
「抜け毛の量が増えているように感じる」
「分け目部分の薄毛が目立つようになった」
このような変化を感じる場合、なんらかの原因で薄毛が進行している可能性が高いです。
女性の薄毛症状はFAGA(女性男性型脱毛症)やFPHL(女性型脱毛症)と呼ばれ、近年は薄毛の悩みをもつ女性が増加傾向にあります。このことから女性向けの薄毛治療や育毛アイテムの需要も高まりつつあります。
女性の薄毛は、適切に対処すれば症状の改善が見込めます。以前のようなボリュームを取り戻す可能性もあるため、諦めず対策を講じることが大切です。
この記事では、女性の薄毛の原因や対処法についてわかりやすく解説していきます。
なお、当院は男性専門のAGAクリニックのため、女性の薄毛治療はおこなっておりません。お近くの提携院をご紹介しておりますので、お気軽にご相談ください。
前田 祐助
AGAメディカルケアクリニック 統括院長
【経歴】
- 慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
- 慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
- 大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

女性の薄毛は改善できる|薄毛の原因を特定し正しく対処することが大切

薄毛=男性特有のものというイメージがありますが、世の中には薄毛に悩む女性が大勢いらっしゃいます。
女性の薄毛自体は決して珍しいものではないので、「女性なのになぜ」と悲観する必要はありません。また、女性の薄毛は改善できるので、一生治らないのでは?という不安をお持ちの方もご安心ください。
女性の薄毛を改善するには、まず薄毛の原因を特定することが大切です。原因が判明すれば対処法も導き出せるので、適切な方法で症状の改善を目指していきましょう。
FAGAの症状|細い髪が増え全体のボリュームが少なくなる

女性の薄毛(FAGA)には以下の症状が見られます。
- 頭髪全体のボリュームが少ない
- 細くて短い毛が多い
- 頭皮が透けて見える
前頭部や頭頂部の薄毛が顕著である男性型脱毛症(AGA)とは異なり、FAGAは全体のボリュームが少なくなることが特徴です。薄毛の広がり方によって、ルードウィッグ型・クリスマスツリー型・ハミルトン型の3つに分類されます。
ルードウィッグ型 | 頭頂部から後頭部にかけて薄毛がびまん性に広がる。日本人女性にもっとも多い。 |
クリスマスツリー型(オルセン型) | 頭頂部から生え際にかけてクリスマスツリー状に薄毛が広がる。 |
ハミルトン型 | 生え際に剃り込みが入ったように薄毛が進行する。 |
FAGAの発症にはホルモンバランスや環境的要因が深く関係します。
本来、女性の毛髪は4〜6年の歳月をかけて成長しますが、ヘアサイクルが乱れた頭皮環境における成長期は1年ほどと極端に短くなります。わずか1年では十分な太さと長さを保てず、ほぼ産毛の状態で抜け落ちてしまうのです。
FAGAとFPHLの違い
FAGAとFPHLは、女性の薄毛という点ではどちらも同じ意味をもつ言葉です。
女性の薄毛はこれまで、AGAと同じ原因で発症するものと考えられていました。Female(女性)の頭文字を加えてFAGAと称し、男性と女性の区別をしていたのです。
ところが、研究が進むにつれ女性と男性の薄毛は根本的な原因や症状が異なることが明らかになってきました。このことから、女性の薄毛の総称をFPHL(Female Pattern Hair Loss)と表現する動きが見られるようになったのです。
FPHLは2017年に日本皮膚科学会のガイドラインではじめて発表された新しい言葉です。FAGAがホルモンという限定的な理由で発症するのに対し、FPHLはホルモンをはじめさまざまな原因によって起こる薄毛であると理解してください。
女性の薄毛で考えられる5つの原因

