【妊活中の方必読】フィナステリドが妊活・子作りに与える影響

AGAの患者様から「妊活中にフィナステリドを服用してもよいか？」とご質問をいただくことがあります。

フィナステリドは安全性が確認されている薬ですが、妊活中となると妊娠や赤ちゃんへの影響が気になるものです。

結論から言うと、フィナステリドは妊活中も服用できます。ただし、いくつか注意しなければいけないことがあります。

本記事では、フィナステリドが妊活や子作りに与える影響をわかりやすくまとめました。男性・女性それぞれの注意点も解説するので、妊娠を希望する方は最後までお読みください。

フィナステリドは妊活中も服用できる

AGA治療薬の一つであるフィナステリドは、妊活中でも使用できる薬です。

精液中に溶け込むフィナステリド量はごくわずかで、妊娠には影響がないと考えられています。

精液から女性の身体に影響を及ぼす薬はほんの一部で、そこにフィナステリドは含まれません。したがって、妊活中もフィナステリドによるAGA治療は継続できます。

フィナステリド服用中の懸念点は「男性機能の低下」

フィナステリドは妊娠に影響を与えないとお伝えしましたが、一つ留意すべきこともあります。

それは、フィナステリドの副作用の一つに「男性機能の低下」がある点です。男性機能の低下には性欲減退や勃起機能不全（ED）、精液量の減少などがあげられます。

1〜5％の割合で性欲減退の副作用が報告されている

フィナステリドにはいくつかの副作用が報告されていますが、そのうち発現率が1〜5％ともっとも高いのが性欲減退です。

妊娠を成功させるには、排卵に合わせて夫婦生活を持つ必要があります。いわゆる「タイミング法」と呼ばれるもので、男性は女性の排卵日に合わせてコンディションを整えることが大切です。

フィナステリドの服用によって性欲減退の副作用が現れれば、そのタイミングで性交渉をするのが難しくなるかもしれません。

1％未満の割合でED・精液量減少の副作用が報告されている

もう一つ、フィナステリドの副作用には勃起機能不全（ED）や精液量の減少も報告されています。

これらの副作用は発現率1％未満とごくまれです。しかし、仮に副作用でEDになると満足な性行為が行えない状態となります。また、精液量が減ってしまうことも妊活中は大きな不安材料となるでしょう。

過去の研究では、フィナステリドの服用を中止した後で精子の質が改善したとの報告があります。

フィナステリドには男性機能の低下以外の副作用もありますが、いずれも服用を中止すれば自然消失することがわかっています。

性欲や勃起力に不安がある方は、妊活中のAGA治療を一時的に中止するのも一つの方法です。AGA治療期間中の妊活について、不明点があれば医師に相談することをおすすめします。

参照
フィナステリド錠 0.2mg「FCI」フィナステリド錠 1mg「FCI」添付文書

要注意！妊活中・妊娠中の女性はフィナステリドに触れてはいけない

フィナステリドの有効性・安全性は男性のみに確認されており、女性が使用することは認められていません。

薄毛予防のために服用することはもちろん、薬に触れることもNGです。（フィナステリドの主成分は皮膚からも吸収されます）

そもそもフィナステリドは、薄毛の原因となる男性ホルモン（ジヒドロテストステロン）を阻害する薬です。

男性ホルモンは女性の体内にも存在しますが、その量は男性の約1/10と微量であり、薬の作用によってホルモンバランスが乱れる恐れがあるからです。

また、ジヒドロテストステロンは男性の生殖器の形成という重要な役割を担います。妊娠中の女性が服用すると、男性胎児の生殖器に悪影響を及ぼす可能性があります。

以上の理由から、女性がフィナステリドに触れないよう取り扱いには十分な注意が必要です。

フィナステリドと胎児奇形の関係

フィナステリドの成分が精液に溶け込む量はごくわずか（投与量の 0.00076%以下）であるため、胎児に影響を与えるとは考えにくいです。

一方で、奇形や障害をもつ子供が生まれる確率をフィナステリドに限定して調査するのは難しいという側面もあります。現時点では、可能性は極めて低いものの、決して障害が生じないと断言することはできないと説明するにとどまります。

