はげから病気を疑うときに知っておきたい脱毛症の症状と対応

髪の毛が抜ける現象を「はげ」と呼ぶことがありますが、実際にはさまざまな原因によって症状が進行する場合があります。

なかには病気との関連が見られることもあり、思っている以上に深刻な状態の可能性があるため油断はできません。

自分は年齢のせいなのか、あるいはホルモンバランスの乱れや免疫の異常なのかと頭部の状態に不安を抱える方も多いでしょう。

本記事では薄毛や脱毛を「病気」の一種として捉える必要性と主な脱毛症の種類や原因、そして対策や医療機関での治療法について詳しく説明します。

薄毛や脱毛は病気なのか

髪の毛が抜ける状況を「はげ」と言うと、加齢による自然現象だと考える人が多いかもしれません。

しかし医師の立場から見ると頭皮や毛髪の状態が大きく変化している背景には男性型脱毛症（AGA）など特定の病名が付けられる脱毛症や、内臓機能の異常などさまざまな病気が関係するケースがあります。　

男性だけでなく女性の患者さんも増えているため、「自分は大丈夫」と思わずに頭皮の状態をきちんと確認することが大切です。

髪の毛と頭皮の基礎知識

髪の毛は毛根部分にある毛包から成長し、数年のサイクルを経て自然に抜け落ちます。

正常な状態でも毎日数十～百本ほどの抜け毛が見られますが、異常な量の抜け毛が続く場合は何らかの原因が潜んでいるかもしれません。

頭皮も皮膚の一部で、炎症や感染症、ホルモンバランスの乱れなどが影響すると毛髪のサイクルが乱れて抜け毛が増えることがあります。

主な毛髪の構造

頭皮環境が乱れると毛包や毛乳頭への血流が滞り、十分な栄養が届かなくなるリスクがあります。

結果として毛髪が細くなったり抜け毛が増えたりして薄毛の症状が目立つようになる可能性があります。

脱毛症とは何か

医学的には明確な原因によって毛が抜けたり生えにくくなったりする状態を「脱毛症」と呼びます。

男性型脱毛症（AGA）は代表的な存在ですが、円形脱毛症や女性型脱毛症（FAGA）なども含まれます。

原因はホルモン、免疫、栄養不足、ストレスなど多岐にわたるため、まずは自分がどのタイプに当てはまるのかを把握することが重要です。

脱毛症の分類

専門の医療機関では頭皮や毛髪の状態をチェックしたうえで、どのような脱毛症が疑われるかを判定します。　

原因がはっきりわかれば適切な対策を取りやすくなります。

生え際が後退する仕組み

男性に多く見られる生え際（前頭部）の後退は男性型脱毛症（AGA）の特徴の一つです。

男性ホルモンの一種であるテストステロンがジヒドロテストステロン（DHT）へ変換され、毛母細胞の働きが抑制されることで頭皮の一部の毛髪の成長が阻害されます。

生え際だけでなく、頭頂部も含めて進行していくことが一般的です。

年齢や遺伝も関係するため若い方でも進行するケースがあり、早期発見・早期治療が望ましいです。

はげが病気の可能性がある理由

若いのに髪の毛が抜けると「体質なのだろう」と放置する人がいます。しかし免疫異常やホルモン異常など、内科的な病気がきっかけで脱毛が進行している可能性も少なくありません。

検査を受けずにセルフケアだけで済ませると改善が遅れてしまい、発症した病気の早期発見が難しくなるおそれがあります。

薄毛は見た目の悩みに留まらず、健康状態のシグナルとして捉えることが必要です。

主な脱毛症の原因と特徴

髪の毛が抜ける「はげ」にはさまざまなタイプがあります。男性型脱毛症（AGA）が有名ですが、円形脱毛症や女性型脱毛症（FAGA）、あるいは皮膚科的な問題やホルモン機能の低下などによって起こるものも存在します。

