前田 祐助
AGAメディカルケアクリニック 統括院長
【経歴】
- 慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
- 慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
- 大手AGAクリニック（院長）を経て、薄毛・AGA治療の2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設
- 2020年に2院目となるAGAメディカルケアクリニック横浜院を開設
- 2023年に3院目となるAGAメディカルケアクリニック東京八重洲院を開設
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
- 3万人以上※
- ※2018年5月～2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
髪は見た目の印象を大きく左右するため、薄毛が進行する原因に遺伝が関係しているのかと不安に思う人は多いです。
母方の祖父が薄毛だと自分もはげるのか、あるいは父親が薄毛なら症状が出やすいのか、隔世遺伝という言葉が気になる方もいるかもしれません。
男性型脱毛症（AGA）を発症するときの仕組みには遺伝要因や生活習慣などさまざまな要因が絡み合います。
この記事では、はげの隔世遺伝と薄毛のメカニズム、AGAの原因、そして予防や治療の方法について詳しく解説します。
今後の参考として自分なりの対策を考えるきっかけにしてみてください。
薄毛と隔世遺伝の関係を考える
薄毛には遺伝が深く関わることが知られていますが、その遺伝形式については誤解も多いです。
隔世遺伝という言葉には「母方の祖父から受け継ぐ」というイメージがあるかもしれません。
しかし実際には父方からの影響も存在し、両親どちらからも毛髪に関連した遺伝子が受け継がれます。
遺伝子だけで薄毛が必ず進行するわけではなく、生活習慣などの要因と重なることで男性型脱毛症（AGA）が発症しやすくなると言われています。
遺伝子が薄毛に与える主な要因
遺伝は髪の毛の性質や頭皮の状態をある程度決定づける重要な要素です。
特に次の点が薄毛との関連で知られています。
- 5αリダクターゼの活性度
- 男性ホルモン受容体（レセプター）の感受性
- 毛根細胞の成長サイクルに対する影響
- 頭皮の皮脂分泌量や毛髪の太さ・硬さなどの体質
母方の祖父が薄毛だと症状が出やすい？
男性ホルモン受容体（アンドロゲンレセプター）の遺伝子はX染色体上にあるため、母親を経由して受け継ぐときに“隔世遺伝”的な影響が表れやすいと言われています。
母方の祖父が薄毛の場合、同じX染色体を経由して受け継ぐ可能性があり、はげの確率が高まることがあるのです。
ただし父方が薄毛である場合にも、5αリダクターゼの活性度など別の遺伝要因が強く働くケースがあります。
優性遺伝と隔世遺伝の違い
薄毛遺伝子の中には優性遺伝と言われるものもあります。
優性遺伝の場合は持っていると高い確率で発現しますが、隔世遺伝する遺伝子は潜在的に受け継いでいても必ずしも親世代では症状が強く出ず、孫世代で表れる可能性があります。
薄毛のパターンを一概に決められないのは、どの遺伝子がどのタイミングで強く働くかが人によって異なるからです。
遺伝だけが原因ではない
遺伝的要因があっても早期に生活習慣を見直したりヘアケアを適切に行ったりすれば薄毛の進行を大きく抑えられることがあります。
AGAが発症するには男性ホルモンの増加や5αリダクターゼの活発化だけでなく、ストレスや栄養不足などの環境要因も大きく影響すると言われます。
遺伝子を受け継いでいるからといって必ずはげるわけではないため自分に合った対策を見つける姿勢が大切です。
遺伝と薄毛に関わる用語と特徴
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| 5αリダクターゼ | 男性ホルモン（テストステロン）をジヒドロテストステロンに変換する酵素。活性が高いほど毛髪は抜けやすくなると言われる。 |
