内分泌異常に伴う脱毛症の症状とセルフチェックの仕方

内分泌異常に伴う脱毛症の症状とセルフチェックの仕方

最近、抜け毛が増えた、髪質が変わったと感じていませんか?もしかしたら、それは単なる加齢や遺伝による薄毛ではなく、体内のホルモンバランスの乱れ、つまり内分泌異常が関係しているかもしれません。

内分泌異常に伴う脱毛症は、通常の薄毛とは異なる特徴的な症状を示します。

この記事では、男性に見られる内分泌性脱毛症の様々な症状、ご自身でできる簡単なセルフチェック方法、そしてどのような場合に医療機関を受診すべきかの判断基準について、詳しく解説します。

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

目次

内分泌性脱毛症の典型的な抜け毛パターン – 通常の薄毛との違い

内分泌系の異常によって引き起こされる脱毛症は、一般的な男性型脱毛症(AGA)とは異なる特徴的な抜け毛のパターンを示すことがあります。

これらの違いを理解することは、ご自身の状態を把握する上で重要です。ホルモンバランスの乱れは、毛髪の成長サイクルに直接影響を与え、結果として様々な脱毛症状が現れます。

通常のAGA(男性型脱毛症)との比較

内分泌性脱毛症と通常の薄毛(AGA)の違い

AGAは主に男性ホルモンの影響で起こり、進行パターンにある程度の傾向が見られます。しかし、内分泌性の脱毛はこれとは異なる様相を呈することが多いです。

生え際と頭頂部の後退パターン

AGAでは、額の生え際が後退したり(M字型)、頭頂部が薄くなったり(O字型)するパターンが典型的です。

これに対し、内分泌異常による脱毛では、必ずしもこれらの部位に限定されず、頭部全体に症状が現れることがあります。

進行速度の違い

AGAの進行速度には個人差がありますが、比較的ゆっくりと進行することが一般的です。

一方、内分泌系の急激な変化(例えば甲状腺機能の変動など)が原因の場合、短期間で抜け毛が著しく増加することもあります。

AGAと内分泌性脱毛症の主な違い

特徴AGA(男性型脱毛症)内分泌性脱毛症
主な原因男性ホルモン、遺伝ホルモンバランスの乱れ(甲状腺、副腎など)
脱毛パターン生え際後退、頭頂部薄毛びまん性脱毛、特定部位に限らない
進行速度比較的緩やか急激な場合もある

