プロペシアには発毛効果がないって本当？正しい効き目や作用のしくみを解説

プロペシアはAGA治療に用いられる薬ですが、発毛効果については賛否が分かれています。

この薬は主に薄毛の進行を抑える働きを持ち、発毛効果が見られるケースは限られます。しかし、AGAの進行度によってはプロペシア単剤で十分に治療効果を得られる場合もあります。

プロペシアには発毛効果がない？薄毛の進行を防ぐ仕組み

プロペシアは、抜け毛を防いで薄毛を改善する効果が期待できる内服薬です。

プロペシアの主成分であるフィナステリドの働き

プロペシアの主成分であるフィナステリドは「5α還元酵素阻害薬」で、体内でテストステロンをジヒドロテストステロン（DHT）に変換する酵素を抑制します。

DHTは毛包を萎縮させる働きがあり、男性型脱毛症（AGA）の主な原因物質です。プロペシアを服用するとフィナステリドがDHTの生成を抑えるため、毛包の萎縮を防いで、結果的に薄毛の進行を抑えられます。

成分	作用
フィナステリド	5α還元酵素阻害
テストステロン	DHTに変換される
DHT	毛包を萎縮させる

ただし、フィナステリドには新しい毛を生やす作用はありません。既に失われた毛髪を回復させる効果はないため、薄毛の初期段階での使用がより効果的です。

フィナステリドの作用は全身に及びますが、特に頭皮における効果が顕著です。これは、頭皮の毛包が特にDHTの影響を受けやすいためです。

プロペシアが毛髪サイクルに与える影響

毛髪サイクル（毛周期）は成長期、退行期、休止期といった3つの段階がありますが、プロペシアはこのサイクルを正常に保つ役割を持っています。

毛髪サイクルの段階	プロペシアの影響
成長期	延長
退行期	変化なし
休止期	短縮

成長期を延ばして休止期を短くする効果によって、今生えている毛髪が長く、太く維持されます。薄毛の進行が抑えられて、頭髪全体のボリュームが保てるようになるのがメリットです。

プロペシアの効果が現れるまでの期間

プロペシアは、飲み始めたら効果が即座に現れるものではありません。一般的に、効果が目に見えて現れるまでには数か月の継続使用が必要です。

• 3〜6か月：抜け毛の減少が感じられる
• 6〜12か月：既存の毛髪の太さや密度の改善が見られる
• 12か月以降：薄毛の進行が止まり、全体的な頭髪の状態が安定する

効果の現れ方には個人差があるため、すぐに効果が見られない場合でも、焦らずに継続使用することが重要です。

プロペシアの正しい服用方法と注意点

プロペシアを効果的かつ安全に使用するためには、正しい服用方法を守ることが大切です。

プロペシアは毎日1回、1錠を服用します。食事の有無に関わらず服用できますが、飲み忘れを防いだり血中の濃度を一定に保つために、毎日同じ時間に服用するようにします。

• 18歳未満の男性は使用できない
• 女性や妊婦は絶対に使用しない
• 服用を忘れた場合、思い出した時点で1錠服用するが、次の服用時間が近い場合は飛ばす
• 2回分を一度に服用しない

副作用には、性機能障害や乳房の腫れなどがありますが、発生率は低いとされています。しかし、気になる症状が現れた場合は、すぐに医師に相談します。

AGAの進行度別：プロペシア単剤での治療効果が期待できるケース

男性型脱毛症（AGA）の進行度によって、プロペシアの治療効果は変化します。

プロペシアは薄毛の進行を抑制する効果はありますが、新しい毛を生やす効果はありません。そのため、薄毛の初期段階での使用が最も効果的です。

ハミルトン・ノーウッド分類による男性型脱毛症の進行度

ハミルトン・ノーウッド分類は、AGAの進行度を評価する基準で、世界的に使われています。頭頂部と前頭部の脱毛パターンを7段階で分類します。

段階	特徴
I	脱毛なし、正常な髪の毛量
II	額の生え際がわずかに後退
III	額の生え際と頭頂部の明らかな後退
IV	頭頂部の薄毛が目立つ
V	頭頂部と前頭部の薄毛が連結
VI	頭頂部の薄毛領域が拡大
VII	最終段階、頭頂部の全体が薄毛状態

この分類を用いることでAGAの進行度を客観的に評価し、治療方針を決定できます。

初期段階のAGAに対するプロペシアの効果

プロペシアは、初期段階のAGA（ノーウッド分類のII～III）に対して特に優れた効果を発揮します。この段階では、毛髪の細化や脱毛が始まったばかりで、多くの毛包がまだ活性化可能な状態にあります。

