マラセチア毛包炎の症状が治らない原因と改善方法

マラセチア毛包炎は皮膚や頭皮の毛穴周辺にマラセチア菌が増殖することで発症し、かゆみや赤いブツブツなどの症状が目立ちます。

治療を行っているのに症状が治りにくいと感じる方は少なくありません。再発を繰り返す背景には、皮膚環境や頭皮ケアの方法、生活習慣など複数の要素が関わります。

頭皮環境が乱れると、将来的に薄毛につながる恐れがあるため、早い段階で適切な対策をとることが大切です。

マラセチア毛包炎とは？

マラセチア毛包炎は、皮脂の多い部位に棲息しやすいマラセチア属の真菌（カビ）の増殖によって起こります。

毛穴に炎症が起きることで小さな発疹ができ、かゆみや痛みが生じることがあります。とくに背中、胸、頭皮などにできやすいといわれています。

マラセチア菌の特徴

マラセチア菌は皮膚の常在菌の1つで、通常は大きなトラブルを起こしません。

しかし、皮脂の分泌量が増えるなど環境が整うと急激に増殖し、炎症を引き起こします。皮脂が多い場所ほど注意が必要です。

マラセチア菌と皮脂の関係

項目	内容
マラセチア菌	皮脂を好んで栄養源にする常在菌
皮脂分泌量	多いほどマラセチア菌の増殖が活発になりやすい
主な生息部位	頭皮、顔、胸、背中など皮脂分泌が多い部位
増殖のきっかけ	ホルモンバランスの乱れ、ストレス、脂質の多い食生活

毛穴の構造と炎症のメカニズム

毛穴の奥には皮脂腺があり、皮脂が分泌されることで皮膚を保護しています。

マラセチア菌が異常に増え、毛穴周辺の免疫反応が過度に働くと、赤いブツブツやかゆみが発生します。

脂性肌や汗をかきやすい人ほど、この炎症が起きやすい傾向があります。

多くの人が感じる症状

マラセチア毛包炎は症状が軽い場合には、小さな発疹や軽いかゆみ程度で済むことがあります。

しかし、次のように不快感を伴うケースもあるので見逃せません。

• 強いかゆみ
• 赤みを伴う膿をもった発疹
• シャンプー時や服が擦れたときの痛み
• じゅくじゅくとした湿疹が長引く

頭皮に出やすい理由

頭皮は皮脂が多く分泌される部位であると同時に、髪の毛が密集して蒸れやすい環境です。

頭皮にマラセチア毛包炎が起こると、かゆみだけでなく抜け毛を招く恐れがあります。

とくに男性ホルモンの影響などで皮脂分泌が増えやすい方は注意が必要です。

マラセチア毛包炎の症状が治りにくい背景

マラセチア毛包炎の症状が治りにくいと感じる方の中には、日常生活やケア方法に原因が潜んでいる場合が少なくありません。ここでは、症状が長引く背景を詳細に解説します。

油分の過剰摂取や皮脂分泌の増加

皮脂の分泌が多いほどマラセチア菌は増えやすく、毛穴が詰まりやすくなります。

脂っこい食事が多かったり、ホルモンのバランスが乱れていたりすると皮脂が増加し、症状が悪化しやすくなります。

皮脂分泌の増加につながりやすい要因

要因	内容
脂質の多い食生活	揚げ物やファストフード、甘い菓子など
ホルモンバランス変化	ストレス、睡眠不足、更年期など
洗髪・洗顔の頻度	過剰な洗浄や不十分な洗浄が皮脂量を乱す要因
遺伝的傾向	家族性に皮脂分泌が多い体質