内分泌異常特有の脱毛パターン

ホルモンバランスの異常は、毛髪全体に影響を及ぼすため、特有の脱毛パターンが見られます。

びまん性脱毛とは何か

びまん性脱毛とは、頭部全体で均等に毛髪が薄くなる状態を指します。

特定の箇所だけが禿げるのではなく、全体のボリュームが失われ、分け目が広がるように感じたり、地肌が透けて見えやすくなったりします。

このびまん性脱毛は、内分泌異常による脱毛症の代表的な症状の一つです。特に甲状腺ホルモンの異常などでよく見られます。

特定部位に限らない抜け毛

AGAのように生え際や頭頂部に集中するのではなく、側頭部や後頭部も含めて全体的に抜け毛が増えることがあります。

また、頭髪だけでなく、眉毛や体毛など他の部位の毛にも変化が現れることも、内分泌異常を疑うサインの一つです。

甲状腺機能異常による脱毛症状の特徴

甲状腺機能低下症で見られる脱毛と眉毛の薄毛

甲状腺は、のどぼとけの下にある蝶のような形をした小さな臓器ですが、全身の代謝をコントロールする甲状腺ホルモンを分泌しており、毛髪の健康にも深く関わっています。

この甲状腺ホルモンのバランスが崩れると、様々な脱毛症状が現れることがあります。

甲状腺ホルモンと毛髪の関係

甲状腺ホルモンは、毛母細胞の活動や毛髪の成長期・休止期のサイクルを正常に保つために必要です。

甲状腺ホルモンの役割

毛髪の成長を促進し、毛髪の太さや強さを維持する働きがあります。また、頭皮の血行を促進し、毛髪に必要な栄養を届けるサポートもしています。

ホルモンバランスの乱れが毛髪に与える影響

甲状腺ホルモンが過剰になっても不足しても、毛髪の成長サイクルが乱れ、抜け毛や髪質の変化(細毛化など)を引き起こします。

甲状腺機能低下症で見られる脱毛

甲状腺ホルモンの分泌が不足する甲状腺機能低下症では、全身の代謝が低下し、毛髪にも特徴的な症状が現れます。

全体的な抜け毛と細毛化

頭部全体でびまん性の抜け毛が見られ、髪の毛一本一本が細く弱々しくなる「細毛化」が進行します。髪全体のボリュームが減少し、ハリ・コシ低下も顕著になります。

眉毛の外側や体毛の脱毛

甲状腺機能低下症の比較的特徴的な症状として、眉毛の外側3分の1程度が薄くなることがあります。また、腋毛や陰毛などの体毛も薄くなることがあります。

頭皮の乾燥とかゆみ

皮膚の乾燥も甲状腺機能低下症の症状の一つであり、頭皮も例外ではありません。頭皮が乾燥し、フケやかゆみが出やすくなることがあります。

甲状腺機能低下症の脱毛関連症状

症状詳細対策の方向性
びまん性脱毛頭部全体の毛髪が均等に薄くなる基礎疾患の治療
細毛化・ハリコシ低下髪が細く、弱々しくなる栄養バランス、頭皮ケア
眉毛・体毛の脱毛特に眉の外側が薄くなる基礎疾患の治療
頭皮の乾燥・かゆみフケを伴うことも保湿ケア、刺激の少ないシャンプー

甲状腺機能亢進症で見られる脱毛

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)でも、脱毛が起こることがあります。

びまん性の抜け毛

機能低下症と同様に、頭部全体に広がるびまん性の抜け毛が見られることがあります。ただし、一般的には機能低下症ほど脱毛の程度は重くないことが多いです。

髪質の変化(細く柔らかくなる)

髪の毛が以前よりも細く、柔らかく、しなやかになる(あるいはコシがなくなる)といった髪質の変化を感じることがあります。

副腎ホルモン異常が引き起こす特有の脱毛サイン

副腎ホルモン異常によるストレスと脱毛の関連を示すイメージ

副腎は、腎臓の上に乗っている小さな臓器で、生命維持に重要な様々なホルモン(コルチゾールやアルドステロン、性ホルモンの一部など)を分泌しています。

これらの副腎ホルモンのバランスが崩れると、脱毛を含む多様な身体症状が現れることがあります。

副腎ホルモンの重要性

副腎ホルモンはストレス対応、免疫機能、炎症の調節、血圧コントロールなど、多岐にわたる生理機能に関与しています。

コルチゾールと毛髪サイクル

ストレスホルモンとして知られるコルチゾールは、過剰になると毛髪の成長期を短縮させ、休止期に移行する毛髪を増やすことで抜け毛を促進する可能性があります。

適度なコルチゾールは必要ですが、慢性的な過剰状態は毛髪にとってマイナスです。

DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)の影響

DHEAは副腎から分泌される男性ホルモンの一種で、体内でテストステロンやエストロゲンに変換されます。

このバランスが崩れると、男性ホルモン過剰に似た脱毛(頭頂部の薄毛など)を引き起こすことがあります。

副腎ホルモン異常による主な脱毛サイン

ホルモン異常代表的な疾患脱毛の特徴
コルチゾール過剰クッシング症候群体幹部の肥満、顔面紅潮、皮膚菲薄化に伴う脱毛
コルチゾール不足アジソン病色素沈着、全身倦怠感に伴うびまん性脱毛の可能性
副腎性アンドロゲン過剰先天性副腎過形成など男性型脱毛に似た症状、多毛

