アルコールがテストステロンに与える影響と抜け毛の関係

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「お酒を飲むとテストステロンが下がる?」「飲酒は薄毛や抜け毛の原因になる?」このような疑問をお持ちの方は少なくありません。

アルコールは私たちの身体、特にホルモンバランスや髪の健康に様々な影響を与える可能性があります。

この記事ではアルコールが男性ホルモンであるテストステロンにどのような影響を及ぼすのか、そしてそれが抜け毛や薄毛(AGA)とどう関連するのかについて医学的知見を交えながら詳しく解説します。

適切な飲酒習慣を理解し、髪と体の健康を守るための一助となれば幸いです。

目次

テストステロンとは?男性の活力と健康を支えるホルモン

テストステロンは主に男性の精巣で作られる代表的な男性ホルモン(アンドロゲン)です。

筋肉や骨の形成、性機能の維持、さらには精神的な活力にも関与し、男性の心身の健康を多方面から支える重要な役割を担っています。

このテストステロンの量がアルコールの影響を受けることがあります。

テストステロンの基本的な働き

テストステロンは「男性らしさ」を形成する上で中心的なホルモンです。

思春期には第二次性徴(声変わり、筋肉量の増加、体毛の発生など)を促し、成人後も筋肉量や骨密度の維持、性欲や性機能の維持、造血作用、さらには決断力や意欲といった精神活動にも深く関わっています。

健康な男性の身体と精神を維持するためにテストステロンは常に重要な働きをしています。

テストステロン値に影響を与える様々な要因

テストステロンの分泌量は一定ではなく、年齢、生活習慣(食事、睡眠、運動)、ストレスの度合い、肥満の有無など多くの要因によって変動します。

一般的に20代をピークに加齢とともに徐々に減少し、特に40代以降はその低下が顕著になる方もいます。

不規則な生活や過度なストレス、そして過度なアルコール摂取もテストステロン値を低下させる要因となり得ます。

テストステロン値の変動に関わる主な要素

要素テストステロン値への影響具体例
加齢一般的に低下傾向特に40代以降で顕著な場合あり
生活習慣大きく影響睡眠不足、栄養偏重、運動不足で低下リスク
ストレス低下させる可能性慢性的なストレスは特に注意

テストステロンと男性の全体的な健康

テストステロンは単に性機能に関わるだけでなく、心血管系の健康、認知機能、気分安定など、男性のQOL(生活の質)全体に影響します。

テストステロン値が適切な範囲に保たれていることは活力ある毎日を送る上で非常に大切です。

そのため、テストステロン値を低下させる可能性のあるアルコールの影響については、正しく理解しておく必要があります。

アルコールがテストステロン値に及ぼす直接的な影響

アルコールの摂取は男性ホルモンであるテストステロンの生成や分泌に対して、直接的な影響を与えることが多くの研究で示唆されています。

特に慢性的な過剰摂取はテストステロン値を低下させるリスクを高めます。

アルコールによるテストステロン産生の抑制

アルコール、特にその代謝物であるアセトアルデヒドは精巣にあるライディッヒ細胞(テストステロンを産生する細胞)に対して毒性を示すことがあります。

この毒性作用によりライディッヒ細胞の機能が低下し、テストステロンの産生能力が直接的に抑制されると考えられています。

長期間にわたる多量の飲酒は、この抑制効果を慢性化させる可能性があります。

肝臓への負担とホルモン代謝の変化

アルコールは主に肝臓で代謝されます。慢性的なアルコール摂取は肝臓に大きな負担をかけ、肝機能障害を引き起こすことがあります。

肝臓はホルモンの代謝にも関わっており、テストステロンをエストロゲン(女性ホルモン)に変換するアロマターゼという酵素の活性を高めることがあります。

このことにより体内のテストステロン量が減少し、相対的にエストロゲン量が増加する可能性が指摘されています。

アルコール摂取とホルモンバランスへの影響経路

影響経路アルコールの作用結果
精巣への直接作用ライディッヒ細胞の機能低下テストステロン産生抑制
肝機能への影響アロマターゼ活性亢進の可能性テストステロンのエストロゲン化促進

飲酒量とテストステロン低下の関連性

一般的に飲酒量が多いほど、また飲酒頻度が高いほど、テストステロン値への負の影響は大きくなる傾向があります。

少量のアルコール摂取であれば、一時的にテストステロン値がわずかに上昇するという報告も一部にはありますが、これは短期的な反応であり、習慣的な飲酒となると話は別です。

