![フィナステリドによる蕁麻疹のリスクは?AGA治療と注意点](https://agacare.clinic/wp-content/uploads/2025/01/4e52a221f49d7b580d3f7310dbdfd6fc-5.png)
前田 祐助
AGAメディカルケアクリニック 統括院長
【経歴】
- 慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
- 慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
- 大手AGAクリニック(院長)を経て、薄毛・AGA治療の2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設
- 2020年に2院目となるAGAメディカルケアクリニック横浜院を開設
- 2023年に3院目となるAGAメディカルケアクリニック東京八重洲院を開設
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
- 3万人以上※
- ※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
![前田 祐助](https://agacare.clinic/wp-content/themes/agamedical22/agamedical22/src/img/shared/img_maeda_usuke.jpg)
AGA(男性型脱毛症)の治療薬として使われるフィナステリドは、効果が期待される一方で副作用のリスクも見逃せません。特に服用後の蕁麻疹について心配される方が増えています。
この記事ではフィナステリドの仕組みや蕁麻疹の原因、その他の代表的な副作用、服用時の注意点を幅広く解説します。
薄毛を改善したい方が安心して治療を続けられるよう、クリニックの受診時に役立つ情報も紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
フィナステリドとは?
男性型脱毛症の治療を考える方にとってフィナステリドは中心的な役割を担う薬です。もともとは前立腺肥大症の治療に使われていましたが、薄毛治療の有効成分としても知られるようになりました。
フィナステリドの基本的な働き
フィナステリドは男性ホルモンの一種であるテストステロンを、より強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変換する5αリダクターゼ(特にII型)の働きを抑えます。
DHTが毛根に作用すると脱毛を促進すると考えられ、フィナステリドはこの経路を抑制することでAGAの進行を遅らせることが期待できます。
フィナステリドとDHTの関係
項目 | 内容 |
---|---|
テストステロン | 男性の体内にある重要なホルモン |
5αリダクターゼ | テストステロンをジヒドロテストステロンへ変換する酵素 |
ジヒドロテストステロン(DHT) | AGA(男性型脱毛症)の進行に深く関わるホルモン |
フィナステリド | 5αリダクターゼの働きを抑え、DHTの生成を減らす作用を持つ内服薬 |
ここで注意したいのは、フィナステリドは脱毛を防ぐ効果が中心であり、発毛を強く促すわけではありません。毛の成長サイクルを改善して抜け毛を減らすことに重きを置く薬です。
ミノキシジルやデュタステリドとの違い
AGA治療ではフィナステリドのほか、ミノキシジルやデュタステリドがよく知られています。
ミノキシジル
外用薬や内服薬があり、血管を拡張して頭皮の血行を良くすることで発毛を促すと考えられます。フィナステリドとは作用機序が異なるため、併用することで相乗効果を得られるケースがあります。
デュタステリド
5αリダクターゼのI型とII型の両方を抑制するため、フィナステリドより広い領域でDHTの生成を抑えられる可能性があります。ただし、作用範囲が広い分、副作用リスクに不安を感じる方もいます。
これらの薬は症状や体質によって向き不向きがあります。実際に治療を始める前には医師に相談し、自分に合った選択をすることが大切です。
海外からの個人輸入に関するリスク
費用を抑える目的で個人輸入を検討する方もいます。海外からのフィナステリドや類似薬を購入すると、偽造品や有効成分が含まれない粗悪品にあたる可能性があります。
また、医師の診断なしで服用すると、何か異常が起きても対処が遅れがちです。処方を受けるクリニックでの診察や血液検査を受けながら、正規ルートで入手することが重要です。
蕁麻疹の症状と対処法
フィナステリドを服用したあとに生じる症状として、まれに蕁麻疹を訴える方がいます。ここでは蕁麻疹がどのような症状なのか、どう対処すればよいかを紹介します。
蕁麻疹とは
蕁麻疹は皮膚が赤く盛り上がって強いかゆみを伴う皮膚症状で、アレルギー反応などが原因とされています。
薬や食品、ストレスなどさまざまな要因で発症しますが、AG治療薬のフィナステリドを服用した後に発疹やかゆみが生じたという報告もあります。
蕁麻疹の主な症状
主な症状 | 具体的な様子 |
---|---|
皮膚の盛り上がり | 皮膚の表面が膨らんで、境界がはっきりした赤みが帯びることが多い |
かゆみ | 強いかゆみを伴うケースが多い |
消退と再発 | 数時間から1日で跡形もなく消えることがある一方で、再発を繰り返す場合もある |
広がり | 全身に広がる場合もあれば、腕や足など部分的に集中する場合もある |