| アンドロゲンレセプター | DHT（ジヒドロテストステロン）が結合しやすい受容体。感受性が高いと脱毛を起こしやすい。 |
| 母方遺伝 | X染色体から伝わるとされる遺伝形式。母方の祖父が薄毛だと隔世遺伝として発現する場合がある。 |
| 父方遺伝 | 5αリダクターゼなどの優性遺伝が伝わりやすい。父親が薄毛のときは注意が必要。 |
| 男性型脱毛症（AGA） | 男性ホルモン（テストステロン）と酵素（5αリダクターゼ）の相互作用により、毛髪が成長期を十分に保てず抜け落ちる症状。 |
AGAが起こる仕組みと発症に関わるポイント
AGA（男性型脱毛症）は主に男性ホルモンと5αリダクターゼという酵素が関与している脱毛症です。
男性の体内で多く生成されるテストステロンと5αリダクターゼが結合するとジヒドロテストステロン（DHT）というより強力なホルモンが発生し、毛髪の成長サイクルを乱します。
男性ホルモンが髪に与える影響
男性ホルモンであるテストステロン自体は髪の成長にそこまで強い悪影響を及ぼさないとされています。
しかし5αリダクターゼが活性化するとDHTが増加し、毛乳頭細胞に“脱毛因子”を産生させる指令を出します。
これが頭皮で多く進行すると髪の毛は成長期を十分に保てずに早期に抜けてしまい、抜け毛が増える原因になります。
5αリダクターゼの型と遺伝との関連
5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型の2種類があり、どちらも優性遺伝によって受け継がれることが指摘されています。
頭頂部や前頭部を中心に毛が薄くなりやすい理由として、Ⅱ型が強く働くことが多いとも言われます。
5αリダクターゼと遺伝との関係
| 型 | 主な分布部位 | 遺伝形式 | 薄毛への影響 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ型 | 皮脂腺や全身の毛嚢に広く分布 | 優性遺伝 | 皮脂の分泌増加や頭皮環境の悪化につながる |
| Ⅱ型 | 前頭部や頭頂部の毛乳頭 | 優性遺伝 | AGA発症を助長し、はげを進行させやすい |
ジヒドロテストステロン（DHT）の役割
DHTは男性ホルモンの中でもとくに強力な作用を持つとされ、高い感受性を持つ人ほど薄毛が進みやすいです。
DHTが毛根に結合すると毛乳頭細胞を退行期へ移行させ、髪の毛の寿命が短くなるため抜け毛が目立ち始めます。
AGAが進行しやすい体質の特徴
- 父親または母方の祖父が薄毛である
- 皮脂量が多く頭皮のべたつきが気になる
- M字部分や生え際が少しずつ後退している
- 頭頂部の毛が細くなり始めている
- 生活習慣が乱れやすく、ストレスを抱えやすい
こうした特徴に当てはまる人はAGAの可能性があり、自分の状態を早めに知ることが大切です。
AGA発症におけるホルモンの流れ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| テストステロン | 男性ホルモンの一種。筋肉増強や体毛発育などに関与する。 |
| 5αリダクターゼ | テストステロンをDHTに変換する酵素。遺伝的に活性度の高い人はAGAを発症しやすい。 |
| DHT（ジヒドロテストステロン） | テストステロンよりも強力な男性ホルモン。毛髪の成長を妨げ、脱毛を促進する。 |
| 男性ホルモン受容体 | DHTが結合する場所。感受性が高いと薄毛になるリスクが上がる。 |
| 脱毛因子 | TGF-βなどの物質が増加し、毛根を退行期に誘導する。 |
はげの原因は遺伝だけではない
薄毛の進行には遺伝子の作用が大きく関わりますが、それだけで決定づけられるわけではありません。生活習慣やメンタル面も重要な要素です。
乱れた生活習慣や慢性的なストレスは男性ホルモンや頭皮環境に悪影響を与えるため、はげる可能性を高めます。
生活習慣が与える影響
健康的な髪の毛の維持には毎日の食事、睡眠、運動が大きな役割を担います。
特に栄養バランスが崩れたり運動不足が続いたりすると血行不良が起こりやすくなり髪の成長に必要な栄養素が届きにくくなります。
