円形脱毛症の内服薬による治療|薬の種類と服用方法

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ある日突然髪が抜け落ちる円形脱毛症。その治療法の一つに内服薬(飲み薬)があります。

「どんな薬を使うの?」「副作用は大丈夫?」といった不安や疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では円形脱毛症の内服薬治療について薬の種類、期待される効果、正しい服用方法、そして気になる副作用やその対策について詳しく解説します。

適切な知識を身につけ、医師と共に前向きな治療に取り組むための一助となれば幸いです。

目次

円形脱毛症とは?まず知っておきたい基本

円形脱毛症は頭髪の一部または全部が円形や楕円形に抜け落ちる疾患です。年齢や性別を問わず誰にでも起こり得るもので、その原因や症状の現れ方は様々です。

主な原因 自己免疫反応の異常

円形脱毛症の最も有力な原因は自己免疫反応の異常と考えられています。

通常、免疫は体外からの異物(細菌やウイルスなど)を攻撃して体を守る働きをしますが、何らかの理由でこの免疫系が自分自身の毛包(毛根を包む組織)を異物と誤認し、攻撃してしまうことがあります。

この毛包への攻撃により、毛髪が成長できなくなり抜け落ちてしまうのです。

遺伝的要因やストレスとの関連

自己免疫反応の異常が起こる詳細な理由はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的な素因が関与していると考えられています。

家族に円形脱毛症の方がいる場合、発症リスクが高まることが報告されています。

また、精神的なストレスや肉体的疲労、感染症などが発症や悪化の誘因となることも指摘されていますが、ストレスが直接的な原因となるわけではありません。

症状の現れ方と脱毛斑の種類

円形脱毛症の症状は脱毛斑の数や大きさ、範囲によっていくつかのタイプに分類されます。

  • 単発型 1ヶ所だけ円形に脱毛する最も一般的なタイプ
  • 多発型 複数の脱毛斑が現れるタイプ。融合して大きな脱毛斑になることも
  • 全頭型 頭部全体の毛髪が抜け落ちるタイプ
  • 汎発型 頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、体毛など全身の毛が抜け落ちるタイプ

脱毛の範囲や進行度によって治療法も異なってきます。

AGA(男性型脱毛症)との違い

円形脱毛症とAGA(男性型脱毛症)はどちらも脱毛症ですが、原因や症状の現れ方が異なります。

AGAは主に男性ホルモンの影響で生え際や頭頂部から徐々に薄毛が進行するのに対し、円形脱毛症は自己免疫反応が原因で、突然境界明瞭な脱毛斑が現れるのが特徴です。

治療法も異なるため、正確な診断が重要です。

円形脱毛症とAGAの主な違い

項目円形脱毛症AGA(男性型脱毛症)
主な原因自己免疫反応の異常男性ホルモン、遺伝
脱毛の仕方円形・楕円形の脱毛斑が突然出現生え際・頭頂部から徐々に薄毛化
好発年齢全年齢層思春期以降の男性

なぜ内服薬治療が選択されるのか

円形脱毛症の治療には外用薬、局所注射、光線療法など様々な方法がありますが、症状の範囲や進行度によっては内服薬による治療が選択されます。その理由やメリットについて解説します。

脱毛範囲が広い場合や進行が速い場合

脱毛斑が多発している、脱毛範囲が頭部全体の半分以上に及ぶ、あるいは急速に脱毛が進行しているような重症例では、外用薬や局所注射だけでは十分な効果が得られにくいことがあります。

このような場合、体の内側から免疫反応を調整したり、炎症を抑えたりする目的で内服薬治療が検討されます。

全身への作用を期待する場合

内服薬は血液を介して全身に行き渡るため、頭皮だけでなく、眉毛や体毛など広範囲に症状が出ている場合(汎発型など)にも効果が期待できます。

また、毛包に対する免疫系の攻撃を全身的に抑制することで新たな脱毛斑の出現を防ぐ効果も考えられます。

他の治療法との組み合わせ

内服薬治療は単独で行われることもありますが、外用薬や局所注射、光線療法など、他の治療法と組み合わせて行われることもあります。

複数の治療法を組み合わせることで、より高い治療効果を目指したり、内服薬の量を減らしたりすることが可能になる場合があります。医師が患者さんの状態を見極め、最適な治療計画を立てます。