誤ったスキンケア・ヘアケア

ニキビ用の洗顔料や強力な洗浄力を持つシャンプーで徹底的に皮脂を落とそうとすると、逆に皮膚が乾燥しやすくなり防御機能が低下します。

すると体はさらに皮脂分泌を増やしてしまい、マラセチア菌が増えやすい環境になります。

一時的な症状改善で安心してしまう

マラセチア毛包炎は症状が軽減した直後にケアを怠ると再発しやすい傾向があります。

見た目がよくなった段階で治ったと思い込み、セルフケアをやめてしまうことが悪循環を生む原因となります。

皮膚科受診のタイミングが遅れる

「薬局の市販薬でなんとかしよう」「自然に治るのではないか」と放置すると、炎症が悪化する可能性があります。

頭皮にできた場合はとくに発見しにくく、気づいたときには症状が広範囲に及ぶこともあります。

マラセチア毛包炎が悪化するとどうなるか

マラセチア毛包炎が適切に対処されないまま悪化すると、治療期間が長引くだけでなく、皮膚や頭皮に深刻なダメージを与える恐れがあります。

悪化した場合のリスクを知ることが、早い段階での対処を考えるうえでは重要です。

重度の炎症による肌トラブル

マラセチア毛包炎が進行すると、皮膚表面の広範囲に赤みや膿疱が生じる場合があります。

日常生活に支障をきたすようなかゆみや痛みでストレスを感じることが増え、なかなか治りにくい状態に陥ります。

色素沈着や瘢痕

炎症が長引くと、肌が茶色っぽく色素沈着を起こす場合があります。

また、潰してしまったり無理に掻いてしまったりすると瘢痕化（跡が残ること）に至るケースもあるため注意が必要です。

炎症が進行した場合に起こりうる症状

症状	主な特徴
色素沈着	黒ずみや茶色のシミが残る
瘢痕	盛り上がりや凹みとして残る
萎縮性瘢痕	皮膚が薄く凹んでしまう
ケロイド化	盛り上がりが広がっていく

頭皮がダメージを受けることで起こる抜け毛

頭皮にマラセチア毛包炎が生じた際、炎症によって毛根が弱る可能性があります。

毛根が傷むと一時的に抜け毛が増えるだけでなく、長期的に毛髪が細くなるリスクもあり、薄毛を気にする方にとって大きな不安要因です。

慢性化による心理的負担

ニキビのような見た目が目立つと、人目を気にして外出を控えたり帽子を常用したりする方もいます。

慢性的なストレスがホルモンバランスを乱し、さらに皮脂分泌を増やす要因になるケースもあります。

マラセチア毛包炎と薄毛リスク

マラセチア毛包炎を放置してしまうと、将来的に頭皮環境の悪化が進み、抜け毛が増えるリスクがあります。

ここでは、炎症と薄毛の関係、AGAとの関連性などについて掘り下げます。

マラセチア毛包炎が頭皮に与える影響

頭皮は髪の毛の成長に欠かせない土台です。炎症が続くと毛根周辺の細胞が損傷して髪が正常に育ちにくくなる恐れがあります。

また、かゆみから無意識に掻いてしまうことで頭皮のバリア機能が低下し、余計にダメージが増します。

AGA治療への発展の可能性

男性型脱毛症（AGA）は男性ホルモンの影響で進行しますが、頭皮環境の乱れや慢性的な炎症が薄毛を悪化させるのも事実です。

マラセチア毛包炎の症状がなかなか改善しない方は、頭皮の健康状態が落ちている可能性があります。

このような方がAGA治療をスタートする場合、頭皮の炎症を抑えるケアと並行して取り組むことが望ましいです。

炎症による抜け毛とAGAによる抜け毛の違い

炎症による抜け毛は、かゆみや痛みを伴い、頭皮の赤みや吹き出物の周辺が脱毛しやすいです。

一方、AGAによる抜け毛は生え際や頭頂部から徐々に薄くなります。かゆみや赤みはさほど顕著ではありません。

炎症による脱毛とAGAの特徴

特徴	炎症による脱毛	AGAによる脱毛
症状の位置	炎症のある部位周辺	生え際や頭頂部が中心
かゆみ・痛み	強く出る場合がある	あまり目立たない
皮膚状態	赤みやブツブツが見られる	目立った発疹はない
抜け毛の進行速度	急激に増えることもある	ゆるやかだが、放置で広範囲に及びやすい

