薄毛改善に効果的な食べ物と避けるべき食習慣

薄毛改善に効果的な食べ物と避けるべき食習慣

女性の薄毛の悩みは、生活習慣、特に日々の食事が深く関係しているケースが多く見受けられます。

育毛剤やシャンプーなどによる薄毛改善ももちろん有効ですが、毎日の食べ物に気を使うことが結果として健康的な髪へとつながっていきます。

この記事では、髪の健康を取り戻し、すこやかな髪を育むために、どのような食べ物を積極的に摂り、どのような食習慣を避けるべきかを詳しく解説します。

目次

なぜ食べ物が髪に関係するの?髪の毛の主成分と栄養素

髪の毛は、私たちが毎日口にする食べ物から作られます。そのため、食生活の乱れは直接的に髪の健康状態に影響を与えます。

美しい髪を育むためには、まず髪が何でできているのか、そしてどのような栄養が必要なのかを知ることが大切です。

髪の主成分はタンパク質「ケラチン」

私たちの髪の毛の約90%以上は、「ケラチン」というタンパク質で構成されています。

ケラチンは18種類のアミノ酸が結合してできており、爪や皮膚の角質層も同じタンパク質から作られています。

つまり、良質なタンパク質を食事から十分に摂取する習慣が、丈夫で健康な髪を作るための基本中の基本となります。

髪の生成に必要な主な栄養素

  • タンパク質(アミノ酸)
  • 亜鉛
  • ビタミン類

健康な髪を育む3つの主要栄養素

ケラチンを効率よく体内で生成し、髪の成長を促すためには、タンパク質以外にも重要な栄養素があります。

「タンパク質」「亜鉛」「ビタミン」は、髪の健康を維持するための三本柱ともいえる栄養素です。

これらが互いに連携し合って、すこやかな髪が育ちます。

髪の健康を支える栄養素の働き

栄養素主な働き不足した場合の影響
タンパク質髪の主成分であるケラチンを作る髪が細くなる、ツヤがなくなる
亜鉛タンパク質の合成を助ける抜け毛の増加、新しい髪の成長遅延
ビタミン頭皮環境を整え、血行を促進する頭皮の乾燥、フケ、血行不良

栄養不足が引き起こす髪への影響

栄養バランスの偏った食生活を続けると、体は生命維持に重要な臓器へ優先的に栄養を送ります。

髪の毛は生命維持の観点では優先度が低いため、栄養不足の影響が現れやすい部分です。

栄養が頭皮や毛根まで届かなくなると髪の成長サイクルが乱れ、抜け毛や薄毛の原因となります。

髪の成長をサポートする!積極的に摂りたい食べ物

健康な髪を育むためには、毎日の食事で意識的に栄養を摂ることが重要です。

ここでは、特に髪のために積極的に取り入れたい栄養素と、それらを多く含む食べ物を見ていきましょう。

タンパク質が豊富な食材

髪の主成分であるケラチンを生成するためには、その材料となるタンパク質が欠かせません。

肉や魚、卵や大豆製品など、動物性と植物性のタンパク質をバランス良く食事に取り入れましょう。

良質なタンパク質を含む食品

食品カテゴリ具体例ポイント
肉類鶏むね肉、ささみ、赤身肉脂質の少ない部位を選ぶ
魚介類青魚(サバ、イワシ)、鮭、あさり血行促進効果のあるEPAも豊富
大豆製品・卵豆腐、納豆、豆乳、卵手軽に摂取でき、栄養価も高い

亜鉛を多く含む食べ物

亜鉛は、食事から摂ったタンパク質を髪の毛(ケラチン)へと変える際に必要です。亜鉛が不足すると、いくらタンパク質を摂っても効率よく髪を作れません。

抜け毛が気になる方は特に意識して摂取したい栄養素です。

亜鉛が豊富な食品

食品カテゴリ具体例ポイント
魚介類牡蠣、うなぎ、いわし牡蠣は特に含有量が多い
肉類レバー、牛肉(赤身)鉄分も同時に摂取できる
その他チーズ、高野豆腐、ナッツ類間食にも取り入れやすい

