日差しが強くなる季節、お肌のUVケアは念入りに行う方が多いと思いますが、髪や頭皮の紫外線対策は見落としがちです。
実は、髪も肌と同じように紫外線によって大きなダメージを受け、パサつきや枝毛、さらには薄毛の原因にもなり得ます。
この記事では、女性の髪と頭皮を紫外線から守るための具体的なUVケア方法、効果的なヘアケア製品の選び方や使い方、そして紫外線ダメージを受けた後のアフターケアまで、専門的な視点から詳しく解説します。
正しい知識を身につけ、健やかで美しい髪を維持しましょう。
紫外線が髪と頭皮に与える深刻な影響
紫外線は、私たちの想像以上に髪と頭皮に様々な問題を引き起こします。
その影響を正しく理解することが、効果的なUVケアの第一歩です。
キューティクルの損傷と乾燥
髪の最も外側にあるキューティクルは、紫外線にさらされると剥がれたり、めくれたりします。
キューティクルが傷つくと髪内部の水分が蒸発しやすくなり、髪は乾燥してパサパサの状態になります。
この状態が続くと手触りが悪くなるだけでなく、切れ毛や枝毛も発生しやすくなります。
メラニン色素の分解と髪色の変化
紫外線は髪内部のメラニン色素を分解する作用があります。これにより黒髪は赤茶色っぽく褪色し、ヘアカラーをしている場合は色が抜けやすくなります。
特に、濃い色に染めている方や、明るいカラーを楽しんでいる方は、紫外線による影響を受けやすいので注意が必要です。
紫外線の種類と髪への影響
紫外線の種類 | 特徴 | 髪への主な影響 |
---|---|---|
UV-A | 地表に届く紫外線の約9割。波長が長く、髪の内部まで到達する。 | メラニン色素を分解し、髪色を変化させる。髪のタンパク質をゆっくりと変性させる。 |
UV-B | 地表に届く紫外線の約1割。波長が短く、主に髪の表面に影響。 | キューティクルを損傷させ、乾燥やパサつきを引き起こす。頭皮の炎症の原因にもなる。 |
頭皮へのダメージと薄毛リスク
頭皮も肌の一部であり、紫外線を浴びることで日焼けし、炎症を起こす場合があります。
頭皮の乾燥やかゆみ、フケといったトラブルだけでなく、毛根にもダメージが及んで健康な髪の成長を妨げるときがあります。
長期的には、頭皮環境の悪化が薄毛や抜け毛のリスクを高める可能性があります。
髪のタンパク質の変性
髪の主成分であるケラチンタンパク質は、紫外線のエネルギーによって変性する場合があります。
タンパク質が変性すると髪の弾力や強度が失われ、ゴワつきや切れやすい状態になります。
この変化は髪の見た目だけでなく、スタイリングのしにくさにも繋がります。
なぜ女性の髪にUVケアが特に必要なのか
女性の髪は男性に比べて様々な要因からデリケートな状態にあるケースが多く、紫外線対策の重要性がより高まります。
ホルモンバランスと髪質の変化
女性は、月経周期や妊娠、出産や更年期など、ライフステージを通じてホルモンバランスが大きく変動します。
このホルモンバランスの変化は、髪の太さやハリ、コシや水分量に影響を与え、髪質を変化させるときがあります。
髪が細くなったり乾燥しやすくなったりすると、紫外線の影響をより受けやすくなります。
ヘアカラーやパーマによるダメージとの相乗効果
おしゃれを楽しむためにヘアカラーやパーマを定期的に行う女性は多いでしょう。
これらの施術は少なからず髪に負担をかけ、キューティクルを傷つけたり、髪内部のタンパク質を変化させたりします。
ダメージを受けた髪は紫外線の影響をさらに受けやすく、乾燥やパサつき、色落ちなどが加速する可能性があります。
そのため、カラーやパーマをしている髪には、より一層のUVケアが求められます。
加齢による髪の感受性の高まり
年齢を重ねるとともに髪を生み出す毛母細胞の働きが低下したり、頭皮の血行が悪くなったりするため、髪が細く弱々しくなる傾向があります。
また、髪の水分保持能力も低下し、乾燥しやすくなります。
