ケラチンとは何か｜皮膚や髪への効果を解説

ケラチンは髪や爪に存在しますが、皮膚のバリア機能にも関係し、体を外部から保護する際に重要な役割を果たします。

髪のハリやコシ、肌の質感や弾力など、美容面でも話題になることが多い一方、薄毛や抜け毛といった悩みとも結びつくことがあります。

この記事では、ケラチンという物質の概要と、皮膚や髪への具体的な影響、AGAを含む薄毛との関係などについて詳しくお伝えします。

ケラチンとは

ケラチンとは、ヒトをはじめとする動物の髪や爪、皮膚の角層などに豊富に含まれるたんぱく質です。

髪の健康をイメージする方が多いかもしれませんが、実は皮膚におけるうるおいやバリア機能を支える要素のひとつでもあります。

ケラチンの基本構造

ケラチンはアミノ酸が多数結合したフィブリル状（繊維状）のたんぱく質で、髪や皮膚だけでなく、動物の角や爪などにも多く存在します。

丈夫で弾力性に優れ、外部刺激から身を守る働きを担います。

ケラチンを構成する主なアミノ酸

アミノ酸名	特徴
シスチン	硫黄を含み髪の強度を高める
メチオニン	筋肉や細胞の材料になる
リジン	コラーゲンとの関係が深い
アルギニン	血流に関わると考えられる

シスチンには硫黄結合があり、これがケラチンの強度や弾力に関係しています。

ケラチンの種類

ケラチンには硬ケラチンと軟ケラチンの２種類が存在します。

硬ケラチンは髪の毛や爪を構成し、曲げたり引っ張ったりしても壊れにくい特徴があります。

軟ケラチンは皮膚の角層を構成し、外部刺激を防いだり、水分量を調整したりする役割を担います。

ケラチンの種類別の特性

種類	主な分布部位	特性
硬ケラチン	髪・爪・動物の角など	弾力や強度を高める
軟ケラチン	皮膚の角層	柔軟性をもち、水分や保護機能に影響

硬ケラチンと軟ケラチンは、それぞれ結合様式や含まれるアミノ酸のバランスが異なり、体内で異なる働きを担います。

体内でのケラチン生成

ケラチンを生み出す細胞は「ケラチノサイト」と呼ばれています。皮膚や髪の毛の生成に大きくかかわり、表皮の深部で生まれたケラチノサイトは、細胞が変化しながら角層にまで到達します。

この過程によって外層が日々新しく生まれ変わり、不要になった古い角質は垢となって剥がれ落ちます。

髪も同様に、毛母細胞などの働きによってケラチンがつくられ、毛髪を形成します。

皮膚細胞のターンオーバー過程

• 表皮の基底層で新しい細胞が生まれる
• 細胞が上方に移動しながらケラチンを生成する
• 角質層に達した細胞は死んだ状態となり、バリア機能を担う
• 数週間で角質が剥がれ落ちる

このサイクルがスムーズに働くと、皮膚の潤いと保護機能を維持できます。

ケラチンが髪に与える効果

髪の主成分はケラチンであり、髪の強度や柔軟性、ツヤなどに大きく関わります。

ここではケラチンが髪の健康をどのように左右するのか、またトラブルと結びつくケースについて説明します。

髪の主成分としての役割

髪は約80〜90％がケラチンでできています。

髪を構造的に支えるコルテックスやキューティクルなど、複数の層でケラチンが密につながることで、外部刺激から毛髪を保護し、強度と弾力を保ちます。

髪の構造とケラチン

層名	特徴
キューティクル	髪の最外層で薄いが硬い層。水分の蒸発や摩擦から保護
コルテックス	毛髪の大部分を占め、髪の強度や太さに関わる
メデュラ	毛髄と呼ばれる中央の空洞部。存在しない髪もある