特に一度に大量のアルコールを摂取する「暴飲」は、テストステロン値を急激に低下させるリスクが高いと考えられます。

慢性的飲酒と急性的飲酒の影響の違い

急性的(一時的)な多量飲酒でもテストステロン値は一時的に低下することがあります。しかし、体がアルコールを代謝し終えれば徐々に回復する傾向があります。

一方、慢性的なアルコール依存状態にあるような場合ではテストステロン産生機能自体が持続的に障害され、低テストステロン状態が常態化するリスクが高まります。

この状態は性機能の低下だけでなく、筋肉量の減少や気力の低下など様々な健康問題につながる可能性があります。

アルコールによる間接的なテストステロン低下要因

アルコールはテストステロン産生器官へ直接作用するだけでなく、間接的な要因を通じてテストステロン値を低下させる可能性も指摘されています。

これらは飲酒に伴う生活習慣の乱れと深く関連しています。

睡眠の質の低下とホルモンバランスの乱れ

アルコールを摂取すると寝つきが良くなるように感じるかもしれませんが、実際には睡眠の質を著しく低下させます。特に深い睡眠(ノンレム睡眠)が阻害され、レム睡眠の割合が増える傾向があります。

テストステロンは主に睡眠中に分泌されるため、アルコールによる睡眠の質の低下はテストステロンの正常な分泌リズムを乱し、結果として分泌量の減少につながる可能性があります。

栄養吸収の阻害とテストステロン生成への影響

アルコールは胃腸の粘膜にダメージを与え、栄養素の消化吸収を妨げることがあります。

テストステロンの生成には亜鉛やビタミンD、良質なタンパク質などの栄養素が必要です。

アルコールによってこれらの栄養素の吸収が悪くなるとテストステロンを十分に生成するための材料が不足し、間接的にテストステロン値の低下を招く可能性があります。

アルコールによる栄養吸収への影響例

栄養素テストステロン生成における役割アルコールによる吸収阻害リスク
亜鉛テストステロン合成酵素の活性化高い
ビタミンB群エネルギー代謝、ホルモン合成補助高い(特にB1)
タンパク質ホルモンの材料消化不良による吸収低下の可能性

ストレスホルモン(コルチゾール)の増加

過度なアルコール摂取は身体にとって一種のストレスとなります。このストレス反応として、副腎からコルチゾールというホルモンが過剰に分泌されることがあります。

コルチゾールはテストステロンの生成を抑制する方向に働くことが知られています。

したがってアルコール摂取がコルチゾール値を上昇させ、間接的にテストステロン値を低下させるという経路も考えられます。

体重増加・肥満とテストステロン

アルコール飲料は糖質を多く含むものが多く、また食欲を増進させる作用もあるため、過剰な飲酒は体重増加や肥満のリスクを高めます。

脂肪組織、特に内臓脂肪はアロマターゼという酵素を多く含んでおり、テストステロンを女性ホルモンであるエストロゲンに変換する働きを活発化させます。

このため、肥満はテストステロン値を低下させる大きな要因の一つとなります。アルコールによる体重増加が、この負の連鎖を助長する可能性があります。

アルコールと抜け毛・薄毛(AGA)の関連性

「お酒を飲むとハゲる」という噂を耳にしたことがある方もいるでしょう。

アルコールが直接的にAGA(男性型脱毛症)を引き起こすわけではありませんが、間接的に抜け毛や薄毛のリスクを高める可能性は否定できません。

テストステロン低下とAGAの関係

AGAの主な原因はテストステロンが5αリダクターゼという酵素によってDHT(ジヒドロテストステロン)に変換され、このDHTが毛乳頭細胞のアンドロゲンレセプターに結合することです。

アルコールによってテストステロン値が低下した場合、DHTの元となるテストステロンが減るため、一見AGAには良いように思えるかもしれません。

しかし、体内のホルモンバランスは非常に複雑であり、単純にテストステロンが減ればAGAが改善するというわけではありません。

むしろ、ホルモンバランス全体の乱れが毛髪の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

アルコールによる頭皮環境の悪化

アルコールの過剰摂取は頭皮の血行不良を招く可能性があります。アルコール代謝のために体内の水分が使われ、脱水傾向になると血液の粘度が高まり、毛細血管の血流が悪化することが考えられます。