このような加齢による変化は髪のバリア機能を弱め、紫外線に対する感受性を高めます。
加齢に伴う髪の変化とUVケアのポイント
加齢に伴う髪の変化 | 紫外線による影響 | UVケアのポイント |
---|---|---|
髪が細くなる・ハリコシ低下 | ダメージを受けやすく、切れやすい | 髪を保護する成分配合の製品を選ぶ |
水分保持能力の低下(乾燥) | パサつき、ごわつきが進行しやすい | 保湿効果の高いUVケア製品を使用する |
メラニン色素の減少(白髪) | 白髪は黄ばみやすい | 白髪用のUVケア製品も検討する |
生活スタイルの変化と紫外線暴露機会の増加
現代の女性は、仕事や趣味、育児などで屋外での活動機会が増える傾向にあります。
通勤や外回り、子供との公園遊びやスポーツなど、知らず知らずのうちに紫外線を浴びる時間は長くなっています。
このような生活スタイルの変化も、髪のUVケアの必要性を高める一因です。
日常でできる基本的な髪のUV対策
特別な製品を使わなくても、日常生活の中で少し意識を変えるだけで、髪と頭皮を紫外線から守れます。
手軽に始められる基本的な対策を行っていきましょう。
帽子の選び方と効果的なかぶり方
帽子は、物理的に紫外線を遮断する最も効果的なアイテムの一つです。
つばの広いデザインや、UVカット加工が施された素材のものを選ぶと良いでしょう。
髪全体を覆うように深くかぶると、頭頂部だけでなく、顔周りの髪やうなじも保護できます。
項目 | ポイント |
---|---|
つばの広さ | 7cm以上が目安 |
素材 | 麦わら、濃い色の布地など |
フィット感 | きつすぎず、風で飛ばされない程度 |
日傘の活用法と選び方のポイント
日傘もまた、紫外線対策に有効です。特に、髪だけでなく顔や首周りも同時に守りたい場合に役立ちます。
UVカット率の高いもの(UPF50+など)、遮光性の高いもの、内側が黒いものを選ぶと、反射光による影響も軽減できます。
髪の分け目を変える工夫
いつも同じ分け目にしていると、その部分の頭皮が集中して紫外線を浴びてしまいます。
定期的に分け目を変えると、特定の部分へのダメージ集中を防げます。
数日ごとや、スタイリングを変えるタイミングで意識してみましょう。
日陰を意識した行動
外出時にはできるだけ日陰を選んで歩いたり、日差しの強い時間帯(午前10時~午後2時頃)の長時間の外出を避けたりする工夫も、基本的ながら重要な対策です。
建物の影や木陰などを上手に利用しましょう。
髪用UVケア製品の種類と選び方
日差しが強い日や屋外で長時間過ごす際には、髪用のUVケア製品の使用が推奨されます。
様々なタイプの製品があるので、それぞれの特徴を理解し、自分の髪質や生活スタイルに合ったものを選びましょう。
UVカットスプレーの特徴と使い方
髪用のUVヘアスプレーは、広範囲に手軽に塗布できるのが最大のメリットです。髪の表面に均一に膜を作り、紫外線を防ぎます。
使用する際は髪から15~20cm程度離し、髪全体、特に表面や分け目、生え際などにまんべんなくスプレーします。
スタイリングの仕上げや、外出先での塗り直しにも便利です。
UVカットスプレーのメリット・デメリット
項目 | 内容 |
---|---|
メリット | 手が汚れにくい、広範囲に塗布可能、重ね付けしやすい |
デメリット | ムラになりやすい場合がある、保湿力は他のタイプに劣ることがある |
UVカットオイル・ミルク・クリームの比較
オイルやミルク、クリームタイプのUVケア製品は、スプレータイプに比べて保湿力が高いものが多く、髪の乾燥を防ぎながら紫外線をカットする効果が期待できます。
オイルはツヤ出し効果もあり、ミルクはしっとりまとまる仕上がり、クリームはダメージ補修効果を兼ね備えたものなど、製品によって特徴が異なります。