キューティクルがダメージを受けると、内部のケラチンが流出しやすくなり、髪の質感やツヤが低下します。

パサつきやうねりとの関係

カラーリングやパーマ、紫外線などによるダメージによってケラチンが変性すると、髪内部の水分保持力が落ちます。

すると髪がパサついたり、うねりやすくなったりします。

また、毎日のドライヤーやヘアアイロンなどの熱刺激でもケラチンが損傷し、髪のハリやコシが失われるケースがあります。

ヘアダメージを起こしやすい要因

• 過度な熱処理（ヘアアイロンや高温ドライヤー）
• 強い薬剤を使ったカラーリングやパーマ
• 紫外線や塩素などの外的刺激
• 栄養バランスの乱れや睡眠不足

髪へのケラチン補給や熱ダメージ対策を心がけると、髪のトラブル緩和に役立つ可能性があります。

ケラチントリートメントの考え方

ヘアサロンや市販製品では、ケラチンを補うトリートメントが広く利用されています。

ケラチンを髪表面に付着させ、ダメージホールを一時的に埋める効果が期待できます。

ただし、髪のケラチンは根本的には内側からつくられるものなので、食事や睡眠、頭皮環境のケアも重要です。

ヘアケア製品の活用ポイント

• ケラチン含有のシャンプーやコンディショナーを選ぶ
• 洗い流さないトリートメントで外部補修を意識する
• ドライヤーやアイロンの温度設定に気をつける

ケラチンが皮膚に関わるメカニズム

ケラチンは「皮膚に含まれるたんぱく質」としてもよく取り上げられます。

皮膚の最表層を構成する角層には軟ケラチンがあり、外界からの刺激から体を守る大切な役割を果たします。

皮膚のバリア機能とケラチン

皮膚の角層はケラチンを含む角質細胞と細胞間脂質（セラミドなど）によって構成され、外部からの細菌・ウイルスなどの侵入を防ぎながら、体内の水分蒸発を抑えます。

角質細胞に含まれる軟ケラチンが形を崩しにくい構造を保つことで、このバリアが成り立ちます。

角層とケラチンの構造

項目	構造・特徴
角質細胞	死んだ細胞だがケラチンが豊富に含まれ、シート状に重なり合う
細胞間脂質	セラミドなどの脂質成分が細胞同士を接着し、水分を守る
天然保湿因子	角質細胞内に含まれ、肌のうるおい維持に寄与

軟ケラチンの存在によって皮膚は柔軟性を失わずに、外的刺激に対抗しやすくなります。

皮膚の保湿との関係

ケラチンを豊富に含む角層は、水分を保持する力にも関わっています。

角層の含水量が減ると、肌は乾燥しやすくなり、皮膚のバリア機能が落ちてしまいます。

保湿ケアによってケラチンを保護し、角層の水分量を一定に保つことが、うるおい肌を保つカギとなります。

肌トラブルとの関連

• 乾燥肌やかゆみが生じやすくなる
• 肌のごわつきやバリア機能の低下
• 外的刺激に対して赤みや炎症が起こりやすくなる

ケラチンを支えるスキンケア方法

皮膚をすこやかに保つためには、ケラチンを外から補うことよりも、まずは乱れた角質層をケアし、必要な保湿成分を与えるケアが重要です。

低刺激の洗浄剤で皮膚を洗い、十分な保湿を行うことで角層の状態が整います。

スキンケアに役立つ習慣

• 優しい洗顔や入浴を心がける
• 保湿化粧水やクリームなどで肌のうるおいをサポート
• 紫外線対策として日焼け止めを利用
• バランスのよい食生活でたんぱく質やビタミンを摂取

ケラチンと爪・まつ毛・その他の部位

ケラチンの働きは髪や皮膚だけでなく、爪やまつ毛などの細部にも及びます。

これらの部位は普段あまり意識されないかもしれませんが、実際には健康や美容において重要な存在です。

爪を守るケラチン

硬ケラチンは爪の硬さや保護機能を支え、爪が折れにくい状態をつくります。栄養バランスが乱れると、爪の成長が遅くなったり、縦筋が入るケースがあります。

爪を健康に保つためにも、ケラチンの合成に関わる栄養素を摂ることが大切です。

爪にあらわれるサイン

• 縦筋や割れは、たんぱく質やミネラル不足の可能性がある
• 白い斑点は、カルシウム不足や外部からの衝撃の影響が考えられる
• 二枚爪は、乾燥や外的ダメージを受けやすい状態になっている