発症メカニズムや症状が異なるため、原因を絞り込むことが大切です。

男性型脱毛症（AGA）

男性に多い代表的な脱毛症で、主に生え際や頭頂部が薄くなります。

男性ホルモンの代謝産物が毛母細胞に作用し、髪の成長期が短縮しやすいことが原因です。進行性であるため、放置すると徐々に薄毛が目立ちやすくなります。　

年齢を重ねて発症すると思われがちですが、若年層でも発症する事例が多く報告されています。

AGAとFAGAの比較

円形脱毛症

特定の部位が円形または楕円形に抜ける症状で、自己免疫の異常が原因とされています。

単発型から多発型、頭髪の大半が抜ける汎発型など症状の重さにより分類が存在します。

ストレスやアトピー体質が影響するともいわれています。再発も多く、完全に回復する人もいれば、長期的に付き合う必要がある場合もあります。

円形脱毛症のタイプ

円形脱毛症は子どもから大人まで幅広い年齢層に発症します。

免疫細胞が毛根を攻撃していると考えられており、早期の受診が大切です。

女性型脱毛症（FAGA）

男性に比べると進行のスピードは緩やかなものの、頭頂部や分け目部分の髪が全体的に薄くなっていきます。

ホルモンバランスの乱れや出産、加齢による女性ホルモンの減少などが原因となります。

びまん性脱毛症という呼び方をされることもあり、40代以降で顕著になるケースも多いです。

その他の脱毛症

脂漏性脱毛症や粃糠性（ひこう性）脱毛症、牽引性脱毛症なども存在します。

また薬剤性脱毛症は抗がん剤などの強い薬の影響で髪が抜ける状態を指します。

さらに甲状腺の機能異常や膠原病など内臓の病気が原因で抜け毛が増える場合もあるため、単純に「はげ」で済ませずに原因を探ることが重要です。

主な内臓の病気と脱毛の関連

はげが進行する背景とリスク要因

頭皮や毛髪の状態が変化し薄毛や脱毛が目立つようになる背景にはホルモンバランスや生活習慣など複数の要因が複雑に関係しています。

単純な加齢現象だと考えてしまうと、治療のタイミングを逃す場合があるため注意が必要です。

ホルモンバランスと遺伝の関係

男性型脱毛症（AGA）では、男性ホルモンの一部が髪の成長を阻害する形に変化しやすい遺伝子の存在が指摘されています。

一方、女性型脱毛症（FAGA）でも女性ホルモンの分泌量が減ると頭皮環境が変化し、抜け毛が増えることがあります。

家族に薄毛の人が多い場合、遺伝的な要素が関与している可能性を考えたほうがいいでしょう。

頭皮や毛髪が危険信号となるサイン

• 生え際が急激に後退している
• シャンプー時の抜け毛の量が明らかに増えている
• 分け目部分の頭皮が透けて見えやすくなった
• 毛が細くなり、ハリ・コシが感じられない

以上の変化が短期間に起こるときは早めに医師に相談するのが賢明です。

ストレスや免疫異常

ストレスを強く受けると自律神経やホルモンバランスが乱れ、血行不良や免疫の異常が生じるリスクが高まります。

円形脱毛症の大きな要因として心理的ストレスが挙げられることもあり、極度の緊張状態が続くと免疫が毛根を攻撃してしまい、局所的に脱毛が進むケースが見られます。

年齢や生活習慣

年齢を重ねるとホルモン分泌量が変化し、髪の成長スピードが落ちるために抜け毛が増えることがあります。

ただし若い人でも、食生活の乱れや睡眠不足、過度なダイエットなど不適切な生活習慣が続くと髪に必要な栄養が足りず、脱毛が進行する場合があります。

ストレスが増すときの典型的な体の変化

• 食欲の急激な増減
• 寝つきが悪く睡眠時間が短くなる
• 皮膚や頭皮にかゆみや炎症が起こりやすくなる
• 胃腸の不調や消化力の低下

精神的・身体的ストレスは毛髪の発育にも影響するため日常の変化を放置しないことが大切です。

内臓の病気との関連

ホルモンを生成・調節している甲状腺や副腎などの機能が低下すると、頭皮や毛髪への栄養・酸素供給が不十分になり、脱毛が増えることがあります。

鉄欠乏性貧血などで血中のヘモグロビンが低い場合も、毛母細胞へ十分な酸素が行き届かず髪の成長を阻害する恐れがあります。

そのため自覚症状がなくても抜け毛が気になるときは血液検査などを受けたほうが安心です。

治療や対策の基本と医療機関の受診

はげや薄毛を病気としてとらえる際、どの段階で受診するべきか迷う方は少なくありません。

医師の診察や検査を受ければ正確な原因を把握し、状況に合った治療法を選択しやすくなります。

家庭でのセルフケアや生活習慣の改善も大事ですが、進行の程度や年齢などを考慮して医療機関を受診するタイミングを検討してください。

受診するかどうかの判断

毎日の抜け毛が増えたり、生え際や頭頂部の地肌が見えやすくなったりした場合には早めの相談が有益です。

男女を問わず薄毛に悩む患者を対象とするクリニックや皮膚科は多く、専門の医師が原因や症状に合わせて治療を進めます。

ホルモン検査や血液検査を実施できる場合もあるため自己判断に頼らず医療機関のサポートを得るのが望ましいです。

受診のきっかけになる主な症状

• 頭頂部の地肌が日常的に目立つようになった
• 抜け毛が急激に増加している
• 円形の脱毛斑を見つけた
• 肌荒れや炎症が頭皮に生じている
• シャンプーやブラッシングで毛がまとまって抜ける