ビタミン類が髪に与える好影響

ビタミン群は頭皮の健康を維持し、髪の成長をサポートする重要な役割を担います。

なかでもビタミンA、B群、C、Eは、それぞれが異なる働きで髪と頭皮を守ります。

髪に良いビタミンとその働き

ビタミン主な働き多く含む食品
ビタミンA頭皮のうるおいを保ち、新陳代謝を促す緑黄色野菜(人参、かぼちゃ)、レバー
ビタミンB群皮脂の分泌を調整し、血行を促進する豚肉、マグロ、玄米、バナナ
ビタミンE強い抗酸化作用で血行を良くするナッツ類、アボカド、植物油

鉄分で頭皮の血行促進

鉄分は血液中のヘモグロビンの成分となり、全身に酸素を運ぶ役割を担っています。

頭皮も例外ではなく、鉄分が不足すると血行が悪化し、毛根に十分な酸素や栄養が届きにくくなります。この状態が続くと髪が十分に成長できず、抜け毛につながりやすいです。

特に注目したい「大豆イソフラボン」の力

女性の薄毛の悩みを語る上で、「大豆イソフラボン」は非常に重要な成分です。

特に女性ホルモンのバランスが乱れがちな方にとって、心強い味方となります。

大豆イソフラボンとは?

大豆イソフラボンは、大豆の胚芽部分に多く含まれるポリフェノールの一種です。

この成分の最大の特徴は、女性ホルモンの一つである「エストロゲン」と似た化学構造と働きを持つ点にあります。

女性ホルモンと髪の深い関係

エストロゲンは髪の成長期を持続させ、ハリやコシのある豊かな髪を維持する働きがあります。

しかし、加齢やストレス、生活習慣の乱れなどによってエストロゲンの分泌が減少すると髪の成長期が短くなり、休止期に入る髪が増えるため、結果として薄毛が目立つようになります。

大豆イソフラボンは、この減少したエストロゲンの働きを補う形で作用し、髪の健康維持を助けます。

大豆イソフラボンを多く含む食品

食品名100gあたりの含有量目安手軽な摂取方法
納豆約73.5mg1パック(約50g)を毎日
豆腐(木綿)約20.3mg冷奴や味噌汁の具として
豆乳約24.8mgコップ1杯(200ml)を飲む

摂取量の目安と注意点

大豆イソフラボンの1日の摂取目安量の上限は、70〜75mgとされています。この量は、納豆1パックと豆腐半丁、あるいは豆乳コップ1杯程度で十分に摂取できます。

特定の食品に偏らず、様々な大豆製品からバランス良く摂るように心がけましょう。

サプリメントで摂取する場合は、過剰摂取にならないよう注意が必要です。

ライフステージ別・薄毛の原因と食事のポイント

女性の髪の悩みは、年齢やライフイベントによってその原因が異なります。

ここでは、それぞれのステージで直面しやすい髪の問題と、それに応じた食事のポイントを解説します。

20代・30代|ダイエットやストレスによる栄養偏り

この年代で薄毛の悩みが増える背景には、無理なダイエットによる栄養失調や、仕事・プライベートのストレスが大きく関係しています。

食事を抜いたり、特定の食品ばかり食べたりする生活は、髪に必要な栄養素が不足する直接的な原因となります。

また、ストレスは自律神経を乱し、頭皮の血行不良を引き起こします。

ホルモンバランスを整える生活習慣

  • 1日3食の徹底
  • 適度な運動
  • 質の良い睡眠
  • リラックスする時間

40代・50代|ホルモンバランスの変化と向き合う

40代以降は、更年期に向けて女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が大きく揺らぎながら減少していきます。