薄毛を防ぐために意識したいこと

• 頭皮の清潔を保つ
• 炎症を抑えるためのケアを継続する
• 食生活や睡眠など生活習慣を見直す
• 抜け毛が増えたと感じたら早めに専門家へ相談する

マラセチア毛包炎の治療方法

マラセチア毛包炎の治療は、抗真菌薬による外用や内服、生活習慣の改善など多岐にわたります。

炎症の程度や患部の範囲によって対策は異なるため、医師の診察を受けることが基本です。

抗真菌薬を中心とした薬物療法

マラセチア菌を抑制するための外用薬（クリーム・ローション）や内服薬を使用して原因菌の繁殖をコントロールします。

皮膚科で処方される薬には次のような種類があります。

抗真菌薬の種類と特徴

薬の種類	使用形態	特徴
外用抗真菌薬	クリームやローション	患部に直接塗布。副作用が少なく比較的使いやすい
内服抗真菌薬	飲み薬	重症例や広範囲に広がっている場合に検討
ステロイド外用薬	軟膏やローション	炎症が強い部位に短期間で使用することがある

刺激を抑えた洗浄と保湿

頭皮や肌のバリア機能を健全に保つためには、適度な洗浄と十分な保湿が必要です。殺菌作用の強いシャンプーを使いすぎると皮膚が乾燥しやすくなるため、マイルドな洗浄力を持つ製品を選ぶとよいでしょう。

また、保湿成分が配合されたローションなどで肌の水分バランスを整えると、再発予防に役立ちます。

皮膚科医による定期的な観察

症状が良くなったように見えても、短期間で治療をやめると再発を繰り返します。

とくに頭皮の症状は、自分でチェックしにくい場所に発疹ができやすいため、皮膚科医による定期的な診察を受けることが大切です。

長引く症状には専門的な治療法を検討する

市販薬やセルフケアで改善が見られない場合、専門の皮膚科やクリニックを受診して原因を突き止める必要があります。

血液検査やアレルギー検査を組み合わせて総合的に評価し、必要に応じてホルモンバランスの調整や生活習慣の指導を受けるケースもあります。

長引くマラセチア毛包炎を日常ケアで改善する方法

マラセチア毛包炎の症状が治らないと感じる方の中には、日常ケアを見直すだけで改善のきっかけになることがあります。

ここでは、具体的なケア方法や生活習慣のポイントを紹介します。

洗髪・洗顔の見直し

頭皮や顔の皮脂を過度に落とす洗浄は逆効果になる可能性があります。適度な回数（1日1回か2回）で、マイルドな洗浄力を持つ製品を使用してください。

指の腹を使って軽くマッサージするように洗うと、毛穴の汚れをやさしく落とせます。

正しい洗髪のポイント

項目	内容
シャンプー前	ぬるま湯でしっかり予洗いを行う
シャンプーの量	適量を手で泡立ててから頭皮に乗せる
マッサージ	指の腹で軽く円を描きながら洗う
すすぎ	シャンプー成分を完全に洗い流す
ドライ	タオルドライ後すぐにドライヤーで乾かす

保湿と皮脂コントロール

洗浄後は肌の乾燥を防ぎ、バリア機能を保つための保湿が必要です。

脂性肌の方も油分が少ない化粧水やローションを活用して、水分を補う意識を持つとよいでしょう。

生活習慣の見直し

脂質や糖分を摂りすぎないようバランスのよい食事を心掛けると皮脂分泌を安定させやすくなります。ビタミンやミネラルを多く含む野菜、果物、タンパク質を意識して摂取するとよいでしょう。

また、寝不足はホルモンバランスに影響を与えるため、十分な睡眠を確保してください。就寝前のスマートフォンやパソコンの使用を控えて深い眠りを得るように工夫しましょう。