髪用UVケア製品タイプ別特徴
タイプ | 主な特徴 | おすすめの髪質・悩み |
---|---|---|
スプレー | 手軽、広範囲、重ね付けしやすい | 全髪質、外出先でのケア |
オイル | ツヤ出し、保湿、まとまり | 乾燥毛、広がりやすい髪 |
ミルク | しっとり、保湿、軽やか | 普通毛、やや乾燥毛 |
クリーム | 高い保湿力、ダメージ補修 | ダメージ毛、乾燥毛 |
SPF・PA値の理解とシーン別選択
日焼け止め製品で見かけるSPFとPAの表示は、紫外線防御効果の目安です。
SPFはUV-B(短時間で肌に赤みや炎症を起こさせる紫外線)を防ぐ効果、PAはUV-A(肌の奥深くまで到達し、シワやたるみの原因となる紫外線)を防ぐ効果を示します。
日常生活ではSPF20~30、PA++程度、レジャーなど長時間屋外で過ごす場合はSPF50+、PA++++など、シーンに合わせて選びましょう。
敏感肌向けの製品選び
頭皮が敏感な方や肌に優しい製品を選びたい方は、紫外線吸収剤フリー(ノンケミカル処方)の製品や、アルコール、パラベン、香料、着色料などが無添加のものを選ぶと良いでしょう。
使用前にパッチテストを行うことも大切です。
UVケア製品の効果的な使い方と注意点
せっかくUVケア製品を使っても、使い方が間違っていると十分な効果が得られません。
効果を最大限に引き出すためのポイントと、使用上の注意点を解説します。
塗布量の目安と塗り直しの頻度
製品に記載されている使用量を守るのが基本です。量が少ないと、表示されているSPF・PA値の効果が得られません。
また、汗をかいたり、髪を触ったりするとUVケア製品は落ちてしまうため、2~3時間おきを目安にこまめに塗り直すことが重要です。
特に日差しが強い場所では、より頻繁な塗り直しを心がけましょう。
髪全体にムラなく塗るコツ
スプレータイプの場合は髪の表面だけでなく、内側や毛先にも行き渡るように、髪を持ち上げながら多方向からスプレーします。
オイルやミルク、クリームタイプの場合は手のひら全体に広げてから、髪の中間から毛先を中心になじませ、最後に手に残ったものを髪の表面や分け目に軽くつけます。
UVケア製品をムラなく塗るためのポイント
- 髪をブロッキングして塗る
- 鏡を見ながら丁寧に
- 特に紫外線が当たりやすい頭頂部、分け目、顔周りは念入りに
頭皮への使用可否と注意点
髪用のUVケア製品の中には、頭皮にも使用できるものと、そうでないものがあります。製品の表示をよく確認しましょう。
頭皮に使用する場合は毛穴を詰まらせないよう、夜のシャンプーでしっかり洗い流します。
頭皮専用のUVケア製品も選択肢の一つです。
他のスタイリング剤との併用
UVケア製品と他のスタイリング剤を併用する場合は、使用順序が大切です。
一般的には、洗い流さないトリートメントやUVケア効果のあるベース剤を先につけ、その後にスタイリング剤(ワックス、ムースなど)、最後にUVカットスプレーで仕上げるのがおすすめです。
製品によって推奨される順序が異なる場合もあるため、説明書を確認しましょう。
紫外線ダメージを受けた髪のアフターケア
どんなに気をつけていても、紫外線を完全に避けるのは難しいものです。
日差しを浴びてしまった後には、適切なアフターケアを行い、髪と頭皮へのダメージを最小限に抑えましょう。
優しいシャンプーとトリートメントの選び方
紫外線を浴びた後の髪と頭皮はデリケートな状態です。洗浄力の強すぎるシャンプーは避け、アミノ酸系などのマイルドな洗浄成分のシャンプーを選びましょう。
トリートメントは、保湿成分やダメージ補修成分が配合されたものを使用し、髪内部に潤いを与え、キューティクルを整えます。
アフターケアにおすすめの保湿・補修成分
成分カテゴリ | 代表的な成分 | 期待できる効果 |
---|---|---|