このような症状に心当たりがある場合、早めの受診を検討してください。

クリニックで行う治療法

AGA専門クリニックなどでは投薬や外用薬のほか、頭皮環境の改善を目的とする施術を行うことがあります。

服用する薬剤には内服薬・外用薬の両方があり、DHTの生成を抑えたり血行を促進したりする作用が期待できます。女性の場合はホルモン補充療法が用いられることもあります。

クリニックでの一般的な検査

薬を用いた治療に加え、頭皮の血行促進や栄養補給を目的としたメソセラピーなども提案される場合があります。

どの治療法にもメリットとリスクがあるため、医師との相談が大切です。

メリットとデメリット(治療法)

自宅でできる頭皮ケア

シャンプーの選び方や洗髪の方法を見直すだけでも頭皮環境は変わります。

アミノ酸系のマイルドな洗浄成分を使ったシャンプーを使い、頭皮を傷めないように丁寧に洗い流すことが大事です。

また、髪を乾かすときは生乾きの状態で放置せず、早めにドライヤーで乾かして雑菌繁殖を防ぎましょう。

頭皮ケアで意識したいこと

• 頭皮を強くこすりすぎない
• 適度な温度のシャワーで毛穴の汚れを落とす
• 洗髪後は速やかにタオルドライとドライヤーで乾かす
• スタイリング剤は頭皮に残らないようにしっかり落とす

適切に頭皮をケアすることで抜け毛やかゆみ、炎症などを減らし、治療をサポートする効果が期待できます。

よくある質問と相談先

「髪が抜けるのは年齢のせいか病気か」「皮膚科とAGA専門クリニックはどちらに行くべきか」など、初めて受診を考える方は迷うかもしれません。

基本的には、まず皮膚科やAGA専門クリニックに相談する人が多いです。女性の場合も同様で、FAGAを扱う専門クリニックも増えています。

治療費の面は保険適用外のケースが多いですが、クリニックによって料金設定や検査内容が異なるため、事前に確認すると安心です。

無料カウンセリングを実施している医療機関もあるので、納得して治療を始めたい方はそのようなサービスを利用してみてください。

悩みを和らげる生活習慣とまとめ

はげや薄毛が気になり始めたとき、日常のライフスタイルを見直すのは大切なアプローチです。

普段の食事や睡眠、ストレス管理などに少し手を加えるだけで毛髪環境が良好に向かう場合があります。

ただし明らかに抜け毛の量が増えている場合や頭皮に異常が見られるときは、医師の判断も必要になるでしょう。

食事と栄養の見直し

髪の主成分はタンパク質（ケラチン）です。良質なタンパク質や各種ビタミン、鉄や亜鉛などのミネラルをバランスよく摂取すると毛母細胞が活性化しやすくなります。

過度なダイエットで極端に栄養が不足すると、抜け毛が急激に増えるリスクが高まります。

食事に取り入れたい栄養素

栄養状態が良ければ、頭皮や毛髪だけでなく全身の健康状態も向上しやすくなります。サプリメントに頼りきりになる前に食事内容を再確認することが大切です。

頭皮環境を整える日常ケア

喫煙や大量飲酒は血行不良を招き、頭皮への栄養供給を阻害します。　

また過度な紫外線を浴びると頭皮にダメージが蓄積し、抜け毛の原因にもなります。外出時は帽子や日傘で頭皮を保護し、帰宅後はしっかり洗髪して汚れを落とすことが望ましいです。

生活習慣の注意点

• タバコの本数を減らす、あるいは禁煙を検討する
• アルコールは適量を意識する
• 強い紫外線を避けるために帽子を活用する
• 適度な運動を取り入れ、血行を促進する

これらの習慣を続けていくと体全体の調子が良くなるだけでなく、抜け毛の進行を抑える効果が期待できます。

ストレス対策の方法

ストレスはホルモンや免疫に大きく影響し、円形脱毛症の発症にも関係しています。

適度にリラックスできる時間を確保して運動や趣味を通じて身体・精神のバランスを保つことが大切です。

仕事や人間関係でストレスが増していると感じるときは周囲に相談して環境を変えたり、専門のカウンセリングを利用したりすることを検討してください。　

受けると役立つサポート

まとめ

抜け毛や薄毛を放置すると、悩みはさらに深刻化する場合があります。

男性型脱毛症（AGA）や女性型脱毛症（FAGA）のように進行性の病気もあり、早めに医師の診断を受けるメリットは大きいです。

生活習慣の改善やストレス管理、そして専門クリニックでの治療や検査を組み合わせれば抜け毛の増加を抑えたり薄毛の進行を遅らせたりできる可能性が高まります。

自分の髪の状態に気づいたときが行動のタイミングです。少しでも気になる変化を感じたら、勇気を出して相談してみることをおすすめします。

以上

参考文献

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