これらは一例ですが、爪の状態は体の健康状態を映し出しているとも言われます。

まつ毛におけるケラチン

まつ毛も毛髪の一種です。髪と同様にケラチンを主成分とし、外部刺激から目を守ります。

ビューラーやマスカラなどを頻繁に使うとケラチンにダメージが蓄積し、まつ毛が切れたり抜けやすくなる場合があります。

まつ毛ケアのポイント

• メイクオフは刺激の少ないクレンジングを選ぶ
• ビューラーの使い方を見直す（ゴム部分を清潔に保つ）
• まつ毛美容液を活用し、栄養補給をサポート

その他の皮膚付属器

皮膚の付属器としては汗腺や皮脂腺などもありますが、ケラチンが多く含まれるのは髪・爪・まつ毛が中心となります。

全身の皮膚や毛穴が健やかに保たれると、これらの部位の成長にも良い影響があります。

体内のケラチンが影響する部位

部位	主な働き
毛髪	頭部を外的刺激から保護
爪	指先を保護し、細かい作業を支援
まつ毛	目を異物から守る

栄養学面から見たケラチンの補い方

体内でつくられるケラチンは、外部から摂取するアミノ酸などの栄養が原料になります。

ここではケラチンと関連の深い栄養素や食品、食事のとり方などを取り上げます。

ケラチン合成を助ける栄養素

ケラチンはたんぱく質なので、まずは十分なたんぱく質を摂取することが重要です。

特に含硫アミノ酸（シスチン、メチオニンなど）はケラチンの構造維持に関係します。また、ビタミンB群や亜鉛などのミネラルもケラチン合成のサポート役となります。

ケラチン生成に関係の深い栄養素

栄養素	期待できる働き
たんぱく質	ケラチンの基になるアミノ酸を提供
ビタミンB6	タンパク質代謝を助け、ケラチン合成を補助
亜鉛	毛髪や皮膚の細胞増殖をサポート
シスチン・メチオニン	硫黄を含み、ケラチンの強度を高める可能性がある

食事で気をつけたいポイント

一度の食事で大量のたんぱく質を摂取しても、体が使いきれない場合があります。

１日の食事を通じて少しずつ摂取するほうが効率的です。過度な糖質制限などによる栄養バランスの乱れは、ケラチンの合成に影響を及ぼすおそれがあります。

ケラチンを意識した食事

タイミング	食事例
朝	卵（ビタミンB6やメチオニンを含む）、納豆、野菜スープ
昼	鶏胸肉や魚など良質なたんぱく源、玄米、野菜サラダ
夜	大豆製品や豆類などのたんぱく質、海藻、味噌汁

食品からの補助とサプリメント

高たんぱく食を心がけても足りないと感じる場合は、プロテインやアミノ酸サプリメントを活用する手段もあります。

しかし、単一の成分に偏りすぎず、総合的な栄養バランスを意識することが重要です。

ケラチン摂取に役立つ食品

• 卵・鶏肉・魚類などの動物性食品
• 大豆製品などの植物性たんぱく質
• 亜鉛を含む牡蠣やレバー
• シスチンを多く含むゴマや玄米

ケラチンと薄毛（AGA）との関係

ケラチンは髪の主成分ですが、だからといってケラチンを大量に取り入れるだけで薄毛が改善するわけではありません。

ただし、髪の土台を整える意味でも、ケラチンが関係する栄養面や頭皮環境のケアは大切です。

AGAの基本的なメカニズム

AGA（男性型脱毛症）は、男性ホルモンであるテストステロンがジヒドロテストステロン（DHT）に変化し、毛母細胞の働きを低下させることで引き起こされると考えられています。

このホルモンの影響により髪が十分に育たず、薄毛が進行する可能性が高まります。

AGAと頭皮環境の関係

要素	影響
DHT（ジヒドロテストステロン）	毛母細胞の正常な働きを妨げる
皮脂の過剰分泌	毛穴の詰まりや頭皮トラブルにつながる
血行不良	毛根への栄養供給が滞り、髪の成長サイクルが乱れる

AGAはホルモン変化が中心ですが、頭皮環境が悪化すると、さらに抜け毛が進行しやすくなります。

ケラチンが果たす役割

ケラチンそのものがAGAを抑制するわけではありません。しかし、髪を構成する素材としてのケラチンが不足していると、髪が細く弱くなる要因になります。

AGAで髪が細っているときにケラチン合成のための材料が不足すると、さらに抜け毛リスクが高まる可能性があります。

薄毛対策として考えられるケア

• たんぱく質や亜鉛など、髪の合成に必要な栄養をとる
• 頭皮マッサージや適度な運動で血行を促進する
• AGA治療薬（フィナステリドやデュタステリドなど）の活用
• 医療機関でのカウンセリングや検査

ケラチンと育毛剤の併用

市販の育毛剤には頭皮の血流を促したり、毛根を刺激したりする成分が含まれます。一方で、ケラチンを外部から補うトリートメントなどは髪の表面をカバーすることが中心になります。

根本的なAGA対策としては、医薬品を含む総合的な取り組みが望ましいです。

薄毛治療の取り組み

取り組み	特徴
内服薬	ホルモン抑制系の薬
外用薬	毛根を刺激する成分を頭皮に塗布
生活習慣	睡眠、栄養、ストレスコントロール
専門クリニックでの治療	個々に合わせた方法の提案