クッシング症候群と脱毛

コルチゾールが過剰に分泌されるクッシング症候群では、特徴的な身体変化とともに脱毛が見られることがあります。

特徴的な身体変化と抜け毛

満月様顔貌(顔が丸くなる)、中心性肥満(手足は細いのにお腹周りに脂肪がつく)、皮膚が薄くなる、あざができやすいなどの症状が現れます。

毛髪は細く弱々しくなり、抜けやすくなる傾向があります。

頭皮の赤みや菲薄化

皮膚が全体的に薄くなる影響で、頭皮も菲薄化し、赤みを帯びることがあります。健康な頭皮環境が損なわれることで、抜け毛が悪化する可能性があります。

アジソン病と脱毛

コルチゾールの分泌が不足するアジソン病でも、脱毛が報告されることがあります。

色素沈着と関連する毛髪の変化

皮膚や口腔粘膜に色素沈着(黒ずみ)が見られるのが特徴です。全身の倦怠感や筋力低下、食欲不振などとともに、びまん性の脱毛や毛髪の質の低下が起こることがあります。

全身倦怠感と抜け毛の増加

著しいだるさや疲れやすさが続く中で、体力低下とともに毛髪の成長に必要なエネルギーも不足し、抜け毛が増加する可能性があります。

男性ホルモン過剰による脱毛症状の見分け方

男性ホルモン(アンドロゲン)は、男性らしい身体つきや性機能の維持に重要ですが、そのバランスが崩れたり、毛髪がアンドロゲンに対して過敏に反応したりすると、脱毛を引き起こすことがあります。

男性ホルモンが過剰となり頭頂部の抜け毛と脂っぽい頭皮が進行しているイラスト

これはAGAの主な原因として知られていますが、内分泌系の異常によってアンドロゲンが過剰になる場合も同様の症状が現れます。

男性ホルモン(アンドロゲン)と毛髪

アンドロゲンの中でも特にDHT(ジヒドロテストステロン)が、毛乳頭細胞にあるアンドロゲンレセプターと結合することで、毛髪の成長期を短縮させ、毛包のミニチュア化(小さく弱々しくなること)を引き起こします。

テストステロンとDHT(ジヒドロテストステロン)

テストステロン自体が直接脱毛を引き起こすわけではなく、5αリダクターゼという酵素によってDHTに変換されることが問題となります。このDHTが脱毛の「悪玉」として作用します。

毛乳頭細胞への作用

DHTがアンドロゲンレセプターに結合すると、毛母細胞の増殖を抑制するシグナルが送られ、結果として髪が細く短くなり、最終的には抜け落ちてしまいます。

男性におけるアンドロゲン過剰のサイン

内分泌異常によるアンドロゲン過剰は、AGA様の脱毛以外にもいくつかのサインを伴うことがあります。

若年性脱毛症との関連

20代前半など、比較的若い年齢で急速に薄毛が進行する場合、アンドロゲン感受性が高いか、何らかの原因でアンドロゲンレベルが高い可能性があります。

頭皮の脂っぽさとフケ、かゆみ

アンドロゲンは皮脂腺の活動を活発にするため、頭皮が脂っぽくなりやすいです。

過剰な皮脂は毛穴を詰まらせたり、マラセチア菌の増殖を招いて脂漏性皮膚炎を引き起こし、フケやかゆみ、抜け毛を悪化させる原因となります。この頭皮の赤みや乾燥も注意が必要です。

体毛の増加との関連性

頭髪は薄くなる一方で、胸毛やすね毛などの体毛が濃くなるという現象が見られることがあります。これは、部位によってアンドロゲンに対する毛包の反応が異なるためです。

アンドロゲン過剰が疑われる頭皮・毛髪の状態

チェック項目具体的な状態考えられる影響
頭皮の脂っぽさ洗髪後数時間でベタつく毛穴詰まり、炎症
フケ・かゆみ脂っぽいフケ、持続的なかゆみ脂漏性皮膚炎、抜け毛悪化
髪質の変化細毛化、ハリ・コシ低下毛包のミニチュア化
抜け毛のパターン生え際の後退、頭頂部の薄毛AGA様の進行