プロペシアの主成分フィナステリドは、テストステロンからジヒドロテストステロン（DHT）への変換を阻害します。DHTは毛包を萎縮させる主要因であるため、その産生を抑えることで脱毛の進行を効果的に抑制します。

• 脱毛の進行抑制
• 毛髪の太さと密度の向上
• 新しい毛髪の成長促進

多くの場合、治療開始から3～6ヶ月で効果が現れ始め、1年程度で明確な改善が観察されます。

中等度のAGAで得られるプロペシアの効果

中等度のAGA（ノーウッド分類のIV～V）では、プロペシア単独でも一定の効果が期待できますが、初期段階と比較すると効果の程度や発現速度に差異があります。

この段階では、すでに多くの毛包が萎縮し、一部は不活性化しています。プロペシアは、まだ活性のある毛包を保護して部分的に萎縮した毛包の回復を促進します。

効果	期待できる改善
脱毛抑制	高い
毛髪の太さ改善	中程度
新しい毛髪の成長	部分的

中等度のAGAに対するプロペシアの効果は、通常6ヶ月から1年程度で現れ始めます。

重度のAGAに対するプロペシアの効果と限界

重度のAGA（ノーウッド分類のVI～VII）に対しては、プロペシア単独での効果に限界があります。重度の段階は多くの毛包が完全に不活性化していて、薬剤による回復が困難な状態です。

段階	脱毛抑制	毛髪の回復
VI	部分的	限定的
VII	限定的	極めて困難

プロペシアを使用しても劇的な薄毛の改善は難しいですが、以下のような効果が得られる可能性があります。

• さらなる脱毛進行の遅延
• 残存する毛髪の質の改善
• 部分的に薄い箇所の毛髪密度のわずかな増加

AGAが重度まで進行してしまったケースでは、プロペシアだけでなく他の治療法を組み合わせるのが一般的です。

プロペシアと他の治療法との組み合わせで得られる効果

プロペシアと他の治療法を組み合わせると、男性型脱毛症の治療効果が向上します。

プロペシアとミノキシジルの併用療法

プロペシアとミノキシジルは異なる作用機序を持つ薬剤で、併用すると相乗効果が生まれます。

ミノキシジルには内服薬（ミノタブ）と外用薬（塗りミノ）があり、血管を拡張させて毛包への血流を改善し、毛髪の成長を促進する薬です。

薬剤名	主な作用
プロペシア	DHT産生抑制による抜け毛の進行抑制
ミノキシジル	血流改善による発毛促進

プロペシアとミノキシジルを併用している方も多いです。

ただし、副作用のリスクも増えますので、医師の指導のもと正しい用量・用法で使用するのが前提です。

プロペシアと育毛剤や育毛サプリメントの併用

プロペシアによる内服治療に、外用の育毛剤や栄養補助食品である育毛サプリメントを加えると包括的なアプローチが可能です。

育毛剤には、頭皮環境を整える成分や毛髪の成長を促進する有効成分が含まれているものがあります。

製品タイプ	主な効果
育毛剤	頭皮環境改善
育毛サプリメント	栄養補給

育毛サプリメントは、毛髪の健康に欠かせない栄養素を補給します。ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの成分が含まれていて、内側からの毛髪ケアをサポートします。

プロペシアと毛髪移植手術（自毛植毛）の組み合わせ

毛髪移植手術（自毛植毛）は、後頭部や側頭部などの健康な自分の毛髪を薄毛部分に移植する治療方法です。毛髪移植手術と合わせてプロペシアを継続使用すると、移植した毛髪の定着率が向上して長期的な効果を維持できます。

プロペシアの使用	効果
毛髪移植手術前	薄毛の進行を抑制して手術の効果を最大化
手術後の継続	移植毛髪の定着率向上と既存毛髪の維持

日本皮膚科学会の薄毛治療ガイドラインでも推奨されている治療法ですが、かかる費用が比較的高額で、検討する際は専門医との詳細な相談が必要です。

プロペシアと低出力レーザー治療（LLLT）の併用効果

低出力レーザー治療（LLLT）は、特定波長の光を頭皮に照射し、毛包細胞の活性化を促す治療法です。

プロペシアとLLLTを併用すると、それぞれの治療効果を補完し合い、より効果的な薄毛対策が可能になります。

治療法	作用
プロペシア	DHT抑制により薄毛の進行を抑える
LLLT	毛包細胞の代謝促進・血流改善による毛髪の成長促進

併用療法では定期的な経過観察を行い、必要に応じて治療内容を調整すると、より効果的な薄毛対策が実現します。