多くのケースでは一時的に症状が出て収まるときもありますが、長引く場合は医師への相談が必要です。とくにフィナステリドとの関連が疑われるときは、服用を中断して診察を受けることが推奨されます。
蕁麻疹が発生したときの対処のポイント
- まずはフィナステリドの服用を中止し、かかりつけの医師に相談する
- 症状がひどい場合や呼吸困難などを伴う場合は救急受診を検討する
- 原因究明が難しいときは皮膚科でアレルギー検査を受ける
- 再度服用を開始するかは医師とよく話し合う
医師の指示を仰ぐことが一番の安全策です。自己判断で服用を再開すると重篤な症状を引き起こす可能性があるので、慎重な対応が必要です。
アレルギーとの関係
フィナステリドを含む薬だけでなく、食べ物や花粉など別のアレルゲンがトリガーになっている場合も考えられます。
フィナステリドに限らず複数の要因が重なり合って蕁麻疹が出ることがあるため、自己診断が難しい面があります。気になる症状があれば早めに医師や皮膚科専門医に相談しましょう。
フィナステリドの主な副作用
フィナステリドはAGA治療の中心的な役割を果たす薬ですが、副作用を完全に避けるのは難しいです。ここでは代表的な副作用とその背景を解説します。
性機能障害
フィナステリド服用により性欲の減退や勃起機能障害が起こる可能性があります。これはDHTの減少が男性ホルモンの働きに影響を及ぼすからと考えられます。
ただし、発現率は低めとされ、薬の服用を中止すると症状が改善するケースが多いです。
フィナステリドで報告されている代表的な副作用の発生率
副作用 | 発生率(目安) | 備考 |
---|---|---|
性機能障害 | 約1~2%前後 | 性欲減退、勃起機能の低下など |
肝機能障害 | 1%未満 | 血液検査で肝臓の数値が上昇する可能性 |
抑うつ(抑うつ症状) | 1%未満 | ホルモンバランスの変化による影響が考えられる |
アレルギー症状 | ごくまれ~1%未満 | 蕁麻疹や発疹など。重篤な場合はすぐに受診が必要 |
数字はあくまで目安で、個人差があります。服用中に違和感を覚えたら放置せず、医師に相談したほうが安心です。
肝機能障害
フィナステリドは肝臓で代謝される薬です。肝機能がもともと弱い方、あるいは肝臓に負担をかける生活習慣(過度なアルコール摂取など)がある方は、血液検査で定期的に肝臓の状態を確認する必要があります。
万が一、肝機能に異常が見られた場合には、服用量の調整や中止を検討するケースがあります。
抑うつ(抑うつ症状)
男性ホルモンの変化は精神状態にも影響を与える可能性があります。深刻になるケースは少ないですが、落ち込みや意欲低下などが見られる場合、迷わず担当医に相談することが重要です。
アレルギー症状(蕁麻疹を含む)
上述のとおり、蕁麻疹もアレルギー症状の一つです。薬物アレルギーによる発疹やかゆみ、めまいなどの症状が出たときは、まず服用を中断し医師に連絡してください。
フィナステリドを服用するときの注意点
フィナステリドは医師の診断に基づいた正しい服用が重要です。勝手に増量したり、一時的に服用を止めたりすると効果が安定しにくいだけでなく、体に余計な負担をかける場合があります。
医師による定期的な診察が大切
- 血液検査で肝機能障害やその他の異常をチェックする
- AGAの進行度合いや頭皮の状態を定期的に評価する
- 副作用の兆候がないかを確認する
医師の指示をしっかり守ると、副作用のリスクを最小限に抑えやすくなります。
服用時に知っておきたい5つの注意事項
- 毎日決まった時間に服用する
- 服用を忘れた場合は思い出した時点で服用するが、2回分をまとめて飲まない
- アルコールを大量に摂取すると肝臓に負担がかかる
- 途中で効果を実感しなくても医師に相談せず勝手に中断しない
- 妊娠中の女性や未成年の服用は推奨されていない
定期的に服用し続けることで、AGA治療の効果が安定して得られやすくなります。
献血の制限
フィナステリドを服用している間は、献血ができない期間があります。
日本赤十字社の規定では、フィナステリドの服用を中止して1カ月以上経過していないと献血はできません。これは万が一輸血を受ける方に影響が出ないようにするためです。
フィナステリド服用中の献血に関する概要
項目 | 内容 |
---|---|
献血制限期間 | フィナステリド服用中および中止後1カ月 |
制限の理由 | 薬の成分が輸血相手のホルモンバランスに影響を与える可能性 |
必要な対応 | 献血を希望する際は服用状況を申告し、医師の判断を仰ぐ |
妊活中の夫婦への配慮
フィナステリドは女性(特に妊娠中や妊娠の可能性がある方)には原則禁忌です。男性が服用している場合でも、妊娠中の女性が薬に触れる可能性がある場面は避けたほうが良いと考えられています。
実際のリスクはきわめて低いという報告もありますが、心配な方は専門医に相談しましょう。
AGA治療を継続するために大切なポイント
フィナステリドの副作用が心配でも、正しい知識と対策を踏まえて治療を続けることで、薄毛の進行を抑える効果に期待ができます。
定期的な頭皮チェックの重要性
クリニックでマイクロスコープなどを使って頭皮をチェックすると、AGAの進行度や効果の有無を客観的に把握できます。
自分の状態を知ると、服用を続けるモチベーションに直結しやすいです。
AGA治療を成功させるために考えたい4項目
- 生活習慣の見直し(食事・睡眠・ストレス管理など)
- フィナステリドだけでなく、必要に応じてミノキシジルなど他の治療薬の併用検討
- 定期的な血液検査や肝機能チェック
- 途中で効果が実感できなくても早めに医師へ相談
サプリメントや育毛剤の併用