他の薄毛との判別ポイント

円形脱毛症や薬剤性の脱毛など、他の原因による薄毛との違いを見極めることも大切です。

アンドロゲン過剰による脱毛は、特定のパターンでゆっくり進行することが多いですが、急激な変化や脱毛以外の全身症状がある場合は、他の原因も考慮に入れる必要があります。

進行パターンと髪質の変化

AGA様の進行(M字、O字)が見られ、抜け毛とともに残っている髪の毛の細毛化が進んでいる場合、アンドロゲンの影響が強く疑われます。分け目が広がる感じも伴うことがあります。

脱毛以外にも注目すべき内分泌異常の身体症状

脱毛以外に現れる内分泌異常の全身症状

内分泌異常は、脱毛だけでなく全身に様々なサインとして現れます。これらの症状に気づくことが、早期発見・早期対応につながります。

特に、抜け毛と同時に以下のような症状が見られる場合は、内分泌系の検査を検討する価値があります。

全身に現れるサインを見逃さない

体調の些細な変化が、実はホルモンバランスの乱れを示していることがあります。

体重の急激な変化

食事量や運動量に大きな変化がないにもかかわらず、短期間で体重が著しく増加したり減少したりする場合、甲状腺機能異常や副腎皮質ホルモンの異常などが考えられます。

持続的な倦怠感や疲労感

十分な睡眠をとっても疲れが取れない、常にだるさを感じるといった症状は、甲状腺機能低下症やアジソン病など、多くの内分泌疾患で見られます。

睡眠障害(不眠または過眠)

寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、あるいは逆に日中に強い眠気に襲われるといった睡眠の問題も、ホルモンバランスの乱れと関連していることがあります。

脱毛以外の注目すべき全身症状

  • 原因不明の体重増減
  • 慢性的な疲労感・倦怠感
  • 気分の落ち込み、イライラ
  • 集中力・記憶力の低下
  • 異常な喉の渇き、多飲多尿

皮膚や爪の変化

ホルモンは皮膚や爪の健康にも影響を与えます。

頭皮以外の皮膚の乾燥や湿疹

全身の皮膚が乾燥しやすくなったり、原因不明の湿疹が出やすくなったりすることがあります。特に甲状腺機能低下症では皮膚の乾燥が顕著です。頭皮の乾燥や赤み、かゆみもこれに含まれます。

爪がもろくなる、変形する

爪が割れやすくなったり、薄くなったり、スプーンのように反り返ったり(スプーンネイル)するなどの変化も、甲状腺機能異常や栄養吸収障害を示唆するサインです。

皮膚・爪の主な変化と関連する可能性のある内分泌異常

症状考えられる内分泌異常の例
皮膚の乾燥、蒼白甲状腺機能低下症
皮膚の菲薄化、あざができやすいクッシング症候群(コルチゾール過剰)
色素沈着(皮膚・粘膜)アジソン病(コルチゾール不足)
爪のもろさ、変形甲状腺機能異常

精神的な変化

ホルモンバランスは精神状態にも大きく影響します。

気分の浮き沈みが激しい

理由もなくイライラしたり、急に落ち込んだりするなど、感情のコントロールが難しくなることがあります。甲状腺機能亢進症では特に見られやすい症状です。

集中力や記憶力の低下

仕事や勉強に集中できない、物忘れが多くなったと感じる場合も、甲状腺機能低下症などの影響が考えられます。

進行度別に見る内分泌性脱毛症の症状変化

内分泌性脱毛症の初期から後期にかけて進行する様子

内分泌異常による脱毛症は、原因となるホルモンの種類や異常の程度、期間によって症状の現れ方や進行度が異なります。しかし、一般的に見られる症状の変化を段階別に把握しておくことで、早期発見の手がかりになります。

初期症状

脱毛症の初期は、自覚しにくい軽微な変化から始まることが多いです。

なんとなく抜け毛が増えたと感じる

シャンプー時やブラッシング時、枕元などに落ちる抜け毛の量が以前より少し増えたかな、と感じる程度です。1日の抜け毛が100本を超える日が続くようであれば注意が必要です。