内服薬治療は特に中等症から重症の円形脱毛症において重要な選択肢となります。

内服薬治療のメリットと考慮すべき点

内服薬治療のメリットは全身に作用するため広範囲の脱毛に効果が期待できる点や、他の治療で効果が不十分な場合でも改善が見込める可能性がある点です。

一方で全身に作用する分、副作用のリスクも考慮に入れる必要があります。そのため医師による慎重な判断と、治療中の定期的な診察・検査が重要となります。

内服薬治療の主な利点と注意点

側面内容
利点広範囲の脱毛への効果、重症例への対応
注意点全身性の副作用の可能性、定期的な医師の管理が必要

円形脱毛症治療で使われる主な内服薬の種類

円形脱毛症の内服薬治療では主に免疫反応を調整する薬剤や炎症を抑える薬剤が用いられます。代表的な内服薬の種類とその特徴について説明します。

ステロイド内服薬

ステロイド(副腎皮質ホルモン)は強力な抗炎症作用と免疫抑制作用を持つ薬剤です。

円形脱毛症の原因である毛包への免疫攻撃を抑えることで脱毛の進行を止め、発毛を促す効果が期待されます。特に脱毛範囲が広い急性期や急速に進行する場合に用いられることが多いです。

免疫抑制薬

ステロイド以外の免疫抑制薬も円形脱毛症の治療に用いられることがあります。これらは過剰な免疫反応を抑えることで毛包への攻撃を抑制します。

ステロイドの長期使用が難しい場合や、ステロイドだけでは効果が不十分な場合に、医師の判断で選択されることがあります。

使用中は定期的な血液検査などで副作用をチェックすることが大切です。

抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬はアレルギー反応を抑える薬として知られていますが、円形脱毛症の治療に補助的に用いられることがあります。

円形脱毛症患者さんの中にはアトピー素因を持つ方が多いことや、一部の抗ヒスタミン薬に免疫調整作用が報告されているためです。

ただし、抗ヒスタミン薬単独での発毛効果は限定的であり、他の治療法と併用されることが一般的です。

JAK阻害薬(比較的新しい選択肢)

JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬は免疫細胞の活性化に関わるJAKという酵素の働きを阻害する比較的新しいタイプの薬剤です。

円形脱毛症の病態に関与するサイトカインの働きを抑えることで発毛効果が期待されています。

一部の難治性の円形脱毛症に対して有効性が示されており、今後の治療の選択肢として注目されていますが、専門医による慎重な投与判断と管理が必要です。

主な内服薬のカテゴリーと作用

薬剤カテゴリー主な作用代表的な使用ケース
ステロイド内服薬強力な抗炎症・免疫抑制急性期、広範囲、急速進行例
免疫抑制薬(ステロイド以外)免疫反応の抑制ステロイド減量・中止時、難治例
抗ヒスタミン薬アレルギー反応抑制、補助的免疫調整アトピー素因合併例など(補助的)
JAK阻害薬免疫細胞活性化の抑制一部の難治性円形脱毛症

ステロイド内服薬 詳細解説と注意点

ステロイド内服薬は円形脱毛症の治療において重要な役割を果たす薬ですが、その効果と副作用について正しく理解し、適切に使用することが大切です。

ステロイドの作用と円形脱毛症への効果

ステロイドは体内で作られる副腎皮質ホルモンを基に合成された薬剤で、炎症や免疫反応を強力に抑える働きがあります。

円形脱毛症ではこの免疫抑制作用によって毛包を攻撃しているリンパ球などの免疫細胞の働きを弱め、毛包へのダメージを軽減します。

このことにより脱毛の進行を食い止め、毛髪の再生を促す効果が期待できます。

服用期間と量の調整(漸減法など)