ストレスはホルモンバランスを崩し、皮脂分泌が増える要因になります。適度に運動したり趣味の時間を持ったりして、精神的なリラックスを図るとよいでしょう。

頭皮環境を守るヘアケアの工夫

カラーリングやパーマは頭皮にダメージを与えがちです。頻度を見直したり、刺激が少ない薬剤を選んだりするだけでも頭皮環境を改善する可能性があります。

また、髪を長時間濡れたまま放置しないように注意して、雑菌の繁殖を防ぎましょう。

マラセチア毛包炎の再発を防ぐためにできること

マラセチア毛包炎は一度改善しても、再発することがあります。再発を繰り返すと症状が慢性化し、薄毛リスクにも直結する恐れがあるため、再発予防の取り組みが重要です。

継続的な皮膚・頭皮ケア

症状が落ち着いたあとも、定期的に頭皮や肌の状態を確認しながら洗浄と保湿を続けてください。

トラブルが再び起こる前に予防的なケアを実施すると、長期的に良好な状態を維持しやすくなります。

再発予防におすすめの習慣

• 洗髪や洗顔後はすぐに保湿を行う
• 睡眠時間を確保してホルモンバランスを整える
• 皮脂を取りすぎないマイルドな洗浄剤を選ぶ
• ヘアスタイリング剤のつけすぎに注意する
• 髪を清潔に保つため定期的なカットやヘアケアを心掛ける

季節ごとの対策

夏は汗や皮脂の分泌が増えるため、普段より入念な洗浄とこまめな拭き取りが必要です。

冬は空気が乾燥しがちで肌トラブルが起こりやすくなるため、保湿の強化や加湿器の活用を検討するとよいでしょう。

サプリメントや栄養補給

ビタミンA、B、C、E、亜鉛など、皮膚の代謝を助ける栄養素を積極的に摂取することも有効です。

食事だけでは不足しがちな方はサプリメントを利用する方法もありますが、過剰摂取には注意してください。

クリニックでの受診の目安と治療の流れ

マラセチア毛包炎の症状が治りにくい方は、早めの受診が望ましいです。セルフケアでは改善を実感できない場合や、広範囲に炎症が広がっている場合は医師の診察が必要になります。

受診の目安

下記のような症状がある方は、迷わず受診するとよいでしょう。

• 市販薬やセルフケアで2～3週間経っても改善が見られない
• 痛みやかゆみが強く、日常生活に支障がある
• 発疹が急に増え、悪化していると感じる
• 抜け毛が増え、頭皮の炎症が目立つ

初診時の流れ

問診では、いつから症状が続いているのか、どのようなケアをしてきたのかを確認します。

その後、肉眼での観察や拡大鏡、ウッド灯検査などを行い、真菌によるものかを含めて診断します。

診断結果をもとに治療方針を決定し、抗真菌薬や外用薬の使用方法、生活習慣の改善点などを医師から説明します。

治療中の経過観察

数週間～数か月程度の薬物療法や生活習慣の改善によって、炎症が落ち着くか経過を見ていきます。症状の改善具合を確認しながら、薬の調整や追加検査などを行う場合もあります。

マラセチア毛包炎とAGA治療

頭皮の炎症が原因で抜け毛が進行している方や、もともとAGAが疑われる方には、頭皮の状態を整えるケアとAGA治療を並行して行うことが望ましいです。

炎症を抑えることで毛根環境が改善し、薄毛対策の効果を得やすくなる場合があります。

AGA治療と併行する場合

治療内容	マラセチア毛包炎	AGA
抗真菌薬の使用	○	－
抗炎症薬の使用	症状の強い部分に外用	－
生活習慣の見直し	皮脂コントロール	ホルモンバランス安定
育毛剤・内服治療	－	毛根のDHT抑制など
頭皮ケア	マイルドな洗浄・保湿	血行促進など

マラセチア毛包炎の症状が治りにくい方や髪のボリュームが気になり始めた方は、早めに受診して適切な治療計画を立てることをおすすめします。

参考文献

SAUNTE, Ditte ML; GAITANIS, George; HAY, Roderick James. Malassezia-associated skin diseases, the use of diagnostics and treatment. Frontiers in cellular and infection microbiology, 2020, 10: 112.

HALD, Marianne, et al. Evidence-based Danish guidelines for the treatment of Malassezia-related skin diseases. Acta dermato-venereologica, 2015, 95.1.

BOND, Ross. Malassezia dermatitis. In: Greene’s Infectious Diseases of the Dog and Cat. WB Saunders, 2021. p. 978-986.

THAYIKKANNU, Ambujavalli Balakrishnan; KINDO, Anupma Jyoti; VEERARAGHAVAN, Mahalakshmi. Malassezia—can it be ignored?. Indian journal of dermatology, 2015, 60.4: 332-339.

HARADA, Kazutoshi, et al. Malassezia species and their associated skin diseases. The Journal of dermatology, 2015, 42.3: 250-257.