フィナステリドの先発薬であるプロペシアが日本で初承認された時、奇形や障害を懸念する方がいました。

AGA治療を希望する方の年代は、結婚や妊娠を検討するタイミングと重なります。実際に「奇形児が生まれた事例はあるか」「ダウン症との関連は？」といったお問い合わせをいただくことがあります。

妊活中の服薬について少しでも気になる点があるならば、パートナーとよく相談し今後の治療方針を検討するのが望ましいでしょう。

その他AGA治療薬が妊活・子作りに与える影響

ここからは、フィナステリド以外のAGA治療薬が妊活・子作りに与える影響を解説します。

ザガーロ（デュタステリド）の場合

フィナステリドと同様、デュタステリドの服用によって妊娠に影響を与えることはないと考えられています。

以下のデータは、海外の臨床試験でデュタステリドによる精子数や精液量の変化についてまとめたものです。

精液特性	数値
総精子数	23％減
精液量	26％減
精子運動率	18％減

臨床的に影響があると評価される数値は30％であり、上記の特性はどれも30％を下回っていることがわかります。

以上の理由から、デュタステリドが精液特性に影響を与えることはなく、妊活や子作りも行えると判断できます。

もっとも、デュタステリドにも男性機能の低下という副作用があり、服薬によって性欲減退や勃起機能不全（ED）の可能性があることは知っておく必要があるでしょう。

参考
デュタステリドカプセル0.5mgAV「日医工」添付文書

ミノキシジルの場合

ミノキシジルには頭皮に直接塗布する外用薬と、錠剤タイプの内服薬があります。

男性が使用する分に関しては、外用薬と内服薬のどちらも妊娠には影響がないと考えられています。フィナステリドやデュタステリドのように、性欲減退や勃起機能不全（ED）の副作用も報告されていません。

ミノキシジルは女性も使用できる薬であり、患者様が希望すればミノキシジルを処方してもらうことも市販の発毛剤を購入することも可能です。

ただし、女性がミノキシジルを使用できるのは20歳以上であることが条件となります。また、妊活中および妊娠中・授乳中はミノキシジルを使用することができません。

妊娠中または授乳中は、ミノキシジルに限らず薬の使用についても特別な注意が必要です。

参考
厚生労働省「妊娠と薬」
女性薬 ミノキシジル配合外用液1％「FCI」添付文書

妊活中は通販・個人輸入の医薬品は使用すべきでない

近年、フィナステリドをはじめとする薄毛治療薬を販売する通販サイトが問題視されています。

通販や個人輸入には、医療機関よりも安く医薬品が購入できるメリットがあると考える方がいるようです。しかし、出所のわからない医薬品には偽造薬が含まれることもあり、重大な健康被害が生じる恐れがあります。

日本には、医薬品の副作用で重大な健康被害が生じた場合に医療費や年金などの給付が受けられる「医薬品副作用被害救済制度」があります。

しかし、通販や個人輸入などで入手した未承認薬による副作用は制度の対象外です。

妊娠を希望するのであれば、パートナー同士が共に健康でなければなりません。健康被害の恐れがある医薬品はあまりにリスクが高すぎるので、適切でない方法でフィナステリドを購入することはやめてください。

参考
厚生労働省「医薬品等の個人輸入について」
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「医薬品副作用被害救済制度」

妊活中のフィナステリド服用に不安がある方は医師に相談を

フィナステリドは安全性・有効性が証明されているAGA治療薬です。

子供を希望する男性が服用することに問題はないとされていますが、不安要素を取り除く目的で休薬を検討する方もいます。

妊娠に関することはパートナーとよく話し合い、互いに納得できる方法を選ぶことが大切です。フィナステリドと妊活について不安がある方は、お気軽に当院までご相談ください。