喫煙の習慣や大量の飲酒も頭皮や毛根への血流を妨げる要因です。
髪や頭皮に良いとされる栄養素の一例
| 栄養素 | 例 | 髪へのメリット |
|---|---|---|
| タンパク質 | 肉類、魚、大豆製品など | 髪の毛の主成分ケラチンを合成する材料 |
| ビタミンB群 | レバー、卵、緑黄色野菜など | 毛根細胞の代謝をサポートする |
| ビタミンE | アーモンド、アボカドなど | 血行促進や抗酸化作用が期待できる |
| 亜鉛 | 牡蠣、牛肉、ナッツなど | 毛髪の合成過程を補助 |
| 鉄 | 赤身肉、ほうれん草など | 酸素の運搬をスムーズにし頭皮環境を整える |
ストレスがホルモンバランスを乱す
過剰なストレスは交感神経を刺激し続け、血管の収縮や男性ホルモンの分泌過多を招きます。
DHTが増えやすくなり抜け毛の量が増加することもあるため、ストレス解消の工夫が必要です。
精神的ストレスだけでなく睡眠不足なども交感神経を優位にし続ける要因です。
大きなストレスを感じると抜け毛だけでなく頭皮が荒れるなど悪化しやすいです。
誤ったヘアケア
強い洗浄力のシャンプーで頭皮を何度も洗いすぎると皮脂が必要以上に奪われ、逆に皮脂分泌が活発になります。
過度な熱風で髪を乾かすと頭皮の水分が失われ、乾燥や炎症の原因になることもあります。
また、整髪料の洗い残しがあると毛穴が詰まり髪の成長を妨げます。日々のケアは適切な製品選びと正しい方法が重要です。
薬や病気など以外の要因
一部の病気やホルモン治療で使う薬の副作用として抜け毛が進行することがあります。
医療行為の結果として起こる場合もあるため、体質的な不安がある人は医師に相談すると安心です。
生活習慣に関連する注意ポイント
- 長時間の喫煙・飲酒は血行不良を進める
- 食事の偏りは栄養素不足につながる
- 運動不足で頭皮への血流が悪くなる
- 強い紫外線も頭皮へのダメージを大きくする
薄毛を予防・改善する方法
遺伝要因や生活習慣など多角的な要因によって発症するのがAGAです。したがって効果的な予防や対策も複数の面から考えることが必要になります。
早い段階から適切なケアを行うほど髪の毛の状態が維持しやすいです。
ストレスを軽減し心身を整える
定期的に趣味や運動などで体を動かすとストレス発散だけでなく血行や自律神経のバランスが整いやすいです。
睡眠は頭皮環境の改善にも大切なので、なるべく規則正しい生活習慣を心がけましょう。
短時間でも良い睡眠の質を高める工夫が必要です。
睡眠の質を高める工夫
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 光のコントロール | 寝る前にはスマホやPC画面の光を極力控える |
| 温度・湿度 | 部屋を適切な温度（約23℃前後）・湿度（約50～60%）に保つ |
| 音の環境 | 耳栓を使うか静かな場所を確保する |
| 寝具 | 自分に合った枕や敷布団を使い寝姿勢を整える |
栄養バランスに配慮した食生活
肉や魚、大豆製品などタンパク質をしっかり摂りつつ、ビタミンやミネラルを豊富に含む野菜や果物も多く取り入れると髪の成長を助けます。
食生活を見直すと体質そのものが改善しやすくなるため、結果としてAGAの進行を抑えられることがあります。
正しいヘアケアの実践
洗いすぎやこすりすぎを避けるため頭皮を優しくマッサージするイメージでシャンプーするのがポイントです。
自分の頭皮状態に合った製品を選び、トリートメントは髪の毛の中間から毛先を中心につけ、頭皮に残らないように注意します。
ヘアケアで重視したい点
- 自分の頭皮環境に合ったシャンプーを選ぶ
- 爪を立てず指の腹で優しく洗い流す
- タオルドライとドライヤーを上手に使い、過度に髪を傷めない
- 整髪料を使ったらなるべく早くきちんと洗い流す
クリニックでのAGA治療
AGA治療薬には5αリダクターゼの働きを抑制するフィナステリドやデュタステリド、発毛を促すミノキシジルなどがあります。
遺伝要因による薄毛が強い人ほど早期の治療開始が改善効果を得やすいと言われています。
