は比較的緩やかなこともありますが、他の全身症状とともに徐々に目立ってくることがあります。

バセドウ病眼症と脱毛の関連

バセドウ病の代表的な症状の一つに「バセドウ病眼症」があります。これは眼球突出、複視(物が二重に見える)、眼瞼腫脹(まぶたの腫れ)などを特徴とする眼の症状です。

バセドウ病によって脱毛症状が現れている場合、眼症を合併している可能性も考慮します。ただし、眼症の有無や程度と脱毛の程度が必ずしも比例するわけではありません。

バセドウ病の主な症状チェック

症状カテゴリ主な症状例
全身症状体重減少、多汗、手の震え、動悸
精神症状イライラ感、不眠、集中力低下
眼症状(バセドウ病眼症)眼球突出、複視、まぶたの腫れ

甲状腺機能低下症で見られる脱毛の特徴とその他の症状

甲状腺機能低下症(代表例:橋本病)では体の機能が全体的に低下し、脱毛の他にも特有の症状が現れます。

脱毛以外の主な症状(倦怠感、体重増加、むくみなど)

甲状腺ホルモンが不足すると体の代謝が低下し、以下のような症状が出やすくなります。

  • 全身の倦怠感、無気力
  • 体重増加(食欲がないのに太る)
  • むくみ(特に顔やまぶた)
  • 寒がり、皮膚の乾燥
  • 便秘
  • 声のかすれ
  • 物忘れ、集中力の低下

これらの症状はゆっくりと進行することが多く、気づきにくい場合もあります。

髪質の変化(パサつく、乾燥するなど)

甲状腺機能低下症による脱毛では髪の毛が乾燥してパサついたり、ツヤがなくなったり、もろく切れやすくなったりする傾向があります。

頭皮も乾燥しやすく、フケが増えることもあります。新陳代謝の低下が、髪の健康状態に影響を与えるのです。

眉毛の外側が薄くなることも

甲状腺機能低下症に特徴的な脱毛症状の一つとして、眉毛の外側3分の1が薄くなる「ヘルトーゲ徴候(Hertoghe’s sign)」が見られることがあります。

全ての患者さんに見られるわけではありませんが、診断の一つの手がかりとなることがあります。

脱毛のパターンと回復の可能性

脱毛は頭部全体の髪がまばらに薄くなる「びまん性脱毛」が典型的です。

甲状腺機能低下症が原因の場合、適切な甲状腺ホルモン補充療法を行うことで甲状腺機能が正常化すれば、脱毛症状も改善して髪質も回復する可能性が高いです。

ただし、回復には数ヶ月から1年程度の時間がかかることもあります。

橋本病の主な症状チェック

症状カテゴリ主な症状例
全身症状倦怠感、体重増加、むくみ、寒がり
皮膚・毛髪症状皮膚乾燥、髪のパサつき、眉毛外側の脱毛
精神症状無気力、物忘れ、抑うつ気分

【独自性】甲状腺の不調、髪だけじゃない体からのサインを見逃さないで

「最近、抜け毛がひどいけど、年のせいかな」「忙しいから体調が悪いのかな」。髪の変化だけでなく、なんとなく感じる体の不調。

それらはもしかしたら甲状腺が発しているSOSサインかもしれません。髪の毛は体全体の健康状態を映す鏡とも言えます。

ここでは脱毛という症状を通して、ご自身の体全体と向き合うことの大切さをお伝えします。

「最近なんだか調子が悪い」その背景にあるもの

疲れやすい、体重が急に増減した、気分が沈みがち、あるいは逆にイライラしやすい…。これらの「なんとなくの不調」は多忙な日常の中では見過ごされがちです。

しかし、このような体調の変化が脱毛と同時に現れている場合、甲状腺機能の異常が潜んでいる可能性があります。

甲状腺ホルモンは全身の代謝に関わるため、そのバランスが崩れると心身の様々な面に影響が及ぶのです。

脱毛以外に見られる甲状腺疾患のサイン

脱毛以外にも甲状腺疾患を示唆するサインは数多くあります。例えば、以下のような症状に心当たりはありませんか?