男性のAGAと比べて、女性の薄毛は実にさまざまな原因が考えられます。
具体的には、
- ホルモンバランス
- 過度なダイエット
- 生活習慣
- ヘアケア・ヘアスタイル
- ストレス
などがあり、薄毛の原因によって対処法も異なります。
自分の薄毛がどの原因によって引き起こされているかを知るため、ここからはぞれぞれの原因について詳しく解説していきます。
原因①ホルモンバランス
男性と同様、女性の薄毛もホルモンの影響を大きく受けます。
女性の身体には、エストロゲンという女性ホルモンが存在します。エストロゲンは肌や骨、髪の毛の健康を保つ役割があり、女性らしい身体をつくるのに欠かせないホルモンです。
エストロゲンの分泌量は20〜30代前半でピークを迎え、40代から更年期にかけては急速に減少します。髪の健康はエストロゲンによって保たれているので、ホルモン分泌量の減少にともない髪が細くなったり抜け毛が増加してしまうのです。
とくに妊娠や出産、閉経のタイミングではホルモンバランスが大きく変化するので、産後や閉経後に薄毛で悩む女性は非常に多いです。産後の抜け毛は時間とともに落ち着くことがほとんどですが、年齢による薄毛は放置しても改善されることはありません。
原因②過度なダイエット
無理な食事制限を続けると、髪の成長に必要な栄養が不足し薄毛を悪化させることがあります。
毛髪は食事から摂取した栄養をもとにつくられるので、食事量が減るとその分だけ髪に振り分けられる栄養が少なくなります。
さらに、優先順位が高い生命維持に栄養が消費されると髪への割り当てはなくなり、栄養不足となった髪は細くなったり抜けやすくなってしまうのです。
原因③生活習慣
喫煙や過度な飲酒、睡眠不足などの生活習慣もまた薄毛の原因の一つです。
タバコに含まれるニコチンには毛細血管を収縮させるはたらきがあります。髪の成長に必要な栄養は血液によって頭皮へと運ばれるので、喫煙で血行不良が生じると育毛に悪影響を与えます。
過度な飲酒で懸念されるのは、アルコールの分解に多くの栄養が消費されてしまうことです。髪の成長に使われる栄養が不足すれば、髪が痩せたり抜け毛が増える原因となります。
また、睡眠時間が極端に少ない方も注意が必要です。睡眠不足は成長ホルモンの分泌量を減少させ、毛母細胞や髪のタンパク質量を増やすIGF-1(インスリン様成長因子1)の生成を妨げます。
原因④ヘアケア・ヘアスタイル
女性は男性と比べてヘアカラーやパーマの機会が多い傾向にあります。
さらにドライヤーやアイロンの使用時間が長くなれば、その分髪や頭皮に与えるダメージも大きくなります。髪を同じスタイルで結ぶ習慣のある方も、髪が引っ張られる力で抜け毛が増えやすくなることがあります。
また、頭皮を清潔に保とうと1日2回以上シャンプーするのも基本的にはNGです。洗い過ぎは乾燥の原因となるだけでなく、皮脂の過剰分泌を招く恐れもあります。
女性は美容目的でのヘアケアが多くなりますが、髪や頭皮の負担にならないお手入れを心がけたいところです。
原因⑤ストレス
血行不良が原因の薄毛という意味では、過度なストレスにも注意が必要です。
ヒトの身体はストレスを感じると、自律神経が乱れて交感神経が優位に立ちます。交感神経が活発になると血管収縮が起こり、血液循環が悪くなります。
血液循環の悪化は、すなわち髪の成長に必要な栄養や酸素が不足するのと同じことです。また、ストレスによるホルモンバランスの乱れもまた薄毛を悪化させる原因の一つです。
日頃からストレスを感じることが多く抜け毛の量も増加傾向にある方は、できるだけ早く対策を講じるべきといえるでしょう。
女性の薄毛に多く見られる4つの特徴

女性の薄毛を大きく分類すると以下4つのタイプに分けられます。
タイプ | 特徴 |
---|---|
①びまん性脱毛症 | ・1本1本の髪が細くなり全体のボリュームが減っていく ・分け目が目立ったり地肌が透けて見えることが多い |
②分娩後脱毛症 | ・産後2〜3ヶ月をピークに抜け毛本数が増える ・ホルモンバランスの変化によるもので、産後半年〜1年ほどで徐々に回復する |
③円形脱毛症 | ・頭髪の一部が円形に脱毛する ・ストレスやアトピー、アレルギーが原因で発症することが多く、一度に複数箇所の脱毛が見られることもある |
④牽引性脱毛症 | ・髪が引っ張られることで頭皮に負担がかかり、血行不良によって力がかかる部分だけ抜け毛が増えやすくなる ・切れ毛や枝毛も増加する |
薄毛の改善を目指すには、自分の症状がどのタイプに当てはまるかを知ることからはじめましょう。
びまん性脱毛症
びまん性脱毛症は、加齢や生活習慣、ストレスなどが原因で生じるものです。甲状腺機能の異常で発症することもあり、髪全体が細く薄くなるのが特徴です。
分娩後脱毛症
分娩後脱毛症はいわゆる産後はげのことで、出産経験のある女性の半数近くが経験すると言われています。抜け毛本数は一時的に急増しますが、時間とともに落ち着くのでこれといった治療は行われません。
円形脱毛症
円形脱毛症はなんらかの原因で自己免疫の機能が低下し、毛包がリンパ球に攻撃・破壊されることで生じるものと考えられています。なぜこのような症状が起きるのか、詳しい原因はまだ明らかになっていません。
牽引性脱毛症
牽引性脱毛症は、ポニーテールなどいつも同じ髪型にする方に多く見られます。毎日髪を結ぶという点でいえば中高生にも起こりうる脱毛症です。
女性の薄毛対策に有効な4つの方法