毛髪の成長に必要な栄養や酸素は血液によって運ばれるため、頭皮の血行不良は毛母細胞の活動を低下させ、抜け毛や薄毛を助長する可能性があります。

また、アルコールは炎症を引き起こしやすく、頭皮の炎症も育毛環境にはマイナスです。

アルコールが頭皮環境に与える悪影響

悪影響メカニズム髪への結果
血行不良脱水、血管収縮(一時的な拡張後)栄養・酸素供給不足、毛母細胞活性低下
炎症惹起免疫反応、皮脂バランスの乱れ頭皮のかゆみ、フケ、毛穴の詰まり
皮脂の過剰分泌ホルモンバランスの乱れ、糖質過多毛穴詰まり、脂漏性皮膚炎リスク

栄養不足が引き起こす髪の毛の質の低下

前述の通り、アルコールは栄養素の吸収を阻害する可能性があります。髪の毛は主にケラチンというタンパク質からできており、その合成には亜鉛、ビオチン、鉄分などのビタミンやミネラルが不可欠です。

アルコールによってこれらの栄養素が不足すると健康な髪の毛が作られにくくなり、髪が細くなったり、パサついたり、切れやすくなったりするなど髪質が悪化し、結果として抜け毛につながることがあります。

  • タンパク質:髪の主成分
  • 亜鉛:ケラチン合成に必要
  • ビオチン:皮膚や髪の健康維持

飲酒習慣とAGA進行リスクの考察

AGAは遺伝的要因が大きいとされていますが、生活習慣もその進行速度に影響を与えると考えられています。

慢性的な過度な飲酒はホルモンバランスの乱れ、頭皮環境の悪化、栄養不足などを通じて、AGAの進行を早める一因となる可能性があります。

特にAGAの治療を行っている方は治療効果を最大限に引き出すためにも、飲酒習慣を見直すことが重要です。

【独自性】「とりあえずビール」が招く髪とホルモンの三重苦 あなたの飲酒、大丈夫?

飲み会の席で「とりあえずビール」と言うのはよくある光景ですが、その一杯が積み重なることで知らず知らずのうちに髪と男性ホルモンに良くない影響を与えているかもしれません。

ここでは、多くの人が陥りがちな飲酒習慣と、それがもたらす可能性のある「三重苦」について、少し深掘りしてみましょう。

第一の苦しみ 血糖値ジェットコースターとホルモンかく乱

ビールや日本酒、甘いカクテルなどは糖質を多く含みます。空腹時にこれらを飲むと血糖値が急上昇し、その後インスリンが大量に分泌されて急降下する「血糖値スパイク」を引き起こしやすくなります。

この血糖値の乱高下は体にとって大きなストレスとなり、コルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を促します。

コルチゾールはテストステロンの働きを抑制する方向に作用するため、結果として男性ホルモンのバランスを崩す一因となります。

また、血糖値の不安定さは、頭皮の糖化を招き、毛髪の成長環境を悪化させる可能性も指摘されています。

第二の苦しみ 深夜のラーメンと睡眠の質のダブルパンチ

飲酒後は塩辛いものや脂っこいものが欲しくなることがあります。深夜にラーメンやお茶漬けなどを食べてしまうと消化のために胃腸が働き続け、睡眠の質が著しく低下します。

テストステロンは主に睡眠中に分泌され、髪の成長に必要な成長ホルモンも同様です。

アルコール自体の影響で睡眠の質が低下しているところにさらに消化不良が加わると、これらの重要なホルモンの分泌が妨げられ、テストステロン低下と髪の成長不良というダブルパンチに見舞われることになります。

飲酒後の行動と髪・ホルモンへの影響

飲酒後の行動例身体への影響髪・ホルモンへの結果
高糖質の酒・つまみ血糖値の急変動、糖化リスクホルモンバランスかく乱、頭皮環境悪化
深夜の食事(ラーメンなど)消化不良、睡眠の質低下テストステロン・成長ホルモン分泌抑制
水分補給不足脱水、血行不良頭皮への栄養供給低下

第三の苦しみ 「ストレス解消の酒」が作る負のスパイラル

仕事のストレスを解消するためにお酒を飲むという方も多いでしょう。

適量であればリラックス効果も期待できますが、量が増えたり頻度が高くなったりすると、アルコール自体が新たなストレス源となり得ます。

アルコール依存のリスクだけでなく、睡眠不足や二日酔いによるパフォーマンス低下がさらなるストレスを生み、それをまたお酒で紛らわそうとする…

このような負のスパイラルに陥ると慢性的なコルチゾール過多とテストステロン低下を招き、髪の健康も損なわれていきます。

「ストレス解消」のはずが、実は心身と髪を追い詰めている可能性に気づくことが大切です。

あなたの飲酒習慣、見直すポイントは?