髪のハリ・コシ低下

髪全体が以前より元気がなくなり、スタイリングがしにくくなったり、髪がペタッとしやすくなったりします。髪質の変化の始まりです。

分け目が少し広がる

鏡を見たときに、以前よりも分け目が少し目立つようになったり、地肌が透けて見える感じがしたりすることがあります。

中期症状

症状が進行すると、より明確な変化が現れてきます。

明らかな抜け毛の増加と細毛化

抜け毛の量が明らかに増え、排水溝にたまる髪の毛の量に驚くことも。また、生えてくる髪の毛が細く弱々しくなる「細毛化」が顕著になり、髪全体のボリュームダウンを実感します。

頭皮のかゆみや赤みが気になる

ホルモンバランスの乱れが頭皮環境を悪化させ、頭皮にかゆみや赤み、乾燥、あるいは逆に脂っぽさなどのトラブルが現れやすくなります。

髪全体のボリュームダウン

細毛化と抜け毛の増加により、髪全体の密度が低下し、見た目にも薄くなったと感じるようになります。

内分泌性脱毛症の進行度と主な症状

進行度抜け毛の状態髪質の変化頭皮の状態
初期やや増加、気づきにくいハリ・コシ低下の兆し大きな変化なし、または軽微な乾燥・かゆみ
中期明らかに増加細毛化、ボリュームダウンかゆみ、赤み、乾燥、脂っぽさなどが出やすい
後期著しく増加、広範囲著しい細毛化、パサつきトラブルが慢性化しやすい

後期症状

さらに進行すると、脱毛範囲が広がり、治療が難しくなることもあります。

地肌が透けて見える範囲の拡大

頭頂部だけでなく、側頭部や後頭部も含めて広範囲に地肌が透けて見えるようになります。びまん性脱毛が進行した状態です。

眉毛など頭髪以外の脱毛

原因となる内分泌疾患によっては(特に甲状腺機能低下症など)、眉毛の外側や腋毛、陰毛といった体毛の脱毛も顕著になることがあります。

髪質の著しい悪化

残っている髪の毛も極端に細く、弱々しくなり、乾燥してパサパサになるなど、髪質が著しく悪化します。

自宅でできる内分泌性脱毛症のセルフチェック項目

「最近抜け毛が多い気がする」「髪質が変わったかも」と感じたら、まずはご自身で状態をチェックしてみましょう。以下の項目は、内分泌異常による脱毛症の可能性を探る手がかりになります。

ただし、これらはあくまで目安であり、正確な診断は医療機関で行う必要があります。

抜け毛の状態をチェック

日々の抜け毛の状態を観察することは、異常を早期に発見するために重要です。

1日の抜け毛の本数を数える

朝起きた時の枕元、シャンプー時の排水溝、ブラッシング時のブラシについた毛などを集め、おおよその本数を数えてみましょう。

一般的に1日50~100本程度は正常な範囲ですが、これを大幅に超える日が続く場合は注意が必要です。

抜けた毛の毛根の形を確認する

自然に抜けた毛の毛根部分を見てみましょう。健康な毛根はマッチ棒の先端のように丸みを帯びていますが、毛根が細く尖っていたり、委縮していたりする場合は、毛髪サイクルに異常がある可能性があります。

頭皮の状態をチェック

健康な髪は健康な頭皮から育ちます。頭皮トラブルは脱毛のサインとなることがあります。

頭皮の色(赤み、黄ばみなど)

健康な頭皮は青白い色をしています。赤みがある場合は炎症、黄ばんでいる場合は血行不良や皮脂の酸化などが考えられます。鏡を使って頭頂部や分け目などを確認しましょう。

頭皮の乾燥、フケ、かゆみの有無

頭皮が乾燥してカサカサしていないか、フケ(細かい乾いたフケ、あるいは脂っぽい湿ったフケ)が出ていないか、かゆみがないかなどを確認します。

これらはホルモンバランスの乱れによる頭皮環境の悪化を示している可能性があります。

頭皮の硬さ、弾力

指で頭皮を軽くつまんでみたり、動かしてみたりして、硬さや弾力を確認します。健康な頭皮は適度な弾力がありますが、硬く突っ張っている場合は血行不良が考えられます。

頭皮チェックのポイント

  • 頭皮の色は青白いか?(赤み、黄ばみはないか)
  • フケやかゆみはないか?
  • 頭皮は乾燥していないか?あるいは脂っぽすぎないか?
  • 頭皮に湿疹やできものはないか?
  • 頭皮は硬くなっていないか?(適度な弾力があるか)