ステロイド内服薬の服用期間や量は症状の重症度や治療への反応を見ながら、医師が慎重に決定します。

一般的に初期にはある程度の量を服用し、効果が現れてきたら徐々に量を減らしていく「漸減法」が用いられます。

自己判断で急に服用を中止したり、量を変更したりすると、症状が悪化したり、離脱症状(リバウンド)が起こったりする可能性があるため、必ず医師の指示に従ってください。

短期間使用と長期間使用のリスク

ステロイド内服薬は短期間の使用であれば比較的安全性が高いとされていますが、長期間にわたって大量に使用すると様々な副作用のリスクが高まります。

そのため、医師は効果と副作用のバランスを常に考慮しながら、必要最小限の量と期間で使用するよう努めます。

  • 短期間使用の主な副作用(例) 不眠、食欲増進、消化不良など。
  • 長期間使用で注意すべき副作用(例) 感染症にかかりやすくなる、糖尿病、高血圧、骨粗しょう症、満月様顔貌(ムーンフェイス)、うつ症状など。

定期的な検査と医師による管理の重要性

ステロイド内服薬による治療中は副作用を早期に発見し、適切に対処するために、定期的な診察と検査(血液検査、尿検査、血圧測定、骨密度検査など)が重要です。

医師はこれらの結果と患者さんの状態を総合的に評価し、必要に応じて薬剤の量を調整したり、副作用対策を行ったりします。

安心して治療を続けるためには医師との密な連携が欠かせません。

注意:ステロイド内服薬は効果的な反面、副作用のリスクもあるため、医師の厳格な管理のもとで使用する必要があります。

【独自性】飲み薬への不安と期待~医師と歩む治療への道~

円形脱毛症の治療で「飲み薬を使いましょう」と提案されたとき、効果への期待とともに、副作用や長期間の服用に対する不安を感じる方も少なくないでしょう。

「本当に良くなるのだろうか」「体に負担はないのだろうか」。その気持ちは治療に向き合う上で自然な感情です。

ここではそんな患者さんの心に寄り添いながら、医師と共に前向きに治療を進めるためのヒントをお伝えします。

「薬を飲む」ことへの心理的なハードル

特に円形脱毛症のように見た目に影響が出る疾患では、「早く治したい」という気持ちが強い一方で、内服薬という「体の内側から作用するもの」に対して、漠然とした抵抗感や恐怖心を抱くことがあります。

「薬に頼りたくない」「副作用が怖い」といった思いから、治療への一歩を踏み出せない方もいらっしゃるかもしれません。

大切なのはその不安な気持ちを否定せず、まずは医師に正直に伝えてみることです。

副作用への過度な心配と正しい情報理解

インターネットなどで副作用の情報を目にすると、どうしてもネガティブな側面ばかりが気になってしまうことがあります。確かに、どんな薬にも副作用のリスクはゼロではありません。

しかし、医師は患者さん一人ひとりの状態を詳細に把握し、薬のメリットがデメリットを上回ると判断した場合に処方します。

また、副作用を最小限に抑えるための予防策や、万が一起こった場合の対処法も考慮して治療計画を立てています。

断片的な情報に惑わされず、医師からの説明をしっかりと聞き、疑問点は遠慮なく質問して正しい情報を得ることが不安を和らげる第一歩です。

不安を軽減するためのヒント

心がけたいこと具体的な行動例
医師との対話不安や疑問を正直に伝える、納得いくまで質問する
正確な情報収集医師の説明、信頼できる医療情報を参考にする
治療目標の共有医師と治療のゴールイメージを話し合う