  • 首の腫れやしこり(甲状腺自体の異常)
  • 原因不明の動悸や息切れ
  • 急な体重の変化(増加または減少)
  • 異常な汗かき、または逆に汗をかきにくい
  • 手足の震えやむくみ
  • 便秘や下痢などの消化器症状
  • 気分の浮き沈みが激しい、集中できない

これらの症状は、甲状腺ホルモンの過不足によって引き起こされる可能性があります。一つ一つの症状はありふれたものであっても複数が重なっていたり、脱毛と同時に現れていたりする場合は注意が必要です。

髪の変化と体調の変化、両方に目を向けることが大切です。

セルフチェックでは分からない甲状腺の異常

上記のような症状は、あくまで一般的な目安であり、自己判断で甲状腺疾患を確定することはできません。

また、甲状腺疾患の中には自覚症状がほとんどないまま進行するものもあります。

甲状腺の機能や形態の異常は血液検査や超音波検査など、専門的な検査によってはじめて明らかになることが多いのです。

専門医への相談が早期発見・早期治療の鍵

「もしかしたら…」と感じたら、まずは専門医(内分泌科や甲状腺専門医)に相談することが早期発見・早期治療への最も確実な道です。

脱毛の悩みで皮膚科やAGAクリニックを受診した場合でも、問診や診察の結果、甲状腺疾患が疑われれば、専門医への紹介が行われます。

甲状腺疾患は早期に適切な治療を開始すれば多くの場合コントロール可能であり、脱毛症状の改善も期待できます。

髪の毛だけでなく、体全体の健康を取り戻すためにも、勇気を出して専門家の扉を叩いてみましょう。

甲状腺疾患による脱毛の検査と診断

甲状腺疾患が疑われる場合、脱毛の原因を特定して適切な治療法を決定するために、いくつかの検査が行われます。

問診と視診 何を伝えるべきか

まず、医師による問診と視診が行われます。問診では以下のような情報を正確に伝えることが大切です。

  • いつから脱毛が気になり始めたか
  • 脱毛の範囲やパターン(全体的か、部分的かなど)
  • 脱毛以外の自覚症状(体重変化、動悸、倦怠感、皮膚の変化など)
  • 既往歴、家族歴(特に甲状腺疾患や自己免疫疾患)
  • 服用中の薬やサプリメント
  • 生活習慣(食事、睡眠、ストレスなど)

視診では脱毛の状態、髪質、頭皮の状態、首の腫れの有無などを確認します。

血液検査 甲状腺ホルモン値と自己抗体のチェック

甲状腺機能を評価するために最も重要な検査が血液検査です。主に以下の項目を測定します。

  • TSH(甲状腺刺激ホルモン) 脳下垂体から分泌され、甲状腺ホルモンの分泌を調節するホルモン。甲状腺機能低下症では高値、亢進症では低値になることが多い。
  • FT3(遊離トリヨードサイロニン)、FT4(遊離サイロキシン) 実際に体内で作用する甲状腺ホルモン。低下症では低値、亢進症では高値になる。
  • 自己抗体(抗サイログロブリン抗体、抗TPO抗体、TSH受容体抗体など) バセドウ病や橋本病などの自己免疫性甲状腺疾患の診断に役立つ。

血液検査の主な項目と評価内容

検査項目甲状腺機能亢進症での変動(傾向)甲状腺機能低下症での変動(傾向)
TSH低値高値
FT3, FT4高値低値
自己抗体陽性となることがある(疾患による)陽性となることがある(疾患による)

超音波(エコー)検査 甲状腺の形態評価

超音波検査では甲状腺の大きさ、形状、内部の血流状態、結節(しこり)の有無などを画像で確認します。痛みはなく、比較的簡便に行える検査です。

この検査により、甲状腺炎の所見や腫瘍の存在などを評価することができます。

他の脱毛症との鑑別診断

甲状腺疾患による脱毛と、AGA(男性型脱毛症)、円形脱毛症(甲状腺疾患に合併することもある)、薬剤性脱毛など他の原因による脱毛症との鑑別診断も重要です。

脱毛のパターン、随伴症状、血液検査の結果などを総合的に判断し、原因を特定します。

甲状腺疾患が原因の脱毛治療の進め方

甲状腺疾患による脱毛の場合、まず優先されるのは原因となっている甲状腺疾患そのものの治療です。

甲状腺機能が正常化することで脱毛症状も改善することが期待できます。

まず甲状腺疾患そのものの治療が優先

脱毛は甲状腺疾患の一症状として現れているため、根本的な解決には甲状腺の機能を正常に戻す治療が必要です。内分泌科医や甲状腺専門医の指導のもと、適切な治療を開始します。