髪質の変化をチェック

以前と比べて髪質に変化がないかを確認します。

髪の太さ、ハリ・コシ

髪の毛一本一本が細くなっていないか、全体的にハリやコシが失われていないかを確認します。細毛化は脱毛症の初期サインの一つです。

髪のパサつき、枝毛の増加

髪が乾燥してパサついたり、枝毛や切れ毛が増えたりしていないかもチェックポイントです。甲状腺機能低下症などでは髪の乾燥が顕著になることがあります。

全身症状のチェック

脱毛以外に、体に以下のような変化がないか振り返ってみましょう。内分泌異常は全身に影響を及ぼすため、これらの症状が脱毛と同時に見られる場合は、関連性を疑う必要があります。

最近の体調変化を振り返る

前述した「脱毛以外にも注目すべき内分泌異常の身体症状」の項目(体重変化、倦怠感、睡眠障害、皮膚・爪の変化、精神的な変化など)に当てはまるものがないか確認します。

セルフチェック項目のまとめ

チェックカテゴリー主なチェックポイント注意すべきサイン
抜け毛1日の本数、毛根の形100本超/日、毛根の萎縮
頭皮色、乾燥、フケ、かゆみ、硬さ赤み、黄ばみ、持続的なフケ・かゆみ、硬化
髪質太さ、ハリ・コシ、パサつき細毛化、ハリ・コシ低下、著しい乾燥
全身症状体重変化、倦怠感、気分の変化など脱毛と同時に複数の全身症状がある

セルフチェック結果の見方と受診タイミングの判断基準

セルフチェックを行ったら、その結果を客観的に評価し、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。

内分泌性脱毛症のセルフチェック結果をもとに病院受診を検討するタイミングを示したイラスト

自己判断で放置してしまうと、症状が悪化したり、背景にある内分泌疾患の発見が遅れたりする可能性があります。

チェック項目と注意すべきサイン

セルフチェックでいくつかの項目に当てはまるからといって、必ずしも内分泌異常とは限りません。しかし、注意すべきサインを把握しておくことは重要です。

複数の項目に当てはまる場合

抜け毛の増加だけでなく、頭皮トラブル(かゆみ、赤み、乾燥など)、髪質の変化(細毛化、ハリ・コシ低下など)、そして全身症状(倦怠感、体重変化など)のうち、複数の項目に当てはまる場合は、内分泌系の異常が関与している可能性が高まります。

特に、脱毛と全身症状が同時に現れている場合は注意が必要です。

急激な症状の変化が見られる場合

数週間から数ヶ月といった短期間で、抜け毛が急激に増えたり、髪質が著しく悪化したり、体調に大きな変化が現れたりした場合は、何らかの疾患が急速に進行している可能性があります。

このような場合は、早めに専門医に相談することをお勧めします。

医療機関を受診する目安

いつ病院を受診すべきか悩んでいる男性をイメージしたイラスト

以下のような場合は、自己判断せずに医療機関(皮膚科、内分泌内科など)を受診することを検討しましょう。

セルフケアで改善しない脱毛

市販の育毛剤を使用したり、生活習慣を見直したりしても、抜け毛や薄毛の進行が止まらない、あるいは悪化する場合は、専門的な診断と治療が必要です。

脱毛以外の全身症状を伴う場合

前述したような、体重の急激な変化、持続する倦怠感、気分の落ち込み、皮膚の異常(頭皮以外も含む)、動悸、手の震えなどの全身症状が脱毛とともにある場合は、内分泌疾患の可能性を考慮し、医師の診察を受けることが重要です。