髪のハリやコシを保っていたエストロゲンの減少は、髪質の変化や抜け毛の増加に直結します。

この年代では、ホルモンバランスの変化を穏やかにする食生活が重要です。

大豆イソフラボンを積極的に摂る習慣に加え、抗酸化作用のあるビタミンEや、骨の健康も考えてカルシウムを意識すると良いです。

産後の抜け毛と食事でのケア

出産後に一時的に抜け毛が急増する「産後脱毛症」は、多くのママが経験します。

これは、妊娠中に高まっていた女性ホルモンの濃度が、出産後に一気に正常値に戻るために起こる現象です。加えて、授乳による栄養不足や育児のストレスも影響します。

この時期は、タンパク質や鉄分、カルシウムを特に意識して摂取し、母体と髪の回復を食事でサポートしましょう。

知らずに続けているかも?薄毛を招く食習慣

良かれと思って続けている習慣や、何気なく口にしているものが、実は薄毛を進行させている可能性があります。

髪の健康のために避けたい食習慣を見直してみましょう。

過度な食事制限の危険性

体重を減らすための極端な食事制限は、髪にとって最も危険な行為の一つです。

体は摂取カロリーが不足すると生命維持を優先し、髪や爪への栄養供給を後回しにします。そのため髪が細くなり、抜けやすくなってしまいます。

脂肪分や糖分の多い食事

揚げ物やスナック菓子、甘いものなどを過剰に摂取すると、皮脂が過剰に分泌されます。頭皮の皮脂が増えすぎると毛穴が詰まり、炎症やかゆみを引き起こす場合があります。

この頭皮環境の悪化が、抜け毛の原因となっているケースも見受けられます。

注意したい食品や成分

カテゴリ具体例髪への影響
高脂肪食揚げ物、ファストフード、洋菓子皮脂の過剰分泌、血行不良
高糖質食菓子パン、ジュース、ケーキ糖化による頭皮の老化促進
加工食品インスタント麺、スナック菓子栄養価が低く、添加物が多い

インスタント食品・ファストフードの問題点

手軽で便利なインスタント食品やファストフードですが、これらは一般的に脂質や塩分が多く、ビタミンやミネラルといった髪に必要な栄養素が不足しがちです。

また、食品添加物の中には、一部の栄養素の吸収を妨げるものもあります。頻繁に利用する食生活は、栄養バランスの乱れに直結します。

体を冷やす食べ物の影響

冷たい飲み物や食べ物、夏野菜などを過剰に摂ると、内臓が冷えて血行が悪くなるときがあります。頭皮の血行不良は、毛根への栄養供給を滞らせる原因となります。

特に冷え性の方は、体を温める食材(生姜、根菜類など)を食事に取り入れるように意識しましょう。

美髪を育む食生活の組み立て方

薄毛改善のためには、特定の食べ物だけを摂るのではなく、日々の食生活全体をバランス良く整える視点が重要です。

バランスの取れた食事の基本

健康な髪を育むための食事は、「主食・主菜・副菜」をそろえるのが基本です。

ご飯やパンなどの「主食」でエネルギーを、肉や魚などの「主菜」でタンパク質を、野菜やきのこ、海藻などの「副菜」でビタミン・ミネラルを補給します。

この形を意識するだけで、自然と栄養バランスが整います。

バランスの良い食事の構成

分類役割食品例
主食エネルギー源ごはん、パン、麺類
主菜体を作る(タンパク質)肉、魚、卵、大豆製品
副菜体の調子を整える野菜、きのこ、海藻

1日3食を心がける重要性

食事を抜くと次の食事で血糖値が急上昇しやすくなり、体に負担がかかります。また、空腹時間が長くなると体がエネルギーを節約しようと代謝を落とし、栄養の吸収率も低下させてしまいます。

決まった時間に1日3食を摂る習慣は、体内のリズムを整え、安定して髪に栄養を届けるために大切です。

食事を楽しむことが心身への良い影響に

「これを食べなくては」と義務感に駆られると、食事がストレスになるときもあるでしょう。ストレスは血行を悪化させ、髪に良くありません。

旬の食材を取り入れたり、彩りを考えたりと、食事を楽しむ工夫も大切です。リラックスして美味しく食べると栄養の吸収を助け、心身の健康にもつながります。

食事だけでは補えない?サプリメント活用の是非

忙しい毎日の中で、常に完璧な栄養バランスの食事を続けるのは難しいかもしれません。

そのような場合に、サプリメントの活用を考える方も多いでしょう。

サプリメントはあくまで補助

まず理解しておくべきなのは、サプリメントは食事の代わりにはならない、ということです。

栄養は、様々な食材を組み合わせて食事から摂ると互いに吸収を高め合います。

サプリメントは、あくまで食事で不足しがちな栄養素を「補う」ためのものと位置づけ、食生活の基本を整えることを最優先にしましょう。

サプリメントで補う場合の栄養素

  • 亜鉛
  • 鉄分
  • ビタミンB群

選ぶ際のポイント

女性の薄毛対策としてサプリメントを選ぶ際は、特定の成分に偏ったものではなく、髪に必要なタンパク質(アミノ酸)、ビタミン、ミネラルがバランス良く配合されたものを選ぶと良いでしょう。