薄毛の原因がわかったところで、次はいよいよ薄毛改善に有効な対策をチェックしていきましょう。
女性の薄毛対策で効果が認められるのは以下4つの方法です。
- 薄毛治療
- 生活習慣の見直し
- 適切なヘアケア
- ストレス解消
ここからはそれぞれの方法についてより詳しく解説していきます。
方法①薄毛治療
抜け毛や薄毛改善でもっとも効果的な方法が、専門のクリニックで受けられる女性向けの薄毛治療(FAGA治療)です。
FAGA治療は、内服薬と外用薬による投薬治療が基本です。内服薬は1日1回、外用薬は1日2回の使用を継続し、治療開始3ヶ月〜半年ほどで髪の太さや毛量に変化が見られます。
薬を継続することで薄毛予防と発毛効果も持続できますので、確実かつ効率的な対策といえるでしょう。
方法②生活習慣の見直し
食事や睡眠、喫煙など生活習慣に問題がある場合は、まず日々の生活スタイルを見直すことからはじめてください。
食事面で薄毛対策をするなら、育毛効果の高い栄養素を積極的に取り入れましょう。具体的には、髪の基礎となるタンパク質やケラチンの合成に必要な亜鉛を多く含むメニューがおすすめです。
お酒は適量であれば問題ありませんが、深酒や寝酒が多い方は1日の飲酒量や休肝日などのルール決めをしてください。睡眠については毎日同じ時間に入眠し、まとまった睡眠時間を確保することで成長ホルモンの分泌と循環を高められます。
喫煙者はできれば禁煙を目指すのが望ましいです。とはいえ禁煙が強いストレスとなっては元も子もないので、まずは減煙からスタートし無理のない範囲で生活習慣を見直していきましょう。
方法③適切なヘアケア
適切なヘアケアで頭皮環境を整えることは、抜け毛や薄毛の予防につながります。
シャンプーや育毛剤を取り入れたり、頭皮マッサージをするなどして髪の成長をサポートする育毛力を高めていきましょう。
ヘアカラーやパーマは頻度が高いと頭皮や髪に負担をかけるので、多くても月に1回までとすることをおすすめします。
方法④ストレス解消
ストレスが薄毛の原因となっているならば、ストレスの原因を根本から解消するのが理想です。
難しい場合は自分なりのストレス解消法を見つけ、自分の時間を楽しむことに専念してみてください。趣味に没頭したり体を動かしてみると、意外と気分はすっきりするものです。
ストレスは薄毛のみならず心身の健康に悪影響を与えるので、不安な気持ちは抱え込まず身近な人に相談してみるのもいいかもしれません。
女性の薄毛治療の効果と起こりうる副作用

女性の薄毛改善にはFAGA治療が有効であるとお伝えしましたが、実際の効果や副作用のリスクも気になる部分かと思います。
薬の種類や効果、起こりうる副作用を以下にまとめていますので、薄毛治療を検討されている方は参考にしてください。
治療法 | 薬の種類 | 効果 | 副作用 |
---|---|---|---|
内服薬 | スピロノラクトン | 男性ホルモンの抑制作用によって抜け毛を予防する | 頻尿、口や喉の乾き、低血圧、生理不順、乳房痛など |
内服薬 | ミノキシジルタブレット | 毛母細胞を増殖させ発毛を促進する | 初期脱毛、動悸、倦怠感など |
外用薬 | ミノキシジル | 毛母細胞を増殖させ発毛を促進する | 発疹、赤み、かゆみなど |
注入治療 | 成長因子やミノキシジルを含む薬液 | 細胞の再生力を高めて発毛を促進する | 点状出血 |
ここからはそれぞれの治療法についてより詳しく説明していきます。
内服薬の効果と副作用
FAGA治療で処方される内服薬は、大きく2つの種類に分けられます。
- 抜け毛や薄毛の進行を予防する「スピロノラクトン」
- 発毛を促す「ミノキシジルタブレット」
攻めと守りどちらの薬を処方するかは、薄毛の状態や患者様の目標を確認した上で医師が判断します。両方の薬を併用すればより高い治療効果が期待できるので、重症化した患者様は内服薬を併用する方が多いです。
服用開始から早くて3ヶ月、平均では6ヶ月頃から治療効果が見られるようになります。
スピロノラクトンはもともと心不全や高血圧の治療に使われてきた薬なので、副作用として低血圧によるふらつきが報告されています。このほか、頻尿や生理不順などの副作用が認められることがあるので、体調の変化が見られた時はすぐに担当医へ相談してください。
ミノキシジルももとは血圧降下剤として使われたきた薬で、服用者に多毛の症状が見られたことが転じて薄毛治療薬として使われるようになりました。
どちらの薬も最初は低用量からスタートし、体調や毛髪の状態を見ながら処方量を調整していきます。
外用薬の効果と副作用
内服薬と同じ成分が含まれるミノキシジルは、外用薬としても優れた発毛効果を発揮します。
日本皮膚科学会のガイドラインによると、ミノキシジル外用薬での薄毛治療の効果は最高ランクAと評価されています。(引用:日本皮膚科学会ガイドライン)
薄毛治療は男性と女性で服用できる薬が異なりますが、ミノキシジルは男女ともに使用できる唯一の発毛薬です。
肌が弱い方が塗布するとかゆみや赤み、発疹などの副作用が見られることがあります。塗布後に違和感があればすみやかに使用を中止し、必ず担当医へ相談してください。
注入治療(メソセラピー)の効果と副作用
注入治療は成長因子を頭皮に直接注入し、髪の成長を促す治療法です。
薄毛治療は内服薬と外用薬をベースに進めますが、注入治療を加えることで治療効果を実感できるまでの時間が短縮できます。注入する薬液は人体に害のない成分なので、副作用が起こりにくいのが大きな特徴です。
薬液は注射器で注入するので注入部位に点状出血が見られることがありますが、数日で消失するのでご安心ください。
女性の薄毛にまつわるよくある質問