不安や疑問が大きい場合

セルフチェックの結果、原因が特定できず不安が大きい場合や、自分の症状について専門家の意見を聞きたい場合も、遠慮なく医療機関を受診しましょう。

受診を検討するタイミングの目安

状況判断基準
抜け毛の量1日に100本以上が数週間以上続く
症状の進行短期間(数ヶ月以内)で明らかに薄毛が進行した
頭皮の状態持続的なかゆみ、赤み、フケ、湿疹などがある
全身症状の有無脱毛以外に原因不明の体調不良がある
精神的な影響薄毛のことで強いストレスや不安を感じている

専門医への相談の重要性

男性が専門医に脱毛症状を相談している様子

内分泌異常による脱毛症は、原因となるホルモンの種類やバランスの乱れ方が複雑で、自己判断は困難です。

専門医は、問診、視診、血液検査などを行い、脱毛の原因を特定し、適切なアドバイスや治療法を提案します。

早期発見・早期対応のメリット

原因となる内分泌疾患を早期に発見し、適切な治療を開始することで、脱毛症状の改善だけでなく、全身の健康状態の改善にもつながります。

放置すると、脱毛が進行するだけでなく、基礎疾患が悪化する可能性もあるため、早めの相談が大切です。

よくある質問

内分泌異常による脱毛は治りますか?

原因となる内分泌疾患を特定し、その治療を適切に行うことで、脱毛症状が改善する可能性は十分にあります。

例えば、甲状腺機能の異常が原因であれば、ホルモンバランスを正常化することで抜け毛が減り、新しい髪が生えてくることが期待できます。

ただし、脱毛の程度や期間、毛包の状態によっては、完全に元通りにならない場合もあります。早期の対応が重要です。

何科を受診すればよいですか?

まずは皮膚科を受診することをお勧めします。皮膚科医は脱毛症全般の診断と治療を行っており、必要に応じて内分泌内科などの専門医を紹介してくれます。

脱毛以外に明らかな内分泌系の症状(例えば、著しい体重変化、動悸、異常な倦怠感など)がある場合は、最初から内分泌内科を受診することも選択肢の一つです。

セルフチェックだけで判断できますか?

セルフチェックはあくまでご自身の状態を把握し、受診のきっかけとするためのものです。

内分泌異常の有無や種類を正確に診断するためには、医師による診察と専門的な検査(血液検査など)が必要です。

セルフチェックで気になる点があれば、自己判断せずに専門医に相談しましょう。

食生活や生活習慣は関係ありますか?

直接的な原因が内分泌疾患であっても、バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレス管理といった健康的な生活習慣は、ホルモンバランスを整え、頭皮環境を健やかに保つ上で非常に重要です。

治療と並行して生活習慣を見直すことは、症状改善の助けとなります。

男性でも女性ホルモンの影響で脱毛しますか?

男性も少量ながら女性ホルモン(エストロゲン)を体内で産生しており、また、男性ホルモン(アンドロゲン)とのバランスが重要です。

極端なホルモンバランスの乱れ、例えば肝機能障害などでエストロゲンが相対的に過剰になったり、アンドロゲンの作用が低下したりすると、毛髪に影響が出ることが理論的には考えられますが、男性の脱毛で主に関与するのは男性ホルモンです。

ただし、内分泌系は複雑なため、詳細な診断は専門医に委ねるべきです。

さらに詳しく知りたい方へ

この記事では、内分泌異常に伴う脱毛症の『症状』と『セルフチェック』に焦点を当てて解説しました。

しかし、なぜ内分泌の異常が脱毛を引き起こすのか、その具体的な『原因』や、医療機関で行われる『検査方法』について、さらに詳しく知りたい方もいらっしゃるでしょう。

そのような方のために、以下の記事で内分泌異常に伴う脱毛症の原因と検査法について詳細に解説しています。ご自身の状態をより深く理解し、適切な次のステップを踏み出すために合わせてご覧ください。

内分泌異常に伴う脱毛症の原因と検査法

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