専門医と相談しながら治療薬や育毛剤などを組み合わせるのがおすすめです。
AGA治療で使われる主な薬の例
| 薬剤名 | 作用の仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| フィナステリド | 5αリダクターゼのⅡ型を抑制しDHT生成を減らす | 比較的副作用が少なく継続しやすい |
| デュタステリド | 5αリダクターゼのⅠ型とⅡ型を両方抑制 | 幅広い部位の脱毛に対応できる |
| ミノキシジル | 血管拡張作用で毛根への血流を促し、育毛をサポート | 外用薬・内服薬の形態がある |
クリニックに相談するタイミングと受診の流れ
症状が軽いうちにクリニックを受診して相談し、適切な治療を始めると心配が軽減しやすいです。
AGAの進行度合いは人によって異なるため、早めの受診が将来的な薄毛の状態を良い方向に導く可能性を高めます。
受診のタイミング
- 抜け毛の量が増えたと感じる
- 生え際や前頭部が後退している
- 頭頂部が薄く透けて見える
- 家族（父親や母方の祖父）に薄毛が多いと感じる
いずれかに当てはまる時はAGAクリニックや皮膚科の専門医に意見を聞いてみてください。
クリニック受診の一般的な流れ
- 問診・カウンセリング
現在の症状や家族の薄毛の状況を医師に伝えて原因や治療方針について相談する。 - 頭皮・毛髪の診察
マイクロスコープや視診によって頭皮や髪の毛の状態を詳しくチェックする。 - 必要に応じて血液検査・遺伝子検査
他の病気の可能性や遺伝子的素因を調べる。 - 治療方針の決定
内服薬や外用薬、ヘアケア指導など、個々の状態に合わせた治療法を決める。 - 定期的なフォローアップ
治療の効果や副作用を確認しながら必要に応じて治療内容を調整する。
遺伝子検査の役割
| 項目 | 目的 |
|---|---|
| 検査方法 | 唾液や血液を採取し、AGAに関連する遺伝子の有無や感受性を調べる |
| 検査から得られる情報 | 5αリダクターゼの活性度や男性ホルモン受容体の感受性、遺伝的に見たはげやすさ |
| メリット | 自分の体質を把握したうえで予防・治療計画を立てやすくなる |
| 留意点 | 検査結果が高リスクでも生活習慣の改善や治療で症状を抑えられる可能性あり |
治療費と時間の目安
AGA治療の費用は薬の種類やクリニックの方針などで大きく異なります。
保険適用外になるケースが多いので、初回カウンセリングで料金体系を確認してください。
また、治療効果が出るには数か月以上かかることが一般的です。焦らず定期的に通院しながら状態を見守ることが大切です。
まとめ：遺伝要因を理解し、早めに対策を始める
はげの隔世遺伝は本当なのかという疑問は多くの人が抱えています。
AGAには確かに遺伝要因が深く関わっており、特に母方の祖父からのX染色体の影響が大きいと言われます。
ただし父親から受け継ぐ5αリダクターゼの活性や環境によっても症状が左右されるため、一概に「母方だけ」「父方だけ」と断言はできません。
遺伝による要因が強いと感じる人でも生活習慣の見直しやストレス対策、ヘアケアの改善などを行うことで髪の毛の状態をいい方向へ導く可能性があります。
さらに、AGAクリニックで医師に相談して治療薬や遺伝子検査などを併用する方法も選択肢です。
早めの行動で抜け毛の進行度合いに差がつくため、悩むよりも一度専門家に相談してみるほうが安心につながります。
薄毛と遺伝の大切なポイント
- AGA（男性型脱毛症）の発症は男性ホルモンと5αリダクターゼ、遺伝子の相互作用が主な原因
- 母方の祖父が薄毛だと隔世遺伝の影響でAGAになりやすいと考えられる
- 父親が薄毛の場合は5αリダクターゼの優性遺伝や体質的要因に注意
- ストレスや栄養不足、誤ったヘアケアなどの生活習慣もはげを進行させる
- クリニックでの治療は内服薬や外用薬、遺伝子検査などさまざまな方法がある
- 早めの予防・対策が進行を遅らせ、髪を守るカギになる
以上
参考文献
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