「とりあえずの一杯」や「寝る前の一杯」が習慣化していないか、飲酒量が増えていないか、飲んだ後に不健康な食生活を送っていないか、一度ご自身の飲酒習慣を客観的に振り返ってみましょう。

もし心当たりがあれば、それは髪とホルモンの健康を守るための見直しのサインかもしれません。

当クリニックではAGA治療だけでなく、そうした生活習慣に関するアドバイスも行っています。

テストステロン値を守り、抜け毛を防ぐための飲酒対策

アルコールとの付き合い方を見直すことはテストステロン値を適切に保ち、抜け毛や薄毛のリスクを軽減するために重要です。

完全に禁酒することが難しい場合でも、いくつかの点に注意することで悪影響を最小限に抑えることができます。

適切な飲酒量と頻度の目安を知る

厚生労働省が示す「節度ある適度な飲酒」は1日平均純アルコールで約20g程度です。

これはビール中瓶1本(500ml)、日本酒1合(180ml)、ワイングラス2杯弱(200ml)、焼酎(25度)グラス1杯弱(100ml)に相当します。

毎日飲むのではなく、週に2日以上の休肝日を設けることも推奨されています。自分の適量を知り、それを超えないように心がけることが大切です。

純アルコール20gに相当する酒量の目安

酒類目安量純アルコール量(約)
ビール(5%)中瓶1本 (500ml)20g
日本酒(15%)1合 (180ml)22g
ワイン(12%)グラス2杯弱 (200ml)19g

飲酒時の注意点 おつまみと水分補給

飲酒する際にはおつまみの選び方も重要です。

揚げ物やスナック菓子などの脂質の多いものや、糖質の高いものは避け、タンパク質(枝豆、豆腐、鶏肉など)やビタミン・ミネラルが豊富な野菜などを選ぶようにしましょう。

また、アルコールには利尿作用があるため、脱水を防ぐためにお酒と同量以上の水を飲むように心がけることも大切です。

これにより血中アルコール濃度の上昇を緩やかにし、二日酔いのリスクも軽減できます。

休肝日の設定と肝機能の回復

週に数日の休肝日を設けることは肝臓を休ませ、アルコールによるダメージから回復させるために非常に重要です。

肝機能が正常に保たれることはホルモンバランスの維持にもつながります。休肝日を設けることでアルコールへの依存を防ぐ効果も期待できます。

  • 肝臓の休息
  • ホルモンバランスの正常化
  • アルコール依存予防

禁酒・節酒によるテストステロン値と髪への期待

禁酒や節酒を実践することで、テストステロン値の改善が期待できます。

また、睡眠の質の向上、栄養状態の改善、頭皮環境の正常化などを通じて、髪の健康にも良い影響が現れる可能性があります。

すぐに効果を実感できなくても、長期的に見れば髪と体の健康にとって大きなプラスとなるでしょう。

もし禁酒が難しい場合は専門機関に相談することも検討してください。

AGA治療とアルコール摂取 医師からのアドバイス

AGA(男性型脱毛症)の治療を受けている方にとって、アルコールとの付き合い方は特に注意が必要です。

治療効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを避けるためにも、医師の指導のもとで適切な飲酒習慣を心がけることが大切です。

AGA治療中の飲酒は治療効果を妨げるか

AGA治療薬の効果は継続的な服用と健康的な生活習慣によって支えられます。

過度な飲酒は前述のようにホルモンバランスを乱したり、頭皮環境を悪化させたり、薬の代謝に影響を与えたりする可能性があるため、治療効果を十分に得られない、あるいは効果を弱めてしまう可能性があります。

特に治療初期や効果を実感し始める大切な時期には飲酒を控えるか、ごく少量に留めることが望ましいでしょう。

治療薬とアルコールの相互作用について

AGA治療薬(フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルなど)とアルコールの間には重大な相互作用は一般的には報告されていません。

