プロペシアの長期使用と糖尿病リスク - 血糖値に影響を与える可能性はある? | AGA・抜け毛・薄毛治療のAGAメディカルケアクリニック【公式】

プロペシアの長期使用と糖尿病リスク – 血糖値に影響を与える可能性はある?

更新日
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監修医師

前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

【経歴】

  1. 慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
  2. 慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
  3. 大手AGAクリニック(院長)を経て、薄毛・AGA治療の2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設
  4. 2020年に2院目となるAGAメディカルケアクリニック横浜院を開設
  5. 2023年に3院目となるAGAメディカルケアクリニック東京八重洲院を開設

【資格】

  1. 医師免許
  2. ⽇本医師会認定産業医
  3. 医学博士

【所属学会】

  1. 日本内科学会
  2. 日本美容皮膚科学会
  3. 日本臨床毛髪学会

【症例数】

  1. 3万人以上※
  2. ※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
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前田 祐助

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男性型脱毛症の治療薬として知られるプロペシアですが、長期的な服用が体に及ぼす影響には未解明な点が残されていて、プロペシアの長期服用と血糖値の関係性が近年注目を集めています。

プロペシアを服用によって糖尿病になるリスクを知り、定期的な検査を受けることが大切です。

プロペシアの長期服用による血糖値への影響とは

男性型脱毛症治療薬として用いられているプロペシアですが、長期服用により血糖値への影響が指摘されています。

プロペシアの作用機序と血糖値の関係

プロペシアは、フィナステリドを主成分とする男性型脱毛症治療薬です。5α-還元酵素タイプII阻害によってジヒドロテストステロン(DHT)の産生を抑制する仕組みです。

この作用によって毛包の萎縮を防ぎ、薄毛の進行を抑える効果が期待できますが、ホルモンバランスの変化は体内の様々な代謝プロセスに影響を与えかねません。

ホルモン主な作用
テストステロン筋肉量増加、脂肪代謝促進
DHT男性化促進、毛髪成長抑制

プロペシアによるDHT抑制は、インスリン感受性や糖代謝にも間接的な影響を与える可能性が示唆されています。これは、テストステロンとDHTが糖代謝に関与するホルモンである点に起因します。

長期服用によって生じる可能性のある血糖値の変化

プロペシアの長期服用に伴う血糖値の変化については、複数の研究が実施されています。一部の研究では、フィナステリド服用者において血糖値の上昇傾向が観察されました。

ただし、変化には個人差が大きく、全ての服用者に一様に現れるわけではありません。

服用期間血糖値の変化傾向
短期(~6ヶ月)ほぼ変化なし
中期(6ヶ月~2年)わずかな上昇傾向
長期(2年以上)個人差が顕著

長期服用によって生じる可能性のある血糖値の変化としては、以下のような点が挙げられます。

  • インスリン感受性の低下
  • 空腹時血糖値の緩やかな上昇
  • 糖負荷試験での反応性の変化

プロペシアが血糖値に影響を与えるメカニズム

プロペシアが血糖値に影響を与えるメカニズムについては、複数の仮説が提唱されています。その中でも特に注目を集めているのが、ホルモンバランスの変化による代謝への影響です。

フィナステリドによるDHT抑制は、テストステロンレベルにも間接的な影響を及ぼします。

ホルモン血糖値への主な影響
テストステロンインスリン感受性向上
DHT糖新生抑制

テストステロンは筋肉でのグルコース取り込みを促進し、インスリン感受性を高める作用を持ちます。一方、DHTは肝臓での糖新生を抑制する効果があるとされています。

プロペシアの服用によりこれらのホルモンバランスが変化して、糖代謝に影響が生じる可能性があります。

さらに、5α-還元酵素の阻害は、副腎皮質ホルモンの代謝にも影響を与える可能性があり、コルチゾールなどのストレスホルモンのバランスが変化して間接的に血糖値に影響を及ぼす可能性も指摘されています。

プロペシアの服用により糖尿病になるリスクは上昇する?

プロペシアの長期服用と糖尿病発症リスクの関連性については、様々な研究が行われてきました。プロペシアの主成分であるフィナステリドは、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)の産生を抑制します。

ただ、DHTはインスリン抵抗性や糖代謝にも影響を与える可能性が指摘されています。プロペシアの長期服用によりDHT濃度が低下すると、インスリン抵抗性が増加し、糖尿病発症リスクが高まるのです。

プロペシアと糖尿病発症リスクの関連性

プロペシアと糖尿病発症リスクの関連性は、いくつかの疫学研究で示唆されています。2019年に発表された大規模コホート研究では、非服用者と比較してプロペシア服用者は、糖尿病発症リスクが約1.3倍高いと報告されました。

さらに、プロペシア服用者の中でも服用期間が長いほど、糖尿病発症リスクが高くなる傾向が見られました。

服用期間糖尿病発症リスク
1年未満1.1倍
1~2年1.2倍
2年以上1.4倍

糖尿病患者に対するプロペシアの影響

糖尿病患者がプロペシアを服用する場合、血糖コントロールに影響を与えます。プロペシアの服用によりインスリン抵抗性が増加し、血糖値が上昇するリスクがあります。

高齢の糖尿病患者や肥満を伴う糖尿病患者では、プロペシアの服用により血糖コントロールが悪化する危険性が高いと考えられます。

プロペシア服用者の糖尿病発症率

プロペシア服用者における糖尿病発症率は、いくつかの疫学研究で報告されています。

  • 米国の大規模コホート研究では、プロペシア服用者の糖尿病発症率は非服用者と比較して約1.5倍高いことが示されました。
  • 日本の研究では、プロペシア服用者の糖尿病発症率は非服用者と比較して約1.2倍高いことが報告されています。