医師との信頼関係が治療効果を高める

円形脱毛症の治療は時に長期にわたることもあります。その中で最も大切なのは医師との信頼関係です。

治療方針や薬の効果、副作用について納得できるまで話し合える関係性を築くことが、安心して治療を続けるための鍵となります。

定期的な診察の際には体調の変化や生活で気になったことなどを遠慮なく伝えましょう。医師はあなたの言葉に耳を傾け、最善のサポートをしてくれるはずです。

二人三脚で治療に取り組むという意識が治療効果にも良い影響を与えることがあります。医師はあなたの味方です。不安や疑問は抱え込まず、何でも相談しましょう。

前向きな気持ちで治療に臨むために

「いつ治るのだろうか」という焦りや不安は治療へのモチベーションを低下させてしまうことがあります。

しかし、円形脱毛症は多くの場合、適切な治療によって改善が期待できる疾患です。治療効果には個人差があり、時間がかかることもありますが、医師を信頼し、指示された通りに治療を継続することが大切です。

小さな変化でも良いので改善の兆しを見つけ、前向きな気持ちで治療に臨むことが、回復への近道となるでしょう。

ご自身のQOL(生活の質)を維持するために、治療と並行して趣味やリフレッシュできる時間を持つことも忘れないでください。

免疫抑制薬による治療とその位置づけ

ステロイド以外の免疫抑制薬も円形脱毛症の治療選択肢の一つです。どのような場合に用いられ、どのような注意点があるのかを解説します。

免疫抑制薬が選択されるケース

免疫抑制薬は主に以下のような場合に検討されます。

  • ステロイド内服薬で十分な効果が得られない、または効果が持続しない難治性の円形脱毛症
  • ステロイド内服薬の副作用が強く、継続が困難な場合
  • ステロイド内服薬の量を減らしたい、または中止したいが、再発のリスクが高いと考えられる場合
  • 広範囲な脱毛(全頭型、汎発型など)で、長期的な免疫抑制が必要と考えられる場合

医師が患者さんの状態やこれまでの治療経過を総合的に判断し、使用の可否を決定します。

代表的な免疫抑制薬の種類と特徴

円形脱毛症の治療に用いられる代表的な免疫抑制薬には、シクロスポリンやアザチオプリンなどがあります。

これらの薬剤はリンパ球などの免疫細胞の働きを抑えることで、毛包への攻撃を抑制する効果が期待できます。

効果の発現には数ヶ月かかることが一般的で、ステロイドとは異なる作用機序で効果を発揮します。

代表的な免疫抑制薬(円形脱毛症治療)

薬剤名(例)主な作用機序投与方法
シクロスポリンTリンパ球の活性化抑制内服
アザチオプリンプリン代謝拮抗による免疫細胞増殖抑制内服

注意:これらの薬剤は専門的な知識と管理が必要なため、必ず専門医の指示のもとで使用します。

副作用と定期的なモニタリングの必要性

免疫抑制薬は、その名の通り免疫機能を抑制するため、感染症にかかりやすくなるリスクがあります。

また、薬剤の種類によっては腎機能障害、肝機能障害、高血圧、消化器症状、骨髄抑制(血液細胞の減少)などの副作用が起こる可能性があります。

そのため、治療中は定期的な血液検査や尿検査、血圧測定などを行い、副作用の早期発見と重篤化の防止に努めることが極めて重要です。

異常が見られた場合は薬剤の減量や中止、他の薬剤への変更などを検討します。

ステロイド治療との比較と使い分け

ステロイド内服薬は効果発現が比較的速く、急性期の炎症や免疫反応を強力に抑えるのに適しています。

一方、免疫抑制薬(ステロイド以外)は効果発現までに時間がかかるものの、長期的な免疫コントロールやステロイドの減量を目的として用いられることがあります。

どちらの薬剤を選択するか、あるいは併用するかは患者さんの病状、年齢、合併症の有無、副作用のリスクなどを総合的に考慮し、医師が判断します。

その他の内服薬と補助的な治療

ステロイドや免疫抑制薬の他にも、円形脱毛症の治療に用いられる内服薬や、補助的な役割を果たす治療法があります。

抗ヒスタミン薬の役割

前述の通り、抗ヒスタミン薬はアレルギー反応を抑える薬ですが、円形脱毛症の患者さんにはアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を合併している場合が少なくないため、かゆみなどの症状緩和やアレルギー体質の改善を期待して補助的に処方されることがあります。