保湿成分 | セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲン、グリセリン | 髪と頭皮に潤いを与える |
補修成分 | ケラチンPPT、シルクPPT、ペリセア | ダメージ部分を補修し、ハリ・コシを与える |
抗炎症成分 | グリチルリチン酸2K、アラントイン | 頭皮の炎症を抑える |
保湿を重視したヘアケア
シャンプー後は洗い流さないトリートメントやヘアオイル、ヘアミルクなどでしっかりと保湿ケアを行います。
特にパサつきやすい毛先には、重ね付けするのも効果的です。
ドライヤーの熱からも髪を守るために、ヒートプロテクト効果のある製品を選ぶのも良いでしょう。
頭皮マッサージの効果と方法
頭皮マッサージは血行を促進し、頭皮環境を整える効果が期待できます。
シャンプー時や、アウトバストリートメントを塗布した後などに、指の腹を使って優しくマッサージしましょう。
頭皮が硬くなっていると感じる場合は、念入りに行うと良いでしょう。このマッサージにより、栄養が髪に行き渡りやすくなります。
インナーケアの重要性(食事と睡眠)
美しい髪を育むためには外側からのケアだけでなく、内側からのケアも重要です。バランスの取れた食事で髪に必要な栄養素を摂取し、質の高い睡眠で成長ホルモンの分泌を促しましょう。
特に、タンパク質やビタミン、ミネラルは健康な髪の維持に欠かせません。
髪の健康に良いとされる栄養素
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品 |
---|---|---|
タンパク質 | 髪の主成分 | 肉、魚、卵、大豆製品 |
亜鉛 | タンパク質の合成を助ける | 牡蠣、レバー、牛肉 |
ビタミンB群 | 頭皮環境を整える、代謝を促す | レバー、マグロ、カツオ、納豆 |
女性の髪のUVケアに関するよくある質問(Q&A)
さいごに、患者さんからよく寄せられる髪のUVケアに関するご質問とその回答をまとめました。
- 髪用の日焼け止めは毎日使うべきですか?
-
紫外線の強さや外出時間によって調整するのが良いでしょう。日常生活で短時間の外出であれば、帽子や日傘での対策でも十分な場合があります。
しかし、日差しが強い日や屋外で長時間過ごすときは、髪用の日焼け止め(UVカットスプレーなど)の使用をおすすめします。
特に、髪の分け目や頭頂部は紫外線を浴びやすいため、意識してケアしましょう。
- 雨や曇りの日でもUVケアは必要ですか?
-
必要です。曇りの日でも晴天時の約60~80%、雨の日でも約20~30%の紫外線が地上に降り注いでいると言われています。
特にUV-Aは雲を通過しやすいため、天候に関わらず、紫外線対策を心がけることが大切です。年間を通じたUV対策ヘアケアが理想的です。
- UVカット製品は洗い流しにくいイメージがありますが、どうすれば良いですか?
-
最近の髪用UVカット製品は、通常のシャンプーで洗い流せるものがほとんどです。
ただし、ウォータープルーフタイプなど、製品によっては落ちにくいものもあります。その場合は、クレンジング効果のあるシャンプーを使用したり、二度洗いしたりすると良いでしょう。
大切なのは、その日のうちにしっかりと洗い流し、頭皮や髪に製品が残らないようにする習慣です。
- UVケアをしても髪が傷んでしまった場合はどうすれば良いですか?
-
まずは、保湿と補修を中心としたアフターケアを徹底しましょう。
それでも改善が見られないときや、ダメージが深刻な場合は、自己判断せずに専門医にご相談ください。
クリニックでは髪の状態に合わせたトリートメントや、頭皮環境を整える治療など、専門的なケアも提供しています。早めの対処が、髪の健康を取り戻すための鍵となります。
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