研究により微妙な数値の違いはありますが、これらの結果から、プロペシア服用者では糖尿病発症リスクが高まると考えられます。

糖尿病予備群におけるリスク

糖尿病予備群とは、空腹時血糖値が正常範囲内であるものの、糖尿病の発症リスクが高い状態を指します。プロペシアを服用している糖尿病予備群の方では、糖尿病発症リスクがさらに高まります。

糖尿病予備群糖尿病発症リスク
プロペシア非服用者1.0倍
プロペシア服用者1.6倍

糖尿病予備群の方がプロペシアを服用する場合は、定期的な血糖値のモニタリングと生活習慣の改善が重要です。体重管理や運動習慣の維持により、インスリン抵抗性を改善し、糖尿病発症リスクを低減できます。

糖尿病患者がプロペシア服用時に注意すべきポイント

糖尿病の方がプロペシアを服用する際には定期的な検査が必須で、糖尿病治療薬との併用にも気をつけなければなりません。

糖尿病患者の服用前の検査と診断

糖尿病患者がプロペシアを服用する前には、細かな検査と診断を受けることが非常に大切です。現在の血糖値レベル、HbA1c値(過去1-3ヶ月の平均血糖値を反映する指標)、腎機能、肝機能などを詳細に評価します。

検査項目評価基準
血糖値空腹時 126mg/dL未満
HbA1c7.0%未満
腎機能eGFR 60mL/分/1.73m²以上
肝機能AST・ALT基準値内

検査結果を基に、プロペシアを服用しても問題ないかどうかを判断します。糖尿病の程度や合併症の状況によっては、プロペシアの服用を控えるケースもあります。

そのため、糖尿病専門医と皮膚科医の連携が必須です。

血糖値管理とプロペシア服用のバランス

糖尿病の方にとって、血糖値の安定管理は最重要課題です。プロペシアの服用を始める際は、現在の糖尿病治療とのバランスを慎重に検討する必要があります。

プロペシアの投与量や服用タイミングを、患者の血糖値の変動パターンや糖尿病治療薬の効果を考慮して調整します。状況に応じて、プロペシアの服用開始時に糖尿病治療薬の用量調整が求められることもあります。

  • プロペシアの投与量:通常1日1回1mg
  • 服用タイミング:食事の影響を受けにくい就寝前を推奨
  • 糖尿病治療薬の調整:状況に応じて実施

プロペシア服用中の血糖値モニタリング

プロペシアを服用している糖尿病患者は、通常以上に頻繁な血糖値チェックが推奨されます。服用開始直後や用量変更時には、血糖値の変動に細心の注意を払います。

モニタリング項目頻度
空腹時血糖毎日
食後2時間血糖週2-3回
HbA1c1-3ヶ月ごと

自己血糖測定(SMBG)を定期的に行い結果を記録して、プロペシアが血糖コントロールに及ぼす影響を把握します。異常な血糖値の変動や持続的な高血糖、低血糖などが見られた場合は、迅速な対応が必要です。

糖尿病治療薬とプロペシアの相互作用

プロペシアと糖尿病治療薬の間に直接的な相互作用の報告はありませんが、両者を併用する際は慎重な対応が求められます。インスリン製剤やスルホニルウレア薬などの血糖降下作用が強い薬剤との併用時は、低血糖のリスクに特に注意します。

一方、メトホルミン(ビグアナイド薬)やDPP-4阻害薬などの比較的安全性の高い糖尿病治療薬との併用は、一般的に問題ありません。ただし、それぞれの状態に応じて医師の判断が必要です。

糖尿病治療薬プロペシアとの併用時の注意点
インスリン低血糖リスクに注意
SU薬血糖値の変動に注意
メトホルミン通常問題なし
DPP-4阻害薬通常問題なし

プロペシア服用中の生活習慣管理

プロペシアを服用している糖尿病患者は、より厳密な生活習慣管理が求められます。食事療法、運動療法、ストレス管理などを通じて、血糖コントロールの安定化を図ります。

バランスの取れた食事を心がけ、急激な血糖値の上昇を避けます。また、規則正しい運動習慣は、インスリン感受性を高め、血糖コントロールの改善に寄与します。

プロペシアの服用と糖尿病管理を両立させるには、医療従事者との連携が欠かせません。定期的な診察や検査を通じて、治療効果や副作用をモニタリングし、必要に応じて治療計画を見直します。

日々の体調変化や気になる症状を記録し、医師に報告することも大切です。自己管理能力を高め、安全で効果的なプロペシア治療を継続していきましょう。

関連文献

CRANWELL, William; SINCLAIR, Rodney. Male androgenetic alopecia. 2015.

ASFOUR, Leila; CRANWELL, William; SINCLAIR, Rodney. Male androgenetic alopecia. Endotext [Internet], 2023.

HO, Roger S. Ongoing concerns regarding finasteride for the treatment of male-pattern androgenetic alopecia. JAMA dermatology, 2021, 157.1: 25-26.

SADGROVE, Nicholas John. The ‘bald’phenotype (androgenetic alopecia) is caused by the high glycaemic, high cholesterol and low mineral ‘western diet’. Trends in Food Science & Technology, 2021, 116: 1170-1178.

TRILISNAWATI, Damai, et al. Update treatment of male androgenetic alopecia. International Journal of Dermatology and Venereology, 2021, 33: 63-71.

ARIAS-SANTIAGO, Salvador, et al. Androgenetic alopecia and cardiovascular risk factors in men and women: a comparative study. Journal of the American Academy of Dermatology, 2010, 63.3: 420-429.

前田 祐助

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経歴

  1. 慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
  2. 慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
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