一部の抗ヒスタミン薬には免疫系に作用する可能性も示唆されていますが、円形脱毛症に対する直接的な発毛効果は限定的と考えられています。

セファランチン

セファランチンはタマサキツヅラフジという植物から抽出されるアルカロイドを有効成分とする薬剤です。

造血機能改善作用、末梢血管拡張作用、抗アレルギー作用などが報告されており、円形脱毛症や白血球減少症などの治療に用いられます。

円形脱毛症に対しては血行促進やアレルギー反応の抑制を通じて、発毛環境を整える効果が期待されます。

副作用は比較的少ないとされていますが、医師の指示に従って服用することが大切です。

グリチルリチン製剤

グリチルリチン製剤は、甘草(カンゾウ)という生薬の成分を基にした薬剤で、抗炎症作用や免疫調整作用などがあります。

皮膚科領域では湿疹や皮膚炎の治療に用いられることがあり、円形脱毛症に対しても頭皮の炎症を抑えたり、免疫バランスを整えたりする目的で補助的に処方されることがあります。

比較的副作用が少ないとされていますが、長期大量投与では偽アルドステロン症(高血圧、むくみ、低カリウム血症など)に注意が必要です。

補助的に用いられる内服薬の例

薬剤の種類期待される主な作用位置づけ
抗ヒスタミン薬抗アレルギー、かゆみ抑制、免疫調整(補助的)補助療法、アトピー素因合併時など
セファランチン血行促進、抗アレルギー補助療法
グリチルリチン製剤抗炎症、免疫調整補助療法

サプリメントや漢方薬の考え方

円形脱毛症の治療において、サプリメントや漢方薬の有効性については現時点では科学的根拠が十分に確立されているとは言えません。

一部のビタミンやミネラル(亜鉛など)は髪の健康に重要ですが、特定のサプリメントが円形脱毛症を治癒させるというデータはありません。

漢方薬は体質改善などを目的として用いられることがありますが、効果には個人差が大きいです。

これらの使用を希望する場合は必ず主治医に相談し、標準的な治療の妨げにならない範囲で検討することが大切です。自己判断での使用は避けましょう。

内服薬治療の副作用とリスク管理

円形脱毛症の内服薬治療は効果が期待できる一方で、副作用のリスクも伴います。

どのような副作用があり、どのように管理していくのかを理解しておくことは、安心して治療を受けるために重要です。

各薬剤に共通する可能性のある副作用

内服薬の種類によって特有の副作用がありますが、一般的に注意すべき点として、アレルギー反応(発疹、かゆみなど)や消化器症状(吐き気、腹痛、下痢など)が現れる可能性があります。

また、免疫を抑制する薬剤の場合は、感染症にかかりやすくなる、あるいは感染症が治りにくくなるリスクがあります。

普段から手洗いやうがいを励行し、体調管理に気をつけることが大切です。

ステロイド内服薬の主な副作用

ステロイド内服薬は服用期間や量によって様々な副作用が現れる可能性があります。

前述の通り、短期的なものでは不眠、食欲増進、精神症状(イライラ、気分の高揚など)、長期的なものでは満月様顔貌、中心性肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症、骨粗しょう症、緑内障、白内障、易感染性、消化性潰瘍などが挙げられます。

