前田 祐助
AGAメディカルケアクリニック 統括院長
【経歴】
- 慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
- 慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
- 大手AGAクリニック(院長)を経て、薄毛・AGA治療の2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設
- 2020年に2院目となるAGAメディカルケアクリニック横浜院を開設
- 2023年に3院目となるAGAメディカルケアクリニック東京八重洲院を開設
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
- 3万人以上※
- ※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
AGA治療において多くの男性が選択するプロペシアですが、最近ではプロペシアが中性脂肪値を上昇させる可能性がある点に注目が集まっています。中性脂肪の増加は、健康に与える影響を懸念する声もあります。
効果的なAGA治療を安全に行うためには、プロペシアによる中性脂肪増加のリスクや生活習慣との関連を理解しておく必要があります。
プロペシアによる中性脂肪値上昇のリスクとは?
プロペシアは男性型脱毛症(AGA)の治療薬として広く使用されていますが、中性脂肪値上昇のリスクが指摘されています。
プロペシアと中性脂肪値の関係に関する研究
プロペシアと中性脂肪値の関係については、複数の研究が実施されています。ある調査では、プロペシア服用者の約15%に中性脂肪値の上昇が観察されました。
ただし、この結果の解釈には慎重さを要します。中性脂肪値は食事や運動習慣、ストレスなど、多様な要因によって変動するためです。
研究 | 中性脂肪値上昇の割合 |
---|---|
A | 約15% |
B | 約10% |
別の研究では、プロペシア服用者と非服用者の中性脂肪値を比較していて、両群間に統計的に有意な差は認められませんでした。
このように、現時点では一貫した結論が得られていません。
プロペシアの中性脂肪値上昇メカニズム
プロペシアが中性脂肪値を上昇させる可能性のあるメカニズムについて、複数の仮説が提唱されています。
主な仮説は以下の通りです。
- プロペシアの有効成分であるフィナステリドが、脂質代謝に関与する酵素の働きを抑制する
- ホルモンバランスの変化が、脂肪細胞の活動に影響を及ぼす
- 肝臓での脂質合成が促進される
ただし、これらの仮説は完全には立証されていません。今後の研究によって、より詳細なメカニズムが解明されることが期待されます。
中性脂肪値上昇のリスクと頻度
中性脂肪値上昇のリスクと頻度は、個人によって大きく異なります。一般的に、以下のような要因がリスクを高めます。
- 肥満や過体重
- 運動不足
- 高炭水化物・高脂肪食
- アルコールの過剰摂取
- 糖尿病や甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンの分泌が少ない状態)などの基礎疾患
プロペシア服用者の中で中性脂肪値が上昇する割合は研究によって異なりますが、おおよそ10%から20%程度と報告されています。
リスク要因 | 影響度 |
---|---|
肥満 | 高 |
運動不足 | 中 |
食生活 | 高 |
プロペシア服用前後で定期的に血液検査を行い、中性脂肪値の変動を確認して値の上昇が見られたときは、医師と相談の上で対応を取ります。
その他、プロペシアが引き起こす可能性のある副作用
プロペシアには、中性脂肪値上昇以外にもいくつかの副作用が報告されています。主な副作用は以下の通りです。
- 性機能障害(勃起不全、性欲減退など)
- 乳房腫大
- うつ症状
- 精子の質や量の低下
これらの副作用の発生頻度は比較的低いとされていますが、個人差があります。また、副作用の多くは服用を中止すると改善します。
中性脂肪値上昇による健康への影響
中性脂肪値の上昇は、長期的には様々な健康問題を引き起こします。
- 動脈硬化のリスク増加
- 心臓病や脳卒中のリスク上昇
- 膵炎(すい臓の炎症)の発症リスク増加
- 脂肪肝の進行
中性脂肪値が正常範囲を超えて上昇した場合、第一に生活習慣の改善が求められます。具体的には、適度な運動、バランスの取れた食事、アルコール摂取の制限などが効果的です。
場合によっては、医師の判断により薬物療法を検討します。
中性脂肪値上昇の原因となる生活習慣とプロペシアの関係