しかし、どちらも肝臓で代謝されるため、過度なアルコール摂取は肝臓への負担を増やし、薬の代謝や効果に間接的な影響を与える可能性は否定できません。

また、ミノキシジル外用薬を使用している場合、アルコールによって皮膚の血管が拡張し、かゆみや赤みなどの副作用が出やすくなることも考えられます。

AGA治療薬とアルコール摂取時の注意点

薬剤の種類(例)アルコールとの主な懸念点推奨される対応
フィナステリド・デュタステリド(内服)肝臓への負担増、治療効果減退の可能性過度な飲酒を避ける、医師に相談
ミノキシジル(外用)皮膚刺激(赤み、かゆみ)増強の可能性飲酒後の使用は慎重に、異常時は医師に相談
ミノキシジル(内服)血圧低下、肝臓への負担増原則禁酒、必ず医師の指示に従う

医師への相談と適切な飲酒指導の重要性

AGA治療を開始する際にはご自身の飲酒習慣について正直に医師に伝えることが大切です。医師は患者さん一人ひとりの状態や生活習慣を考慮して、治療計画を立てます。

飲酒に関する不安や疑問があれば遠慮なく相談し、適切なアドバイスを受けましょう。自己判断で飲酒量を調整するのではなく、医師の指導のもとで治療と両立できる飲酒習慣を身につけることが重要です。

このことにより、治療の安全性を高め、効果を最大限に引き出すことにつながります。

生活習慣全体の見直しと治療効果の最大化

AGA治療の効果を高めるためには飲酒習慣だけでなく、食事、睡眠、運動、ストレス管理といった生活習慣全体を見直すことが大切です。

アルコールを控えることはこれらの生活習慣改善の第一歩となることもあります。健康的な生活を送ることで体の内側から育毛環境を整え、治療薬の効果をより一層高めることが期待できます。

クリニックでは薬物治療と合わせて、このような生活指導も積極的に行っています。

よくある質問

ビール酵母は髪に良いと聞きましたが、ビールを飲んでも良いですか?

ビール酵母にはビタミンB群やタンパク質、ミネラルなど髪の成長に役立つ栄養素が含まれていることは事実です。

しかし、ビールそのものにはアルコールが含まれており、アルコールの過剰摂取によるデメリット(テストステロン低下、肝臓への負担、睡眠の質の低下など)が、ビール酵母のメリットを上回ってしまう可能性があります。

髪のためにビール酵母を摂取したい場合はアルコールを含まないサプリメントなどを利用する方が賢明です。

飲み会が多い職場で、どうしてもお酒を断れません。どうすれば良いですか?

まずはノンアルコール飲料を選択肢に入れる、一杯目は付き合いで飲んでも二杯目以降はソフトドリンクにする、薄めのものを選ぶ、などの工夫をしましょう。

また、空腹での飲酒を避け、タンパク質や野菜中心のおつまみを先に食べる、お酒と同量の水を飲むなどを心がけてください。

そして、最も大切なのは無理強いされない雰囲気づくりや、正直に体調を理由に断る勇気を持つことです。

医師に相談し、ドクターストップがかかっているなどの理由を伝えるのも一つの方法です。

アルコールをやめたら、テストステロン値はすぐに回復しますか?また、髪はすぐに生えてきますか?

アルコールをやめることでテストステロン値は徐々に改善する可能性がありますが、回復の速さには個人差があります。

また、髪の毛には毛周期があるため飲酒をやめてすぐに髪が生えたり、抜け毛が劇的に減ったりするわけではありません。

頭皮環境やホルモンバランスが正常化し、新しい健康な髪が育つまでには数ヶ月単位の時間が必要です。焦らず健康的な生活習慣を継続することが大切です。

赤ワインはポリフェノールが豊富で体に良いと聞きますが、髪にも良いのでしょうか?

赤ワインに含まれるポリフェノール(特にレスベラトロールなど)には抗酸化作用があり、適量であれば心血管系の健康に良い影響があるという報告もあります。

しかし、髪への直接的な好影響が科学的に明確に証明されているわけではありません。

また、赤ワインもアルコール飲料であることに変わりはなく、飲み過ぎればアルコールによるデメリットがポリフェノールのメリットを打ち消してしまいます。

あくまで「適量」を守ることが前提です。

以上

参考文献

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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