最後は女性の薄毛について多く寄せられるご質問にお答えしていきます。
女性の薄毛治療はどのくらいで効果があらわれますか?
FAGA治療の効果は早い方で3ヶ月頃から、平均では6ヶ月ほどで毛髪に変化が見られるようになります。
早くから治療を開始された方は比較的早く効果を実感できますが、重症化した方では毛量が増えるまでに1年ほどかかることがあります。
昔からの薄毛は治せますか?
生まれつき髪質が細い、あるいは毛量が少ない方が薄毛治療をしたからといって、劇的に毛量を増やすことは難しいです。
ただし、発毛薬のミノキシジルなら今ある産毛を太く長く成長させられるので、全体的なボリュームが増えたように印象づけることはできるかもしれません。
女性の薄毛改善にサプリメントは効果がありますか?
サプリメントで髪を増やす(発毛させる)ことはできませんが、育毛や薄毛予防には一定の効果が期待できます。
薄毛予防に有効な成分には、
・亜鉛
・ミネラル
・L-リジン
・ビタミン
・ノコギリヤシ
などがあるので、サプリメントで薄毛対策をしたい方はこれらの成分が配合されているかをチェックしてください。
女性の薄毛と男性の薄毛の違いはなんですか?
女性の薄毛はホルモンバランスや生活習慣、誤ったヘアケアなどさまざまな原因が考えられますが、男性の場合はホルモンと遺伝による影響が大きいです。
また、女性の薄毛が頭髪全体に見られるのに対し、男性は生え際やつむじ周辺の薄毛が顕著です。
治療中・治療後にヘアカラーはできますか?
可能です。
女性の薄毛治療は内服薬や外用薬をメインに進めていきますが、薬を服用・塗布していても基本的にはいつもと同じ生活が送れます。治療中だからといってヘアカラーやパーマを制限されることはないのでご安心ください。
ただし、注入治療を受けた時は当日シャンプーは控えていただきます。(シャワーで洗い流すだけなら当日も可)頭皮に点状出血が残っている場合も出血痕が消えるまでヘアカラーは避けるようお願いいたします。
育毛シャンプーでも対策できますか?
可能ですが、シャンプー自体では発毛出来ません。
育毛シャンプーは、頭皮を清潔に保ち健やかな髪を育てるためのアイテムです。それ自体に発毛効果はありませんが、普通のシャンプーに比べて髪や頭皮への負担が少なく、抜け毛や薄毛予防に一定の効果が期待できます。
女性の薄毛は改善できます|原因別の対処法で正しく頭皮ケアをしましょう

女性の薄毛は、生活習慣の見直しやヘアスタイルの工夫で改善が可能です。
年齢による薄毛も内服薬や外用薬で予防・発毛できるので、手遅れだと諦めることはありません。女性の薄毛はさまざまな原因が考えられるので、まずは原因を特定し適切に対処していくことが大切です。
シャンプーや育毛剤などセルフケアで改善できなければ、薄毛治療のクリニックに相談することをおすすめします。クリニックでは一人ひとりのお悩みに合った治療法を提案しているので、確実かつ効率的な薄毛改善が実現できます。
女性の薄毛は決して珍しいことではありません。早めの対処で理想のヘアを手に入れてください。