ケラチンを上手に活かす生活習慣

ケラチンとは、体内の栄養状態や生活リズムに影響を受けるたんぱく質です。ここでは、髪や皮膚を健康に保つために意識したい生活習慣を紹介します。

良質な睡眠とストレス管理

髪や皮膚の新陳代謝は睡眠中に活発化します。十分な睡眠を確保することで、細胞が健全に入れ替わり、ケラチンを合成しやすくなります。

また、慢性的なストレスはホルモンバランスを乱し、抜け毛や肌荒れを引き起こすことがあるため、適度な運動やリラックス法を取り入れましょう。

ケラチン合成を後押しする生活リズム

• 夜更かしを避け、規則的な睡眠時間を設ける
• 寝る前にブルーライトを控える（スマホ・PCなど）
• 深呼吸や軽いストレッチでストレスを軽減する

適度な運動で血流を改善

髪や皮膚に必要な栄養素は血液によって運ばれます。ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を取り入れ、全身の血行を促進しましょう。

頭皮の血行が改善すると毛根への栄養供給が円滑になり、ケラチン生成の基盤が整いやすくなります。

運動と効果

運動名	実践頻度	期待できる効果
ウォーキング	週3〜4回	全身の血流アップと基礎体力向上
ヨガ	週1〜2回	ストレス緩和と柔軟性の向上
軽い筋トレ	週2〜3回	筋力増加による代謝アップ

運動習慣が定着すると、睡眠の質向上など複合的なメリットが得られます。

紫外線と外的ダメージに注意

皮膚や髪は紫外線を受け続けるとダメージを受けやすくなります。夏場だけでなく、年間を通じて適切なUV対策を行いましょう。

髪への紫外線ダメージはキューティクルが壊れやすくなり、ケラチンが流出しやすい状態に陥る原因となります。

髪や皮膚を守る工夫

• 日傘や帽子を活用
• 髪専用のUVスプレーを使う
• 長時間の日差しを避けるように心がける

頭皮ケアの意識

ケラチンが十分に働くには、頭皮環境を清潔に保ち、皮脂や汚れの蓄積を防ぐことが大切です。

過度な洗浄は皮脂を取りすぎて乾燥を招く場合があるため、適度な洗髪頻度と保湿を意識してください。

健やかな頭皮づくりに役立つ対策

• 指の腹でやさしく洗い、爪を立てない
• 洗髪後は髪と頭皮をしっかり乾かす
• 頭皮用のトニックやローションで保湿をサポート

クリニックでのAGA治療の取り組み

ケラチンは髪の材料として重要ですが、AGAの根本にはホルモンの影響や生活習慣など多面的な要因があります。

クリニックでは、一人ひとりの状態を診断して適切な治療方針を提案することで、髪や頭皮の健康を目指します。

クリニックで行う治療法

AGAや薄毛治療は医療機関での診断と投薬、さらに生活習慣の改善が鍵になります。

ケラチン不足による髪のダメージだけでなく、頭皮環境やホルモンバランスにも着目し、総合的にケアしていくことが大切です。

AGAや薄毛の治療法

治療の種類	内容
内服薬治療	フィナステリドやデュタステリドなどAGAに有用と考えられる薬を処方
外用薬治療	毛根への直接的なアプローチとしてミノキシジルなどを使用
メソセラピー	頭皮へ成分を注入して血行を促進し、毛根を活性化させる方法
ライト治療	専用の機器を用い、頭皮へ照射を行うことで育毛をサポート

クリニックでは、状態に応じて複数の方法を組み合わせながら、個々に合うプランを提案してもらえます。

クリニックでの相談の流れ

まず問診や頭皮・毛髪の検査を行い、必要に応じて血液検査などを実施します。その結果をもとに医師が治療方針を提案し、患者様と相談しながら治療を進めます。

治療を受けるまでの主な流れ

• 問診票の記入（生活習慣や家族歴の確認）
• 頭皮・毛髪チェック（マイクロスコープなどを使用）
• 必要に応じた血液検査
• 治療方針の提案と同意のもと治療開始

「治療したいが、不安がある」「まずは話だけ聞きたい」といった段階でも受診可能なクリニックも多いです。

AGA治療には継続性が重要です。定期的に通院しながら、日々の生活習慣を見直し、髪や頭皮に良い環境を整えることが成果につながりやすくなります。

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