これらのリスクを最小限に抑えるため、医師は必要最小限の量と期間で使用し、定期的な検査を行います。

免疫抑制薬の注意すべき副作用

シクロスポリンやアザチオプリンなどの免疫抑制薬もそれぞれ特有の副作用があります。

シクロスポリンでは腎機能障害、高血圧、多毛、歯肉肥厚などが、アザチオプリンでは骨髄抑制(白血球減少、血小板減少など)、肝機能障害、吐き気などが報告されています。

これらの副作用を早期に発見するために、定期的な血液検査や尿検査、血圧測定などが欠かせません。

代表的な内服薬と注意すべき主な副作用例

薬剤の種類注意すべき主な副作用(例)
ステロイド内服薬易感染性、高血糖、高血圧、骨粗しょう症、満月様顔貌
シクロスポリン腎機能障害、高血圧、多毛、歯肉肥厚、易感染性
アザチオプリン骨髄抑制、肝機能障害、吐き気、易感染性

副作用の多くは早期発見と適切な対応により管理可能です。定期的な診察と検査を受けましょう。

副作用出現時の対応と医師への報告

内服薬治療中に何らかの体調変化や気になる症状が現れた場合は、自己判断せずに速やかに医師または薬剤師に報告してください。

特に発熱、強い倦怠感、のどの痛み、出血しやすい、むくみ、急激な体重増加などの症状は、副作用のサインである可能性があります。

早期に報告することで、医師は適切な対応(薬剤の減量・中止、対症療法など)をとることができます。

副作用が心配だからといって無断で薬の服用を中止することは、かえって症状を悪化させる可能性があるため避けてください。

円形脱毛症の内服薬に関するよくある質問

円形脱毛症の内服薬治療に関して、患者様からよく寄せられるご質問とその回答をまとめました。

治療を始める前や治療中の疑問解消にお役立てください。

内服薬はどのくらいの期間飲み続ける必要がありますか?

内服薬を服用する期間は円形脱毛症の重症度、治療への反応、選択する薬剤の種類などによって大きく異なります。

数ヶ月で改善が見られる場合もあれば、1年以上の治療が必要となる場合もあります。特にステロイド内服薬の場合、効果を見ながら徐々に減量していくため、ある程度の期間が必要となります。

医師が定期的に効果と副作用を評価し、最適な治療期間を判断します。自己判断で中断せずに医師の指示に従うことが大切です。

薬を飲み忘れた場合はどうすれば良いですか?

薬を飲み忘れた場合の対処法は薬の種類や服用回数によって異なります。

基本的には気づいた時点ですぐに服用し、次の服用時間が近い場合は忘れた分は服用せず、次の決められた時間に1回分だけ服用します。絶対に2回分を一度に飲んではいけません。

ただしこれは一般的な目安であり、処方された薬によって対応が異なる場合があるため、事前に医師や薬剤師に確認しておくことが重要です。

飲み忘れが多いと期待される効果が得られない可能性があるため、飲み忘れない工夫(アラーム設定、ピルケース活用など)も大切です。

副作用が怖いのですが、飲まなくても治りますか?

円形脱毛症は軽症の単発型であれば自然に治癒することもあります。

しかし、脱毛範囲が広い場合や進行が速い場合、多発型や全頭型などの場合は自然治癒が難しく、内服薬を含む積極的な治療が必要となることが多いです。

内服薬には確かに副作用のリスクがありますが、医師は患者さんの状態や副作用のリスクを総合的に判断し、治療のメリットが上回ると考えられる場合に処方します。

また、副作用を最小限に抑えるための対策や定期的なモニタリングを行います。

副作用への不安は医師に正直に伝え、納得のいく説明を受けることが大切です。内服薬治療を受けないという選択肢も含め、医師とよく相談して治療方針を決定しましょう。

内服薬と外用薬や他の治療法との併用は可能ですか?

はい、可能です。

円形脱毛症の治療では内服薬と外用薬(ステロイド外用薬、ミノキシジル外用薬など)、局所注射(ステロイド注射など)、光線療法などを組み合わせて行うことがよくあります。

複数の治療法を併用することで相乗効果が期待できたり、内服薬の量を減らせたりする場合があります。

どのような治療法を組み合わせるかは患者さんの症状の重症度や範囲、年齢、合併症の有無などを考慮し、医師が総合的に判断します。

自己判断で他の治療法を併用せず、必ず医師に相談してください。

以上

参考文献

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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