亜鉛やビタミンなどのサプリメントを取り入れる人もいます。ただし、サプリメントや育毛剤だけでAGAを改善するのは難しく、フィナステリドやミノキシジルなど医薬品との併用が中心になります。
併用時の注意点などはクリニックで相談しましょう。
ストレスの管理と規則正しい生活
過度なストレスはホルモンバランスの乱れや睡眠不足を招き、AGAに限らず健康全般に悪影響を及ぼします。
普段から十分な睡眠とバランスの良い食事を心がけ、適度な運動を行うことも頭皮環境の改善に役立ちます。
ストレスを軽減する生活習慣
取り組み | 具体例 |
---|---|
睡眠環境の整備 | 就寝前のスマホ利用を控え、夜更かしを避けて早めに就寝する |
運動や軽いストレッチ | ウォーキングやヨガなどを週に数回取り入れ、血行を促進する |
栄養バランス | タンパク質やビタミン、ミネラルを意識した食事を心がける |
リラックス時間 | 入浴や読書、趣味の時間を取り、精神面での負荷を減らす |
クリニックでの相談と治療の流れ
AGAの治療を検討するときは、できるだけ専門のクリニックや皮膚科を受診することがおすすめです。医療機関では頭皮の状態を詳細にチェックし、血液検査をもとに副作用リスクを予測してくれます。
初診から処方までの一般的な流れ
1.予約や問い合わせ | 電話やウェブ予約で来院日時を決めるところから始まります。 |
2.医師の診察 | 頭皮状態のチェックや問診、血液検査などを行い、症状に合わせた治療方針を検討します。 |
3.フィナステリドなどの治療薬処方 | 血液検査の結果や患者の希望を踏まえ、治療薬を選択します。副作用や注意点もこの段階で説明されます。 |
4.定期的な再診 | 数カ月ごとに再診を受け、効果を確認しながら薬の種類や量を調整することがあります。 |
気になる点があれば質問し、疑問を解消することで安心して治療を受けられます。
クリニックに通うメリット
- 医師が副作用の兆候を早期に発見する
- 頭皮の状態を詳しく検査し、必要に応じて外用薬などを提案してくれる
- カウンセリングを受けることで気持ちの不安を軽減できる
定期的に通院していれば、服用に関するトラブルが起こったときにもすぐに対応が期待できます。
クリニック通院と自己判断の違い
項目 | クリニックでの治療 | 自己判断(個人輸入など) |
---|---|---|
診察・血液検査 | 医師やスタッフによる定期的な確認 | 行わない・または自己判断で不十分な場合が多い |
安全性 | 正規品の薬を処方してもらえる | 偽物や成分不明の薬を手にするリスク |
副作用の対応 | 早期発見と医師によるフォロー | 症状が出ても対処が遅れがち |
コスト | 保証や割引プランがある場合もある | 薬の単価が安く見えても偽造品リスクやトータル費用増加 |
まとめ
フィナステリドはAGAの進行を抑える効果が期待できる一方で、蕁麻疹を含むアレルギー反応や肝機能障害、性機能障害などの副作用の可能性がゼロではありません。
特に服用後に皮膚に異常が出る場合は薬の影響かどうかを確かめるためにも、医師へ早めに相談することが大切です。
また、フィナステリドは効果を実感するまで時間がかかるため、途中で辞めたり増量したりせず、定期的な診察を受けながら安全に治療を続ける姿勢が求められます。
AGA治療の成功にはフィナステリドの正しい使い方と副作用への十分な理解、そして専門クリニックとの連携が重要です。薄毛に悩む方は、まずは医師に相談してご自身に合った治療方法を検討してください。
- 関連文献
- CHOI, Gwang-Seong, et al. Long-term effectiveness and safety of dutasteride versus finasteride in patients with male androgenic alopecia in South Korea: a multicentre chart review study. Annals of Dermatology, 2022, 34.5: 349.
KAISER, Michael, et al. Treatment of androgenetic alopecia: current guidance and unmet needs. Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology, 2023, 1387-1406.
MOTOFEI, Ion G., et al. Therapeutic considerations related to finasteride administration in male androgenic alopecia and benign prostatic hyperplasia. Farmacia, 2017, 65.5.
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TRESCH, Sandra, et al. T cell–mediated acute localized exanthematous pustulosis caused by finasteride. Journal of Allergy and Clinical Immunology, 2012, 129.2: 589-594.
DEVJANI, Shivali, et al. Androgenetic alopecia: therapy update. Drugs, 2023, 83.8: 701-715.