また、成分表示を確認し、不要な添加物が少なく、信頼できるメーカーの製品を選ぶのが重要です。不明な点は、医師や薬剤師に相談しましょう。

過剰摂取のリスク

栄養素によっては、過剰に摂取すると健康被害を引き起こすものもあります。特に脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)やミネラル類は、体に蓄積されやすいため注意が必要です。

サプリメントを利用する際は、必ず製品に記載されている1日の摂取目安量を守りましょう。

よくある質問

「はげない食べ物」「はげ対策になる食べ物」と聞くと、わかめや大豆などの特定の食材が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。

しかし、髪の毛の健康は、さまざまな栄養素をバランス良く摂る食生活によって成り立っています。

ちょっとした意識の積み重ねではありますが、この機会に髪の健康を考えた食事スタイルを始めてみましょう。

海藻類は本当に髪に良いのですか?

海藻類は髪に良い影響を与えます。わかめや昆布、ひじきなどに含まれるミネラルや食物繊維は、髪の健康をサポートし、頭皮環境を整えるのに役立ちます。

特にヨウ素は甲状腺ホルモンの材料となり、新陳代謝を活発にします。

ただし、「海藻だけを食べれば髪が生える」というわけではなく、あくまでバランスの取れた食事の一部として取り入れるのが大切です。

特定の食べ物だけをたくさん食べれば効果はありますか?

効果は期待できません。髪の健康は、多くの栄養素が協力し合って成り立っています。

例えば、タンパク質だけを大量に摂っても、それを髪に変えるための亜鉛やビタミンが不足していれば、効率よく髪は作られません。

一つの食材に偏るのではなく、様々な食品を組み合わせたバランスの良い食事こそが、薄毛改善への近道です。

効果はどれくらいで実感できますか?

食生活の改善による効果を髪で実感するには、少なくとも3ヶ月から6ヶ月は必要です。

髪の毛には成長サイクル(ヘアサイクル)があり、食事改善の効果が新しい髪に反映され、その髪が伸びて目に見えるようになるまでには時間がかかります。

焦らず、まずは健康な体を作るという意識で、根気強く食生活を続けていきましょう。

コーヒーやアルコールの影響はありますか?

適量であれば大きな問題はありませんが、過剰な摂取は注意が必要です。コーヒーに含まれるタンニンは、亜鉛や鉄分の吸収を妨げる場合があります。

また、アルコールを分解する際には、髪に必要なビタミンやアミノ酸が大量に消費されます。飲み過ぎは肝臓に負担をかけ、髪の生成にも影響します。

嗜む程度に留め、食事と時間を空けるなどの工夫をすると良いでしょう。

参考文献

PHAM, Christine T., et al. The role of diet as an adjuvant treatment in scarring and nonscarring alopecia. Skin appendage disorders, 2020, 6.2: 88-96.

PENG, Lin, et al. Unhealthy diet and lifestyle factors linked to female androgenetic alopecia: a community-based study from Jidong study, China. BMC Public Health, 2025, 25: 606.

RUSHTON, D. Hugh. Nutritional factors and hair loss. Clinical and experimental dermatology, 2002, 27.5: 396-404.

GOKCE, Nuriye, et al. An overview of the genetic aspects of hair loss and its connection with nutrition. Journal of preventive medicine and hygiene, 2022, 63.2 Suppl 3: E228.

WANG, Ruilong, et al. Micronutrients and Androgenetic Alopecia: A Systematic Review. Molecular Nutrition & Food Research, 2024, 68.22: 2400652.

ANASTASSAKIS, Konstantinos. Diet, Lifestyle, and AGA/FPHL. In: Androgenetic Alopecia From A to Z: Vol. 2 Drugs, Herbs, Nutrition and Supplements. Cham: Springer International Publishing, 2022. p. 255-267.

MINOKAWA, Yoko; SAWADA, Yu; NAKAMURA, Motonobu. Lifestyle factors involved in the pathogenesis of alopecia areata. International Journal of Molecular Sciences, 2022, 23.3: 1038.

GUO, Emily L.; KATTA, Rajani. Diet and hair loss: effects of nutrient deficiency and supplement use. Dermatology practical & conceptual, 2017, 7.1: 1.

この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

目次