中性脂肪値の上昇は、多くの場合、不適切な食生活が原因です。特に、高カロリー・高脂肪の食事を続けると、体内で余分な脂肪が蓄積されやすくなります。
食生活と中性脂肪の増加
糖質や脂質の過剰摂取は、中性脂肪値を急激に上昇させます。これらの栄養素は、体内でエネルギーとして利用されますが、摂取量が必要以上に多いと余剰分が中性脂肪として蓄積されます。
食品 | 中性脂肪への影響 |
---|---|
糖質 | 増加 |
脂質 | 増加 |
食物繊維 | 減少 |
タンパク質 | 中立 |
一方で、食物繊維やタンパク質を適量摂取することで、中性脂肪値の上昇を抑制できます。これらの栄養素は、消化吸収に時間がかかるため血糖値の急激な上昇を防ぎ、結果として中性脂肪の生成を抑えます。
アルコールの過剰摂取も中性脂肪値を上昇させる要因の一つです。アルコールは体内で中性脂肪に変換されやすく、特に空腹時の飲酒は注意します。
運動不足と中性脂肪値の関係
運動不足は、中性脂肪値の上昇に直接的な影響を与えます。定期的な運動は体内の脂肪を燃焼させるだけでなく、インスリン感受性を高めて糖質や脂質の代謝を促進します。
有酸素運動は、中性脂肪値を下げるのに効果的です。ウォーキングやジョギング、水泳などの継続的な運動は、体内の脂肪を効率よく燃焼させます。
運動の種類 | 中性脂肪への効果 |
---|---|
有酸素運動 | 減少 |
筋力トレーニング | 長期的に減少 |
ストレッチ | 間接的に減少 |
筋力トレーニングも、長期的には中性脂肪値の低下に寄与します。筋肉量が増えることで基礎代謝が上がり、脂肪の燃焼効率が向上するためです。
日常生活の中で活動量を増やす工夫も、中性脂肪値の管理に役立ちます。
- エレベーターやエスカレーターの代わりに階段を使う
- 近距離の移動は徒歩や自転車を利用する
- デスクワークの合間に軽いストレッチや歩行を取り入れる
効果はすぐに目に見えて実感できるものではありませんが、小さな習慣の積み重ねが、長期的には大きな効果をもたらします。
プロペシア使用と生活習慣の相乗効果
プロペシアはAGA治療に広く用いられる薬剤ですが、一部の方で中性脂肪値の上昇が報告されています。この現象は、薬剤の直接的な作用というよりも、生活習慣との相互作用によって引き起こされると考えられています。
プロペシアの主成分であるフィナステリドは、テストステロンからジヒドロテストステロン(DHT)への変換を阻害します。この作用により、男性型脱毛の進行を抑制しますが、同時にホルモンバランスに影響を与えます。
プロペシアの効果 | 中性脂肪への影響 |
---|---|
脱毛抑制 | 直接的な影響なし |
ホルモンバランス変化 | 間接的に影響の可能性あり |
ホルモンバランスの変化は、代謝にも影響を及ぼす場合があります。特に、不適切な食生活や運動不足といった生活習慣と組み合わさると、中性脂肪値の上昇につながります。
中性脂肪が気になる方のAGA治療上の注意点
プロペシアによる男性型脱毛症(AGA)治療において中性脂肪の増加が問題視されていますが、正しい服用法を守って定期的に検査を受けることで、リスクを最小限に抑えられます。
プロペシア服用中の定期的な健康診断
プロペシアを用いたAGA治療では、定期的な健康診断が欠かせません。中性脂肪値の変化を追跡するため、血液検査を含む包括的な健康チェックを実施します。
診断の頻度は患者の状態や医師の判断により異なりますが、通常3〜6ヶ月ごとの受診が勧められます。このような定期的な観察により中性脂肪値の上昇を早期に検知し、迅速な対応が可能となります。
検査項目 | 推奨頻度 |
---|---|
血液検査 | 3〜6ヶ月ごと |
肝機能検査 | 3〜6ヶ月ごと |
血圧測定 | 受診時毎回 |
健康診断では、中性脂肪値に加え、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロールなどの脂質プロファイルも確認し、総合的に評価すると正確な健康状態の把握が実現します。
加えて、プロペシアの副作用として知られる肝機能への影響も、定期検査によってモニタリングできます。
中性脂肪値が高い場合の治療選択肢
中性脂肪値の上昇が確認されたときは、プロペシアの継続使用か、他の治療法への移行か、中性脂肪値の上昇程度や他の健康指標を考慮して決定します。
代替療法としては、外用薬のミノキシジルや内服薬のデュタステリドなどが候補に挙がります。これらの薬剤は、プロペシアとは異なる作用機序でAGAに働きかけるため、中性脂肪への影響が軽微である可能性があります。
治療法 | 特徴 |
---|---|
ミノキシジル | 外用薬、血行促進効果 |
デュタステリド | 内服薬、5α還元酵素阻害 |