自己判断で市販の育毛剤などを使用しても、甲状腺疾患が改善しなければ脱毛は治まりにくいです。

甲状腺機能亢進症の治療法(薬物療法、アイソトープ治療、手術)

甲状腺機能亢進症の主な治療法には以下のものがあります。

  • 薬物療法 抗甲状腺薬(チアマゾール、プロピルチオウラシルなど)を服用し、甲状腺ホルモンの合成を抑えます。最も一般的な治療法です。
  • アイソトープ治療(放射性ヨウ素内用療法) 放射性ヨウ素を内服し、甲状腺の細胞を選択的に破壊することでホルモン産生を抑えます。
  • 手術療法 甲状腺の一部または全部を摘出する手術です。薬物療法で効果がない場合や甲状腺が非常に大きい場合などに検討されます。

治療法は年齢、症状の重症度、甲状腺の大きさ、合併症の有無などを考慮して選択します。

甲状腺機能亢進症の主な治療法

治療法概要特徴
薬物療法(抗甲状腺薬)甲状腺ホルモンの合成を抑制第一選択となることが多い、副作用に注意
アイソトープ治療放射性ヨウ素で甲状腺細胞を破壊根治性が高い、将来的に低下症になることも
手術療法甲状腺を摘出確実性が高い、入院が必要

甲状腺機能低下症の治療法(甲状腺ホルモン補充療法)

甲状腺機能低下症の治療は不足している甲状腺ホルモンを内服薬(レボチロキシンナトリウムなど)で補う「甲状腺ホルモン補充療法」が基本です。

適切な量のホルモン剤を毎日服用することで血液中の甲状腺ホルモン濃度を正常範囲に保ちます。

多くの場合、生涯にわたる服用が必要となりますが、副作用は少なく、正しく服用すれば通常の生活を送ることができます。

脱毛症状に対する補助的なケア

甲状腺疾患の治療により甲状腺機能が正常化すれば、脱毛症状も徐々に改善していくことが期待できます。

しかし、髪の毛が生え変わるのには時間がかかるため、その間の補助的なケアとして頭皮マッサージやバランスの取れた食事、質の高い睡眠などを心がけることも大切です。

ただし、これらはあくまで補助であり、甲状腺疾患の治療が最優先であることに変わりはありません。

甲状腺疾患治療中の脱毛ケアと日常生活での注意点

甲状腺疾患の治療を受けながら脱毛症状の改善を促すためには、日々のヘアケアや生活習慣にも気を配ることが大切です。

治療効果を高め、頭皮と髪を健やかに保つためのポイントを紹介します。

頭皮と髪に優しいヘアケア方法

治療中は頭皮や髪がデリケートになっていることがあります。

以下の点に注意して、優しいケアを心がけましょう。

  • シャンプー 低刺激性のアミノ酸系シャンプーなどを選び、爪を立てずに指の腹で優しく洗いましょう。洗いすぎは頭皮の乾燥を招くため、1日1回程度で十分です。
  • すすぎ シャンプー剤やコンディショナーが残らないよう、しっかりとすすぎます。
  • 乾燥 洗髪後は、タオルで優しく水分を拭き取り、ドライヤーで頭皮を中心に乾かします。高温の風を長時間当てないように注意しましょう。
  • ブラッシング 無理なブラッシングは切れ毛や抜け毛の原因になります。目の粗いブラシで優しくとかしましょう。