低出力レーザー療法 | 非薬物療法、頭皮血流改善 |
医師との細かな相談を通じ、それぞれの状況に適した治療法を選択します。中性脂肪値の改善が見られない場合、AGAの治療を一時休止し、脂質異常症の改善に注力することも検討対象となります。
生活習慣の見直しと改善
AGA治療中に中性脂肪値の上昇が認められた際には、生活習慣の見直しが不可欠です。食事管理と運動習慣の確立は、中性脂肪値の改善に大きく寄与します。
食事面では糖質や脂質の過剰摂取を抑え、バランスの取れた食生活を心がけましょう。特に、飽和脂肪酸や精製糖の摂取を控え、不飽和脂肪酸や食物繊維を多く含む食品を積極的に取り入れるのが望ましいです。
控えるべき食品 | 増やすべき食品 |
---|---|
精製糖 | 全粒穀物 |
飽和脂肪酸 | 不飽和脂肪酸 |
加工食品 | 野菜・果物 |
運動習慣の確立も中性脂肪値の改善に効果的で、有酸素運動を中心に週3〜5回、1回30分以上の運動の継続が推奨されています。ウォーキングやジョギング、水泳など、自分に適した運動を選択し、無理なく継続できるよう工夫する取り組みが大切です。
また、アルコールの過剰摂取は中性脂肪値を上昇させる要因となるため、適量を心がけます。喫煙習慣がある場合は、禁煙も中性脂肪値の改善に寄与する可能性があります。
医師との相談の重要性
AGA治療中に中性脂肪値の上昇が見られた場合は、速やかに担当医師に相談します。
医師との相談時には、現在の症状だけでなく、最近の生活習慣の変化や健康診断の結果なども伝えるようにしましょう。
- 現在の症状や体調の変化
- 服用中の薬剤とその用量
- 最近の生活習慣の変化
- 健康診断の結果
場合によっては、AGAの専門医と内科医の連携が必要となることもあります。
相談すべき医師 | 主な役割 |
---|---|
AGAの専門医 | 脱毛治療の管理 |
内科医 | 中性脂肪値の管理 |
栄養士 | 食事指導 |
医師との定期的な相談は、治療効果の最大化と副作用リスクの最小化に不可欠です。治療方針の変更や生活習慣の改善について、専門家のアドバイスを受けながら進めることで、より安全で効果的なAGA治療の継続が可能となります。
- 関連文献
- DUSKOVA, M.; HILL, Martin; STARKA, L. Changes of metabolic profile in men treated for androgenetic alopecia with 1 mg finasteride. Endocr Regul, 2010, 44.1: 3-8.
SADGROVE, Nicholas John. The ‘bald’phenotype (androgenetic alopecia) is caused by the high glycaemic, high cholesterol and low mineral ‘western diet’. Trends in Food Science & Technology, 2021, 116: 1170-1178.
KIM, Min Hee; HA, In Jin; KIM, Kyuseok. Exploration of integrated targeted serum and hair metabolomic profiles in men with androgenetic alopecia. Singapore medical journal, 2023.
DOULABI, S. R. S. M., et al. Effect of finasteride on lipid profile in individuals with androgenetic alopecia. African Journal of Pharmacy and Pharmacology, 2013, 7.6: 315-317.
CANNARELLA, Rossella, et al. Glycolipid and hormonal profiles in young men with early-onset androgenetic alopecia: a meta-analysis. Scientific reports, 2017, 7.1: 7801.
HAMED, Ahmed Mohammed, et al. Relation between Androgenic Alopecia with Metabolic Syndrome. The Egyptian Journal of Hospital Medicine (January 2024), 94: 1207-1211.