バランスの取れた食事と栄養の重要性

髪の毛はタンパク質を主成分とし、ビタミンやミネラルも成長に欠かせません。甲状腺疾患の治療中は特にバランスの取れた食事が重要です。

特定の食品に偏らず、肉、魚、卵、大豆製品などの良質なタンパク質、緑黄色野菜や果物からビタミン、海藻類やナッツ類からミネラルを意識して摂取しましょう。

ただし、甲状腺疾患の種類によってはヨウ素の摂取制限が必要な場合もあるため、必ず医師や管理栄養士の指示に従ってください。

髪の成長をサポートする栄養素(一般的な例)

栄養素主な役割多く含む食品例
タンパク質髪の主成分肉、魚、卵、大豆製品
亜鉛ケラチン合成補助牡蠣、レバー、牛肉
鉄分酸素運搬、毛母細胞活性化レバー、赤身肉、ほうれん草

注意:ヨウ素の摂取については甲状腺疾患の種類により医師の指示が異なります。自己判断での過剰摂取や制限は避けましょう。

ストレス管理と十分な睡眠

ストレスはホルモンバランスや自律神経を乱し、脱毛症状を悪化させる可能性があります。

甲状腺疾患の治療中は心身の負担を軽減し、リラックスできる時間を持つことが大切です。適度な運動、趣味、瞑想など自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。

また、質の高い睡眠は成長ホルモンの分泌を促し、髪の成長や体の修復に重要です。毎日決まった時間に寝起きし、6~8時間程度の睡眠時間を確保するよう心がけましょう。

甲状腺疾患の治療と並行して行える脱毛対策

甲状腺疾患の治療が最優先ですが、医師の許可があれば並行して脱毛に対する補助的な対策を行うことも可能です。

例えば頭皮の血行を促進するマッサージや、ミノキシジル外用薬の使用(医師相談の上)などが考えられます。

ただし、自己判断で市販の育毛剤やサプリメントを使用する前に必ず主治医に相談し、甲状腺疾患の治療に影響がないか確認することが大切です。

甲状腺疾患と脱毛に関するよくある質問

甲状腺疾患と脱毛について、患者様からよく寄せられるご質問とその回答をまとめました。

甲状腺の薬を飲めば髪は元に戻りますか?

甲状腺疾患が原因で起こっている脱毛の場合、甲状腺ホルモンのバランスが薬物療法などによって正常化すれば、多くの場合脱毛症状は改善に向かいます。

髪の毛が生え変わり、元の状態に近づくには数ヶ月から1年程度の時間が必要となることが一般的です。

ただし、脱毛の原因が甲状腺疾患だけではない場合(例えばAGAを合併しているなど)や毛根のダメージが大きい場合は完全に元通りにならないこともあります。

主治医とよく相談しながら経過を見守ることが大切です。

脱毛の症状で最初に何科を受診すべきですか?

脱毛の症状があり、甲状腺疾患が疑われる他の症状(体重変化、動悸、倦怠感、首の腫れなど)も伴う場合は、まず内科または内分泌科、甲状腺専門医の受診をおすすめします。

甲状腺疾患の検査と診断が優先されます。

脱毛症状のみが気になる場合は皮膚科やAGA・薄毛治療専門クリニックを受診し、そこで甲状腺疾患の可能性が指摘されれば内科などへ紹介されることもあります。

甲状腺疾患とAGAは併発しますか?

はい、甲状腺疾患とAGA(男性型脱毛症)は異なる原因で起こる脱毛症ですが、偶然併発することはあります。

甲状腺疾患の治療を行っても脱毛が改善しない場合やAGA特有の薄毛のパターン(生え際の後退や頭頂部の薄毛)が見られる場合はAGAの可能性も考慮し、皮膚科やAGA専門クリニックでの診断を受けることを検討しましょう。そ

れぞれの疾患に応じた適切な治療を行うことが重要です。

治療期間はどのくらいかかりますか?

甲状腺疾患の治療期間は疾患の種類(バセドウ病、橋本病など)や重症度、治療法によって大きく異なります。

例えば、バセドウ病の薬物療法は数年にわたることが多く、橋本病の甲状腺ホルモン補充療法は生涯にわたる場合が一般的です。

脱毛症状の改善は甲状腺機能が安定してから数ヶ月後以降に見られることが多いです。

具体的な治療期間については主治医とよく話し合い、焦らずに治療に取り組むことが大切です。

以上

参考文献

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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